☆第三十話 初めてのデートコース☆
「オジサ~ン♪」
「あ、亜栖羽ちゃん♪ 今日も可愛いなあ…でへへ♪」
翌週の土曜日に、亜栖羽と待ち合わせをした。
少女の服装はアクティブで、パンクっぽい衣装ではなく、シャツとトレーナーとショートパンツで、美脚はオーバーニーソックス。
頭には、お気に入りのバイ菌キャラのような黒い帽子を乗せていて、セミロングの頭髪はいつものサイドポニーではなく、後ろでポニーテールだ。
「オジサン、今日は遊園地デートですよね~♪」
スポーティーで愛らしく輝く少女の魅力に、ラブラブトリップをしてしまっていた青年は、ハっと現実へ生還を果たす。
「ハっ–う、うん。球技祭へ向けて、学校の体育もそれぞれの参加種目を練習してるって聞いたから。亜栖羽ちゃんの参加するバスケも含めて、今日は遊園地で楽しもうと思って」
「楽しみです~♪ オジサンと遊園地へ行くの、初めてですよね~♪」
「そうだね…でへへ♪」
少女は両手持ちで、少し大きなランチボックスを携えている。
「オジサンに教えて貰った~、オジサンの好みのサンドイッチ、作ってきました~♪」
「あぁ…有難う御座いますぅ…っ!」
以前のデートでも、亜栖羽がオニギリを作って来てくれた事があった。
愛しい彼女にお弁当を作って貰える幸せ。
(僕にも、こんな素晴らしい日が訪れたんだなぁ…♡)
亜栖羽と出会う前の、このまま一人で年を重ねて行くだけなのかと、ボンヤリと沈んでいた頃。
比べて現在の幸せは、まさに天地ほどの違いがあると、この上ない程に強く実感。
「亜栖羽ちゃん、ランチボックスは 僕が持つよ」
「ありがとうございま~す♪」
二人で電車に乗って、目的の遊園地の最寄り駅へ。
晴天に恵まれた窓の外の景色が、ビル街から住宅街、更に緑の多い郊外へと、移り変わってゆく。
「今日は 晴れて良かったよ」
「本当です~♪ 絶好のお弁当日和ですね~♪」
二人で、向かいの席の車窓から眺める郊外の景色は、ちょっとした旅行気分で、気持ちがワクワクしてくる。
さほど混んでいない車内だけど、育郎たちの前のシートには、誰も座っていない。
その理由は、ランチボックスを携えた大男の視界を万が一にも遮ったりすると、昼食としてランチボックスに詰め込まれてしまいそうだと、特に若い男性たちが警戒をしているからかもしれなかったり。
「あ、そういえばですね~♪」
「うん」
移動中には、少女の学校での話が聞ける。
これも、青年にとっては大切な時間であった。
暫くして、次の駅が目的の駅だと、車内アナウンスが知らせる。
「あ、オジサン~、次の駅みたいですよ~♪」
「ああ、そうだね♪」
駅へ到着をすると、亜栖羽を先に下車させて、育郎も巨体で、昇降口を一人で占領しつつ下車。
電車の中でも、ずっと取っ手を強く握っていたけれど、ランチボックスを忘れたりしていない事も、ちゃんと確認をした。
「改札は…向こうだね」
「は~い♪」
遊園地の駅は中規模で、上下線の屋根付きホームと、階段と、改札口。
改札を抜けると、駅のすぐ前のロータリーで、遊園地の直通バスが待っていた。
「きゃ~、可愛い~♡」
バスはラッピングを施されていて、車体の各所に遊園地のキャラクターをあしらっている、だけではない。
バスの形も鼻先が前へ出ていて、地の柄として、亀のようなキャラクターバスとなっていた。
バスには家族連れも多く乗車をしていて、育郎たちも、バスへと乗車をする。
直通バスだけあって、乗車賃は無料だ。
「じゃあ、亜栖羽ちゃん お先にどうぞ」
「ありがとうございま~す♪ オジャマしま~す♪」
前側の乗車口から亜栖羽が乗って、続いて育郎が乗車をすると、車掌さんが。
「あれ、ゲンキくん、なんでこんなトコにいるの? もうすぐ園内一周…ああっ、し、失礼いたしました…っ!」
「? いえ…」
どうやら、遊園地の着ぐるみ鬼キャラと間違われた様子だった。
~第三十話 終わり~
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