☆第二十六話 亜栖羽の午後☆


 チャイムが鳴って、お昼休みの時間。

 女子とはいえ学生たちの若い胃袋は、とにかくお弁当を食べる体育系や購買へ走る者など、空腹に任せて超躍動をする。

「今日こそ、購買で人気一番のグラタンコロッケパンをっ!」

「今日の学食~、カニチャーハンが出るんだって~!」

 などと学食目当ての生徒たちが廊下へ駆け出す頃、亜栖羽たちも机を合わせて、お弁当を拡げていた。

「亜栖羽~、一緒に食べよ~♪」

「うん~♪」

 ミッキー嬢や桃嬢だけでなく、いつも五~六人でお弁当を食べる亜栖羽。

「「「「「戴きま~す♪」」」」」

 みんなで手を合わせて蓋を開くと、まずはお弁当の写メを撮ったり。

「うん、綺麗に撮れた~♪」

 ニコニコな亜栖羽に、女子たちは。

「亜栖羽のお弁当、いつも和食で綺麗だよね~♪」

「ね~♪ すごく美味しそう♪」

「えへへ♪」

 祖母も母も和食派なので、母が作ってくれるお弁当も、和食が殆ど。

 今日も、卵焼きとほうれん草のごま和えと、サバの味噌煮、煮カボチャに沢庵漬けという、かなりの和風である。

「お弁当 綺麗だし~、取りたくなるのも解るよ~♪」

「ね~。いいな~」

 と言いつつ、女子たちも写真を撮っていた。

 しかし、一緒に机を囲むミッキー嬢と桃嬢は、知っている。

(GOさんに送る写メだ)

(ふっ様へ送る写真です…はふぅ…♡)

 桃嬢の妄想では、身体だけでなくお弁当まで管理されている設定なのだとか。

 お弁当を食べながら、他愛のないオシャベリを楽しんだ。


 五時限目の授業は、体育。

 今日は、体育館でそれぞれのメニューをこなしている。

 実は来週の土曜日は、この学校で毎年恒例の、球技祭なのであった。

 一般的な体育祭とはまた別に、球技だけの競技会が、開校当時から毎年開催をされていて、今年もその季節がやって来る。

 なので今週からの体育は、それぞれ参加をする競技の自主連として、わりと自由な時間で過ごしていた。

 体育館で、亜栖羽はバスケの練習で、今どき珍しく女子の体操着はブルマ。

 ミッキー嬢はソフトボールだけど、体育館なのでランニングをこなし、桃嬢は亜栖羽と一緒にバスケへ参加をする。

 それぞれが練習をこなして、今は体育館の隅で一休み中だ。

「ふうぅ…走った走ったー♪」

 汗も輝くほど心地良さそうに、ミッキー嬢が亜栖羽たちと並んで座る。

「おつかれ~♪」

「お疲れ様でした…♪」

「汗流して スッキリしたー♪」

「見て~♪ オジサンから写真~♪」

 亜栖羽が見せたスマフォの写真には、育郎から送られた、赤とんぼの写真が映し出されていた。

「へぇ~、赤トンボ、もう飛んでるんだ~」

「秋が始まってますね…ふふ♪」

 さしもの桃嬢も、亜栖羽+赤とんぼ+育郎で、妄想はしない様子。

「私たちも~、写真撮って送りたいけど~、いい~?」

「はい♪」

「いいよ~」

 亜栖羽を真ん中に、三人でピース。

「えっと…『10月に球技祭で~す♪ 私と桃ちゃんはバスケで、ミッキーはソフトボールで~す♪』…と。送信~♪」

 スマフォを掲げて、神様へ「ちゃんとオジサンへ届きますように」とお願いをするように、送信をする。

「そういえば、球技祭って 家族とか親戚しか、来られないんだよね?」

「そうだね~♪ あ…」

「ふっ様は、来られませんですね…」

 そう思うと、ちょっと寂しく感じてしまう亜栖羽だ。

「でもそのぶん~、球技祭の写真も、いっぱい送るもん~っ!」

 気合を入れる亜栖羽であった。


                    ~第二十六話 終わり~

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