☆第三十七話 お弁当タイム☆
お昼になって、育郎は今朝の早くに購入をしていたお弁当屋さんのお弁当と、自分でお茶を煎れて用意。
幕の内弁当の他にも、唐揚げ専門店で購入をしていた鳥の唐揚げも、準備OK。
「亜栖羽ちゃん、もうすぐお昼だよね…」
プログラム通りに進行しているならば、今頃はみんな、家族で昼食だ。
暫しジっと待っていたら、スマフォがコール。
「来た! はいモシモシっ、育郎ですっ!」
ワクワクしながら待っていた少女からの電話に、二コール目が鳴る直前、緊張しながら出る。
『あ、もしもしオジサ~ン♪ 亜栖羽で~す♪』
「はっ、はいっ!」
絶対に聞き間違えないと命を懸けて断言できる、愛しい想い人の明るい声が、耳から脳を通って全身を擽った。
『プログラムの通り~、これからお昼です~♪ オジサンも、準備はOKですか~?』
「はいっ! 準備万端ですっ!」
亜栖羽からの提案で、今日のお昼は出来るだけメニューを合わせて、一緒の時間に食べると決めていたのである。
小学校や中学校の運動会でも、亜栖羽の母はお弁当と言えば豪華な重箱で作っているらしく、今日もそうなるだろうと、亜栖羽は話していた。
おかずも、卵焼きやかまぼこや野菜の煮つけなど、種類も多い。
なので亜栖羽は、育郎と共通のおかずが食べられるようにと、鳥の唐揚げも母へリクエストしていたのだ。
「僕も、お弁当の他に 鳥の唐揚げを用意してあるよ」
『やった~♪ 一緒ですね~♡』
少女の声が弾んで、とても嬉しそうだ。
「でへへ…♡」
亜栖羽の声を聞けただけで、胸いっぱいになる青年である。
喜びに忘れそうだったけれど、気になる事を訊ねた。
「あ、そうだ…あの…亜栖羽ちゃん、その…バスケの、結果は…?」
必死に応援していたし、何かの閃きがあったけれど、それが良い暗示なのかは、全く分からない。
(亜栖羽ちゃんが、勝っていてほしい…っ!)
そう強く願いながら、電話を待っていた育郎でもあった。
はたして。
『負けちゃいました~☆ もう私たち~、シュート一本しか、入れられませんでした~☆』
「そ、そう…」
『せっかく オジサンにコーチして頂いたのに~☆ ごめんなさ~い☆』
亜栖羽の申し訳なさそうな声が、魂に痛い。
「い、いや、それは…試合の結果、残念だったね…」
あの閃きは、一体。
(やっぱり…僕のカンとか、宛てにならないのかなぁ…)
などと落ち込んでいても、少女への慰めだけは忘れない青年だ。
「で、でもさ…し、試合は、盛り上がった?」
『はい~♪ 時間終了直前までは、同点だったので~♪ みんなすっっごくっ、応援してくれました~♪』
「それは楽しかったね」
コートを走る元気な亜栖羽を想像して、一人でニタニタしてしまう。
『あ、でもでもですよ~』
「?」
少女の声が、一段、華やいだ。
『唯一のシュートを決めたの、私なんですよ~♪ えへへ~♪』
「ぉ、ぉおうおお…っ! それは凄いよっ! 亜栖羽ちゃんっ、チームのMVPだよっ! やったねっ!」
心の底から嬉しい青年。
『えへへ~、ありがとえございます~♡ オジサンが、遊園地でシュートさせてくれたのを思い出しながら、頑張りました~♪』
「そうなんだ…! 少しでも役に立てて、僕も嬉しいよっ!」
『私も、オジサンのおかげで大活躍できました~♪』
試合結果は残念だったけれど、亜栖羽が活躍できた事は、とても嬉しい。
『あ、ママたちが待ってますので、もう行かなきゃです~。オジサンも一緒に、お弁当、食べましょ~♪』
「あぁ、うん! それじゃあ、また後で♪」
通話を切ろうとしたら。
『あっ、忘れてました~。お祖母ちゃんに、私のスマフォで写真、撮って貰ってましたので~、これから送りま~す♪ それじゃ~♪』
育郎は、亜栖羽から送られて来た体育祭の写真を観ながら、約束通り最初の一口を唐揚げで、お弁当を食べた。
~第三十七話 終わり~
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