第190話 提携・中編

「次に魔法銃なんだけど、誰か装備したい人はいるか?」

「リーダー、どんな効果があるものなのかを言わないと、装備したいかどうかは分かりませんよ」

「美姫の言う通りだね、ゴメンゴメン。これは四属性の魔法が一種類ずつ使える銃らしいよ。誰か使ってみたい人はいないか?」


 思った通り反応がないな。やっぱり魔法スキルを持っていたらこうなるよね。


「誰も使わないなら、魔法銃は恵梨花に使ってもらおうと思うんだ。皆は良いだろうか?」


 《カラフルワールド》のメンバーが真っ先に賛成して、他のメンバーも全員が賛成してくれた。


「では、恵梨花に装備してもらいましょう。魔法銃と短剣の使い分けが大変そうだけど、《カラフルワールド》の為にも頑張って欲しいな」

「ほんまに良いんですか?」


 皆が頷いているよ。その反応を見て恵梨花も嬉しそうにしている。


「ありがとう、メッチャ嬉しいです。《カラフルワールド》の為にも魔法銃を撃ちまくります」

「いや、あんまり撃ちすぎると魔力枯渇になるからほどほどにしておいてね。魔力ポーションも渡しておくよ。そうだ、ついでに魔力回復の指輪も使ってもらおうかな。予備が一つあるんだよね」

「麟瞳さん、魔力回復の指輪も高価な物だぞ。恵梨花にそんなにしてもらっても何も返せないぞ」

「いや、この福岡ダンジョンの探索で、恵梨花本人に返してもらいますよ。世那さんや森崎さんに指導もしていただきますし、《カラフルワールド》がどこまで行けるのか興味が出てきたんですよね。ここに来るまでは、低階層で力が付いたら良いなあとぼんやり思っていただけだったんですけど、具体的な成長の道筋も見えてきましたし、恵梨花には今まで以上に活躍してもらいます」

「はい、頑張ります。メッチャ頑張って完全攻略します」

「いや、そこまでは望んでいないからね。皆の様子をよく見て引っ張って行ってほしい」


 《カラフルワールド》のメンバーも目の色が変わったように見えるのは気のせいなのかな?でも、皆が良い目をしているよ。


 マジックアイテムを渡した後は、トランプをしたり、DVDを見たり、漫画を読んだりとそれぞれがリラックスして楽しんだ。勝負好きの世那さんと美紅さんはやっぱりトランプをしてますね、流石です。


 僕は真姫と恵梨花の二人と一緒にマンゴーの種植えに精を出した。マンゴーの種って堅い殻の中に入っているんだって、それと直接土に植える方法以外にも水耕栽培で発芽させる方法も有効らしい。真姫はなんでもよく知ってて助かるよ。二種類の方法で育ててみることにする。このダンジョンの中だけでは成長しきれないのは、腕輪に収納して岡山のクランハウスの敷地に植え替える予定なので何も問題はない。万能スコップは流石のマジックアイテムで優秀だった。ダンジョンの土がサクサクと掘れたんだよね。この掘れた土がマンゴーの成長に最適な土になるのかな?三人で種を植えて、成長を願った。美味しいマンゴーをよろしくお願いします。


 美紅さんから、晩御飯の後に話があると言われた。メンバーは美紅さんと世那さんに正輝と僕、他のメンバーには当面教えたくない内容らしい。晩御飯を皆で美味しく食べた後に僕達の部屋で話をすることになった。


 晩御飯はお昼時と同じ面子でテーブルを囲んだ。明日からの打ち合わせをしながら、食事をしようということだ。


「では、明日の為に組分けをしておこうか」


 組分けの方法は単純で、いつものジャンケンだ。僕と正輝の結果はやっぱり僕の負けだった。美紅さんと恵梨花の勝負が一番白熱していた。恵梨花は相変わらず負けた時の演技が凄いね。大女優がいるのかと錯覚をしてしまう程の悔しがりようだ。流石の関西人、岡山出身の僕には到底真似できないな。


 組分けの結果は、ジャンケンに勝ったのが美紅さんと正輝とそして真琴だった。僕のチームメイトは美姫と恵梨花、勝負の方法は明日の朝までに美紅さんが考えてくれるそうだ。取りあえず明日はこの六人でパーティ登録をすれば良いらしい。十五人全員で一旦ダンジョンの外に出てから、それぞれのパーティ登録をして戻ってきた。


 後はお風呂に入って寝るだけだ。世那さん達との話があるので、先に他のメンバーから風呂に入ってもらい、四人で部屋に集まった。


「これから話す内容は、探索者省との話し合いで分かったことが元になっている。まだ他のメンバーには伝えないでほしい。伝えるタイミングに気をつけないと、重圧に押し潰されてしまうかもしれないからな」


 なんだか怖い話のようですね。


「まず、探索者省と話した内容なんだが……………」


 美紅さんが話した内容を詳しく聞かせてくれた。僕達にダンジョンへの立入禁止が言い渡されることがないことに安心した。しかし、Aランクダンジョンから魔物が出てくる話は衝撃的過ぎた。他のメンバーにはとても言えないよ。


「四年後の年末までに五つのAランクダンジョンを全て完全攻略しないといけないんですか?そんなの可能なんですか?」

「いや、可能かどうかではなくて、完全攻略しないと日本がなくなってしまうんだ。完全攻略するしかないんだ」


 ちょっと大きな話すぎて、思考が追いつかない。


「俺達に話したと言うことは、俺達にも完全攻略の手助けをしろということですか?」

「取りあえず、私の考えを言わせてもらう。言いたいことはあるだろうが、全て話し終わるまでは聞いててほしい」


 僕は頷くことしか出来なかった。


「私の考えでは、Aランクダンジョンを四年後までに完全攻略出来るのは、私達の《Black-Red ワルキューレ》と《東京騎士団》のトップチーム、そして《花鳥風月》の《千紫万紅》だと思っている」


 思わず声を出しそうになったが、ぐっと堪えて続きを聞く。


「《東京騎士団》の榊さんには、昨日の夜に話してきた。今探索している東京のAランクダンジョンと、もう一つ別のAランクダンジョンを完全攻略してほしいことは伝えた。そして残り三つを私達で完全攻略しようと思っている」


 私達ということは、《千紫万紅》もAランクダンジョンを完全攻略するのか?


「私は《Black-Red ワルキューレ》のクラン会議で、半年から一年後までにその時の最高戦力を集めてトップチームを作ると言ってきた。多分一年後までにAランクダンジョンの探索に取り組まないと間に合わないだろう。開始時期は一年後がリミットだと思っている。それまでに《千紫万紅》には力を付けてもらう。《千紫万紅》は福岡ダンジョンと、もう一つ別のBランクダンジョンを完全攻略する。その間に麟瞳さんと正輝さん以外のメンバーが力を付ける為に《Black-Red ワルキューレ》は全力で支援する。世那と智美がちょうど指導する話になったのは好都合だった。他にも弓術指導で次のダンジョンの攻略時には一人連れて来させてほしい。麟瞳さんと正輝さんは主に休みの日の私達との探索で力をつけてもらう予定だ。早く完全攻略して、Bランクダンジョンの深層で鍛えようと思っている。《千紫万紅》での探索では連携に気をつけて、よくメンバー間で話し合ってもらいたい。世那と私からも気づいたことはすぐに助言させてもらうが、しっかりとコミュニケーションをとってパーティ内で意思の統一をするのが大事だからな」

 


 

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