☆第三十三話 もっとも楽しみ!☆
色々とアトラクションを楽しんで、お昼の時間を迎える。
「あ、席が空いてるね。ラッキーだよ」
フードコートでテーブル席を確保して、亜栖羽に席の番を任せて、育郎はドリンクを購入しに行く。
「亜栖羽ちゃんは、何が飲みたい?」
「私~、オレンジジュースが飲みたいです~♪」
「わかった、オレンジジュースだね。待っててね」
売店で、カップのドリンクを注文する。
「Lサイズのオレンジジュースと…同じサイズのアイスコーヒーを…」
「はい…ひぃっ!」
着ぐるみの鬼キャラであるゲンキくんよりもリアルな鬼が来たと驚く店員さんだけど、人間だと解ってホっとしたり。
ドリンクを持って席へ戻ると、落ち着いて少女をナンパしている、イケメン男子大学生がいた。
「もしかして 一人? ちょっと相席して いいかな?」
「私、お付き合いをしている男性がいますので~」
という会話が聞こえて、青年は感動をする。
(あ、亜栖羽ちゃん…♡ ハっ–か、感涙している場合じゃないっ! 亜栖羽ちゃんが、困ってるんだっ!)
亜栖羽の会話で必要以上の勇気が出た育郎は、筋肉の盛り上がる全身で堂々と胸を張って、席へと戻る。
「すみません。彼女は、僕のっ、こっこっ、恋人っ、なので…っ!」
恋人と言う言葉に、恥ずかしくなってドモってしまった。
「ん…うわっ!」
背後を振り向いた大学生は、遊園地の鬼キャラが本物の鬼となって折檻をしに来たのかと思い、腰を抜かした。
「あ、あの…っすっ、すみませんっ、でした…っ!」
ナンパ目的のイケメン大学生は、格好良い作り笑顔のまま、全力疾走しながら去って行く。
「亜栖羽ちゃん、大丈夫?」
「はい~♪ オジサンのおかげで~、ナンパの人、すぐに諦めてくれましたし~♪」
心の底から嬉しそうな笑顔が、眩しくて愛らしい。
二人のドリンクをテーブルへ置いて、育郎にとって小さめな椅子へ、腰かけた。
「うふふ…そ、それじゃあ、亜栖羽ちゃんの手作りサンドイッチっ…い、戴きたいです…♡」
「は~い♪」
少女がバスケットの蓋を開けると、中にはサンドイッチが綺麗に収められている。
育郎の好きな卵サンドだけではなく、野菜ハムサンドやトマトサンド、ツナマヨサンドなど、種類も彩りも豊かだ。
「おおぉ…なんて、綺麗で沢山の種類が…っ!」
これを、亜栖羽が自分の為に作ってくれたのだと思うと、嬉しくて涙が溢れて写真に撮影してこのサンドイッチを全て、家宝として永遠に残しておきたくなる。
「それじゃ~オジサンっ! お味見っ、お願いします~!」
少女は緊張しながらも、サンドイッチをオススメしてくれた。
亜栖羽から手渡されたお手拭きで指先から手首までを完全殺菌しつつ、青年はゴクりと喉を鳴らして。
「はいっ! そ、それじゃあっ、ええ遠慮なくっ、戴きますですっ!」
喜びと緊張に震える指で、まずはタマゴサンドを戴く。
育郎の筋力では、気を付けないと潰してしまいそうな程、柔らかい卵サンド。
「あぁ…良い香りだ~…♡」
見た目も可愛らしくて、このまま一生、眺めていられる。
「そ、それじゃあ…あむ…」
巨漢の口では一口サイズだけど、味わいたくて、半分ほど齧った。
口の中で、タマゴの甘さと優しい舌触りと、マヨネーズの程良い酸味と、バターの濃厚な香りが混ざり合う。
歯応えも柔らかくて、まるで天使が食べる美味な雲を戴いているかのような、夢心地の味わいであった。
「オ、オジサン…味は、如何ですか…?」
少女としても、気になる様子だ。
青年は、両の眼をキラキラと潤ませながら、正直に感動を伝える。
「はい…とても、美味しいです…っ! 今まで食べたどんな名店のサンドイッチよりも…比べられないくらいにっ、最っっっ高ぉーーーーーーにぃっ、美味しぃです…ぐすん…」
つい涙が。
「そ、そうですか~♪ 良かったです~、えへへ~♡ 戴きま~す♪」
嬉しそうに恥ずかしそうに、少女も卵サンドを戴いた。
ハムサンドやトマトサンドなど、全てのサンドイッチが、育郎にとって最高の味わいである。
(あぁ…このままサンドイッチの具になって、亜栖羽ちゃんに食べられたい…♡)
もはや意味も解らない感動に涙し震える育郎だった。
~第三十三話 終わり~
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