☆第二十三話 亜栖羽の午前中☆
「うぅ~ん…ふぅ…」
カーテンから差し込む朝陽で、亜栖羽は目覚める。
ベッドの中で、暫しゴロゴロと転がった後、仰向けになって全身に力を込めてから、元気に上半身を起こした。
「うん…っ! はぁ~」
捲れたパジャマから覗けていた縦長の臍が隠れて、ベッドから降りると、立ったまま再び全身をう~んと伸ばして、脱力。
「んんん~…ふぅ…っ!」
眠気が晴れると、タンスから着替えの下着を取り出して、朝のシャワーへ。
洗面所で歯を磨いて、パジャマと下着を脱衣。
「~♪」
髪をアップで纏めた肢体は、細い首やしなやかな肩、抱くと折れてしまいそうな華奢な背中に、平均よりも豊かなバストや括れたウエストや広いヒップが、窓からの陽を浴びて魅惑的だ。
浴室でシャワーの線を捻ると、温かい湯に全身が濡れる。
しなやかな身体や、パツパツの腿や細い膝、優しいカーブの脹脛や絞られた足首から小さな足の平へと湯が流れ、陽光をキラりと跳ね返した。
「サッパリした~♪」
バスタオルで全身を拭って、白い下着を身に着ける。
髪をとかして自室へ戻って、学校の制服へと着替えて準備OK。
部屋からリビングへ来ると、祖父と父と母が、食卓を囲んでいた。
「お祖母ちゃ~ん、お早うございま~す♪」
「はい、亜栖羽 お早う」
物静かで落ち着いた祖母は、クールに優しい笑顔で、孫娘に挨拶を返す。
綺麗な白髪を美しく纏め、和装がこの上なく似合っていた。
眼鏡の奥でクールに輝く眼差しには、知性と鋭さがハッキリと現れている。
笑顔の亜栖羽がハイタッチを求めると、祖母は黙って落ち着いて、孫娘の掌をパチんと受けた。
「パパ~、お早うございま~す♪」
葦田乃家では、両親への挨拶は敬語である。
「うむ、亜栖羽、お早う…っ!」
父は眼鏡の位置を指先で調整しつつ、元気な娘へ視線を送り、挨拶を返す。
オールバックに纏められた頭髪は、一部の隙も無く整っていた。
水色のワイシャツに赤系のネクタイが似合っていて、肩幅も身長も同年代の平均以上であり、視線には知性が輝いている。
低く静かな声にはしかし、熱い魂の愛の炎が込められていた。
娘のハイタッチを受けながら、唇の端が嬉しそうに上がっていたり。
亜栖羽はそのままキッチンへ向かい、母へ挨拶。
「ママ~、お早うございま~す♪」
「は~い♪ 亜栖羽ち~ん、おっ早よ~♪ いぇ~い♪」
娘に挨拶を返しながら、タイミングぴったりでハイタッチをする、明るい母。
髪型も面立ちも、誰が見ても母娘だと一瞬で解るほど、よく似ていた。
身長は平均的だけど、プロポーションは魅惑的に恵まれていて、エプロンがとても良く似合っている。
「亜栖羽ちゃ~ん、サラダとハム付き目玉焼き~、いま出来たところよ~♪」
「は~い♪」
ハムエッグを乗せたお皿をなどを受け取ってから、茶碗にご飯をよそう。
葦田乃家では、朝食は和食が基本であった。
「戴きま~す♪」
娘が食事を始めると、母も一緒に食事を始める。
食後の祖母が緑茶を戴いていて、父は豆から挽いたブラック珈琲を戴きつつ、ネットニュースや株式などを注意深くチェック。
母と娘の朝食が終わる頃、父の出勤時間が来た。
「ん…もうこんな時間か…」
タブレットをオフにして、母の手伝いでスーツを着用。
「では、亜栖羽よ…さあっ、ハグをぉ…っ!」
娘へ向かって両腕を広げ、父は熱くハグを求めた。
「は~い♪」
亜栖羽が父親の胸へ飛び込むと、父は熱く涙しながら、娘をギユっと抱きしめる。
「むむっ、愛しい娘よ…っ! 父は今日も一日、仕事をこなしてくる…っ!」
「うん~♪ お仕事、頑張って~♪」
「うむっ! ママ…っ!」
「は~い♪」
玄関まで見送る妻とは、いってらっしゃいのキス。
「では、行ってくる…っ!」
マンションの地下駐車場では、リムジンと運転手が待っている。
葦田乃家の朝は、だいたいこんな感じで始まるのだ。
~第二十三話 終わり~
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