☆第四話 夏休みの感想☆


「二学期、始まったんだね」

「はい~♪」

 といっても、九月一日が木曜日だったので、授業開始の金曜日はあまり授業らしくなかったらしい。

「先生方も~、夏休み明けと、次は土日だから~ みたいな感じでして~♪ ほぼ自習ばっかりでしたよ~♪ なので~、授業は今度の月曜日がスタート! みたいな感じでした~♪」

 と、楽しそうな笑顔だ。

 育郎が心配をするまでもなく、亜栖羽の学校生活は楽しい様子。

 それは単純に、嬉しい事実でもある。

「夏休み明けだと、久しぶりの友達とかもいた?」

「はい~♪ 夏休みの間でも~、スマフォで連絡し合ってた子は 何人かいたんですけど~♪ やっぱり直接会うと、嬉しいですよね~♪」

「やっぱり、そういうものだよね」

 育郎も、年に数回とはいえ車で出掛けて会う友達は、メールやスマフォでの会話とは、全く違う。

 亜栖羽はスマフォの写真を弄りながら、見せてくれる。

「見てください~♪ なんかすっごく、日焼けした娘とかも いたんですよ~♪」

 写真には、亜栖羽やミッキー嬢や桃嬢たちと一緒に、四人の女子が映っている。

 あまり日焼けをしていないのは亜栖羽と桃嬢だけで、他の五人は、コンガリと健康的な日焼け肌。

「あはは、すごい焼いたみたいだね」

 育郎の肌は日焼けに弱いらしく、写真の女の子たちのような日焼けではなく、赤くなってしまう。

 まるで赤鬼みたいにしかならない青年にとっては、実に羨ましい焼け方であった。

「亜栖羽ちゃんは、焼かないんだね」

「はい~。私、あんまり焼けないんですよ~☆」

「そうなんだ」

 それはそれで、羨ましくもある。

「オジサンは、日焼けした女の子 好きですか~?」

 と問われて、日焼けした亜栖羽を妄想。

 南国を思わせる軽やかなビキニ+パレオの水着姿に、お花の付いた大きな麦わら帽子が愛らしい。

 小麦色の肌は健康的で、少女の若々しい生命力さえ感じさせた。

「でへへ…日焼けした亜栖羽ちゃんも、可愛いです…♡」

「そうですか~? えへへ~♡ それじゃあ今度、サロンとかで、日焼けしてみましょうか~♪」

「サロン…」

 日焼けサロンで、肌を焼く亜栖羽を妄想。

 水着姿というだけでなく、背中を焼く時はトップレス。

 日焼けサロンへ行った事のない育郎は、店員さんが男性だった場合を、想像してしまった。

「いっ、いやいやいやいやっ! 亜栖羽ちゃんはっ、亜栖羽ちゃんのまま自然なままがっ、一番っ、素敵なんですっ!」

 敗軍の鬼がなんだか勢いを復活させて、カフェの店員さんたちに戦慄が走る。

「えへへ~♪ そうですか~?」

 少女は上気した頬を両掌で押さえ、嬉しそうだ。

「やっ、焼けにくい肌を無理矢理に灼のはっ、絶対にっ、身体にも悪いと思いますっ! なのでっ、そのっ…っ!」

 慌てる青年の様子に、亜栖羽は安心感を覚えたらしい。

「わっかりました~♪ 日焼けはやめま~す♪ あ、でもあれですよね~。お肌に塗るファンデでとかで~、日焼け色のお肌は 出来ますよね~♪」

「お肌に塗る…」

 と聞かされて、育郎は、いわゆるボディーペイントを想像。

 ヌードの亜栖羽に、筆で日焼け色の塗装を施す、書道家スタイルの自分も一緒に。

 髪をアップで纏めて目を閉じた愛顔や、細い首筋、平均よりも恵まれたバストや細い背中、丸いヒップやパツパツの腿や細い足首だけでなく、秘めたる個所にも、筆で色塗り。

「そっ–それはそのあのっ、だだだ誰がその塗装をぉぉっ!?」

 塗装とか、モデラー脳だ。

「? 自分で塗りますよ~♪」

「…そ、そぅですょねぇ…」

 破廉恥な想像のうえ興奮してしまった自分に、心の中でバニッシュメント。

 首から上が赤鬼となった青年は、再び自省してシュンとなり、カフェの店員さんたちがホっとしていた。

「あ…お店、混んで来たね」

「そうですね~」

 二人は会計へと向かった。


                    ~第四話 終わり~

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