第175話 明日の予定

 六階層から十階層の二周目の探索を終えて、六階層のセーフティーゾーンに戻って来ると、既に残りのメンバーが揃っていた。《カラフルワールド》のメンバーも笑顔で話をしているから、きつい探索ではなかったのだろう。メンバー全員でいつもの携帯ハウスを設置する場所へと移動した。


 携帯ハウスの中に入ると、晩御飯の前にお風呂に入りたいという要望が多数の為に順番にお風呂に入り、その後に御飯を食べることになった。今日は六人テーブルで同席者は世那さん、美紅さん、恵梨花、正輝、真姫だ。


「麟瞳さん、クジに何か細工をしてない?何でこのメンバーの中に私がいるのよ!」


 真姫が文句を言ってくるが、当然そんなことはしていない。全員揃って「いただきます!」で食事は始まった。


「美紅さん、《カラフルワールド》はどうでしたか?」

「麟瞳さんが初日で五階層のボス部屋の攻略は無理だと言っていたから心配していたが、君が過保護なだけだったな。聞くところによると、君は極度に心配性なお父さんのような存在らしいな。娘の事はもっと信じてあげないと嫌われるぞ。そのうち皆から『お父さん、嫌い』と言われそうだな」

「そのお父さんネタはどこで仕入れたんですか?」


 何故真姫は顔を背けるんだ?もっとテレビドラマを見て演技を勉強した方が良いぞ。犯人はお前だ!


「まあそれは言わないでおこう。《カラフルワールド》は今日の探索で、五階層のボス部屋を二周した。次からは六階層からの探索で問題ないだろう」

「えっ、ボス部屋を攻略したんですか?どうやって?」

「私に言われても分からないな。ボス部屋には一緒に入れないからな」

「麟瞳さんが思っているよりも《カラフルワールド》は力がありますよ。上位種のいない五十程の魔物なら問題なく倒せます」

「恵梨花さんが凄いのよ。最初にパーティを組んだときの魔法を使わない麟瞳さんよりも確実に強いと思うわ」


 まあ恵梨花は正真正銘のAランカーだからね、あの当時の僕と比べたら失礼だよ。《カラフルワールド》にはある程度の力があるのは分かっていたが、綾芽がいなくても大丈夫そうで良かったよ。


「恵梨花の戦闘訓練になるから、この探索は《Black-Red ワルキューレ》としても良かったと思っているよ」


 美紅さんからそう言ってもらえるとありがたいな。


「正輝さんは世那に絡まれて大丈夫か?」

「いや、別に絡まれてはいませんよ。今日十一階層で別れてからの探索の話を聞いていたんです」

「そやで、美紅はホンマに失礼やわ」

「僕も気になるなー、世那さんは何回層まで探索したんですか?」

「二十五階層までやな。六時には戻らんとあかんから、時間に余裕を持って探索は切り上げたで」

「あれから十五階層も進んだんですか?明日の完全攻略に向けての探索に正輝と僕は必要なんですか?」

「完全攻略するだけならおっても、おらんでもどっちでも一緒やで。ウチと美紅は青いオーガから頼まれとるからな、麟瞳と正輝には強うなってもらわんとな。恵梨花は飛んで火に入る夏の虫やで、自分から入ってくるとはアホかと思うたわ」

「えっ、完全攻略する為に手を貸せって言ってましたよね」

「そやで、完全攻略する為に手を貸してもらうで」

「でも、完全攻略するには必要ないんですよね」

「そやなあ、別に麟瞳等がおらんでも完全攻略できるなあ」

「僕達はいなくても良いですよね」

「それはあかんわ。麟瞳と正輝はおらんとあかんわ」

「でも、完全攻略するには…………」

「麟瞳さん、もう諦めてくれ。特別メニューを考えているから、楽しみにしていてくれ。今日と同じ時間に探索を始めよう」


 晩御飯の後片付けは滅茶苦茶速くなった。美姫のスキルであっという間に終わってしまう。戦闘に役立つスキルではなかったが、美姫なりに納得してスキルを使っていて良かったよ。食後はリビングで明日の予定を確認する。今日のデザートの高級網網メロンを食べながら話をしよう。


「これはまた美味しいな~。私はフルーツ好きでよく食べていると思うが、ここまで美味しいメロンは初めてだな」


 美紅さん絶賛のメロンは、無言で食べるメンバーのお腹に吸収された。やっぱりこのメロンは、うひょーと言いたくなる美味しさだった。


「ちょっとええか?」


 メロンを皆が完食した後に世那さんが話し出した。


「今日の探索でスキルオーブが出てきたんや。何のスキルオーブか、鑑定してほしいんや。これも幸運の指輪のお陰や、昨日の探索メンバーには感謝やで」


 早速の幸運の指輪効果、指輪にはかなりの効果がありそうだね。真琴が世那さんからスキルオーブを受け取って鑑定する。


「これは【デザイン】のスキルオーブです」


 ………しばしの静寂。


「なんやて?」

「【デザイン】のスキルオーブです」

「………誰か使いたい人はおらんか?」

「世那さん、そのスキルオーブは世那さんが強くなる為に出てきたんですよ。世那さんが使うべきです」

「麟瞳、何でドヤ顔で言うとんや。前に美紅に言われたこと根に持っとるんか?明日の探索がほんまに楽しみやわ」


 ガクブルしてしまったよ。スキルオーブは山吹が使うことになった。絵を描くことが昔から好きだそうだ。早速スキルオーブを使用してダンジョンカードで確認している。


「山吹、スキルは獲得できたか?」

「はい、【デザイン】のスキル獲得できてます。連日でスキルが増えて嬉しいです。世那さんには感謝です。マスター、服のデザインをボクに描かせてください。昔から興味があったんです。スパイダーシルクの生地で服を作るって言ってましたよね。ボクがデザインして世那さんにプレゼントしたいです」


 おー、それ良いなあ。


「無理はしなくて良いけど、僕のもデザインしてほしいな。格好良いのをお願いね」

「麟瞳さんは、休日のお父さんが着るような服が良いと思うな」


 美紅さん、まだ話が繋がっていたんですか?


 結局、全員が山吹にお願いして、大量のデザインを描くことになった。山吹は嬉しそうにしているが、無理はしないようにね。


「明日の皆の予定はどうなっているんだ?」


 皐月、詩音、桃、遥、真琴、綾芽の六人はパーティを組んで一階層から五階層の探索をするそうだ。真姫は料理、山吹は服のデザイン、美姫は福岡ダンジョンの情報を見るということで、三人は携帯ハウスに残るらしい。そして僕達五人は恵梨花がいるので、六階層からの探索になる。


 もう一度バトルスーツに着替えてダンジョンの外に転移して、パーティを組み直してから戻ってきた。世那さんと美紅さんは普段着のままだったよ。誰もお二人に注意することは出来なかった。



 


 

 


 



 

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