☆第二十四話 亜栖羽の午前中 その②☆


 朝食を終えて、再び歯を磨いてから部屋へ戻って、鏡で全身をチェックしてから、カバンを手にして。

「よ~し!」

 前髪もOK。

 ベッドの枕元に置かれている、少女と筋肉戦士のプラモデル、そして先日のデートで折った二羽の折り鶴へと、挨拶をする。

「それじゃあオジサン、行ってきま~す♡」

 祖母と母へも挨拶をして、制服少女は元気に学校へと向かった。


「亜栖羽ぴょん、お早う~」

「タマちゃん、お早よ~♪」

 登校中にも、クラスに関係なく友達と挨拶を交わす。

「あれ? 新しいアクセサリー?」

「ホントだ~」

 目ざとい友達が、亜栖羽のカバンに下げられている、小さな本形のアクセサリーに気が付いた。

「えへへ~、可愛いでしょ~♪」

 オシャベリをしながら校門をくぐると、桃嬢が登校していた。

「あ、桃ちゃ~ん、お早よ~♪」

 鞄を両掌持ちしている桃嬢は、艶々な黒髪をサラりと流しながら、綺麗な挨拶を返す。

「お早うございます、亜栖羽さん…♪ あら、新しいアクセサリーですか?」

 桃嬢も気が付いた。

「うん~♪」

「とても可愛らしい本ですね♡」

 問わずとも桃嬢は、アクセサリーが育郎から送られた物だと見抜く。

「…プレゼントを贈る事によって、少女の所有権を他者へと、少女自身には無自覚なまま宣言をさせる…はふぅ…♡」

 また妄想が捗る桃嬢である。

 教室へ入ると、ミッキー嬢が登校していた。

「ミッキー、お早よ~♪」

「あ、お早う トモちゃん桃ちゃん♪」

 ミッキー嬢は、友達と組んでいるバンドの練習もあり、亜栖羽たちの中でも、だいたい教室へは一番乗りである。

「お早うございます。ミキさん」

「えへへ~♪ 見て見て~♪」

 ミッキー嬢へカバンを向けながら、アクセサリーを見せる亜栖羽。

「あれ? そんなアクセサリー、着けてたっけ? 新しいやつだよね?」

「そうだよ~♪」

 ニッコニコな少女の笑顔で、ミッキー嬢も察したらしい。

「あ~、もしかして GOさんから プレゼント?」

「うん~♡ 昨日、買って貰っちゃった~♪」

 自席へ腰かけて、カバンのアクセサリーを大切に掌の上へ。

「…え、本物の本? なんか 珍しいね」

「でしょ~♡ なんか~、私もカシコクなった感じ~、するでしょ~♪」

 洋書の翻訳や宿題のアドバイス、勉強を見てくれたりと、亜栖羽が尊敬する育郎の一面を、本という形でいつでもそばへ置いておける、という感覚なのだ。

「昨日の夜、メールでくれた 本屋さんとかの?」

「そうだよ~♪」

 育郎との電話の後、亜栖羽はミッキー嬢と桃嬢とも、メールをしていた。

「まさしく…ふっ様による精神拘束ですのね…はぅ…♡」

 色々な妄想が頭を巡り、桃嬢は頬が上気している。

 三人の会話に、クラスの女子たちも加わってきた。

「なになに~?」

「わあ、なんか可愛い本~♪」

「ちっちゃ~い♪」

 キャイキャイする仲良し女子たちを遠巻きに、まだ仲良くなっていない女子たちも、気になってはいる様子。

「いつも、仲の良い女子たちが 集まってるよねぇ…」

 話しかけたいけれどタイミングがない。

 と、話しかける勇気を振り絞れない内気な女子たちは、亜栖羽たちをチラチラと盗み見であった。

 女子たちのオシャベリが収まる様子の無いまま、予冷が鳴る。

「あ~、先生 来ちゃう~」

「亜栖羽、後でね」

 先生がやって来て、朝のHRが始まった。


                    ~第二十四話 終わり~

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