☆第三十五話 金メダリスト誕生!☆


 いくつかのスポーツ系アトラクションを楽しんで、そろそろ夕方。

「こういう、その…デ、デートも…楽しいね」

「はい~♪ 一緒に身体を動かすの、すっっごく元気が出ますよね~♪」

 少女の爽快な笑顔も、いつも以上に輝いて見える。

「うん。特に僕は、基本がデスクワークだからかな。身体は水泳で動かすようにしているけれど、今日みたいな運動は水泳とも違う筋肉が動いて、いつも以上に身体が軽くなった気がするよ♪」

 そんな会話を楽しみながら、二人は出口へと向かう。

「景品は コレだったんだね」

 ハンマーゲームで鐘を鳴らした育郎が貰った引換券は、入園口に隣接しているサービスセンターで、金メダルと交換をされた。

 アトラクションの景品とはいえ、紅白のリボンで下げられたメダルはズッシリとしていて、表面も綺麗な金ピカ。

 一応とはいえプラモ作りが趣味である青年は、少女の目線の高さで、思わずジっと凝視したり。

「結構、シッカリと作られているんだな…うむむ」

 対して亜栖羽は、とても嬉しそうだ。

「やった~♪ オジサン、金メダリストになっちゃいましたね~♪」

「そ、そうだね…でへへ♡」

 少女に認められる事は、なんだって嬉しい青年だ。

 亜栖羽との思い出の品が増える事は、育郎にとって純粋な喜びである。

「亜栖羽ちゃん、さっき シュートを決めたから」

 筋肉巨漢が金メダルを差し出すと。

「あ、私~、金メダル かけてみたいです~♪」

 と、育郎へと正面を向く。

 何の疑いも無く、真っ直ぐに立って笑顔で見上げている少女。

(可愛い…♡)

 それだけで、世界中の金メダルをプレゼントしたくなってしまった。

「そ、それじゃあ…」

 少女のサラサラな髪を通して、細い首へと、金メダルを優しくかける。

「わぁ~、本当に 重たいんですね~♪」

 アトラクションの景品とはいえ、重量は本物っぽい。

 小柄な天使少女が、首から大きな金メダルを下げている。

 しかも紅白のリボンが長めだから、メダルは胸の前ではなくお腹の前まで下がっていて、それもまた少女の小柄さと儚げさを愛らしく飾っていた。

(ああぁ…なんて、尊い…っ!)

 その超絶魅力的な姿だけで、天使コンテストの永久殿堂入り確実だと、青年は感涙をする。

「あっ、亜栖羽ちゃんっ、写真っ、ぃい良いですかっ?」

「は~い♪」

 亜栖羽は育郎のリクエストに応えて、メダルを愛顔の横にピースをしたり、齧るマネをしたりして、また数十枚の育郎フォトギャラリーが増えて行く。

「それじゃ~、今度はオジサン~♪」

 少女は、首に下げられたメダルを外すと、青年の首へかけようとする。

「あ、はっ、はいっ!」

 亜栖羽の意図を理解した育郎が、片膝をついて首を垂れた。

 反省をした悪鬼が、主である天使からの使役のご褒美を戴いているようなその光景に、新しい着ぐるみイベントかと勘違いをする人たちもいたり。

「それじゃあオジサン、えっと…あ、ヒョーショージョー♪」

「うふふ…♡」

 もちろんメダルのみだけど、育郎にとっては何よりも嬉しいご褒美だ。

 筋肉も太い青年の首へとかけられたメダルは、胸ではなく、鎖骨の少し下に位置していて、まるでネックレスのようだ。

 しかも巨漢が身に着けると。

「わぁ~♪ オジサン大きいから、金メダルがコインみたいですね~♪」

「そ、そうだよね…」

「撮って良いですか~?」

 亜栖羽は自分のスマフォを取り出すと、両腕をガッツポーズにした育郎と並んで、写真を撮影した。

「えへへ~♪ 金メダリストと一緒に 撮影しちゃった~♪」

「あはは♪」


 それから翌週。

「球技祭、今度の土曜日だよね。今日は、映画とかで ノンビリと身体を休ませようか」

 亜栖羽からのメールで、今週の体育もほとんど、球技祭へ向けての自主練だと聞いている。

 なので今日は、身体を休めるデートに設定をしたのだ。

「は~い♪」

 来週の土曜日が、亜栖羽たちの学校の球技祭で、身内ではない育郎は応援に行けないのが当然とはいえ、辛い。

「オジサン、写真とか いっぱい送りますよ~♪」


                    ~第三十五話 終わり~

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