第174話 福岡ダンジョンの六階層から十階層を攻略
連日の高級網網メロンの登場に興奮して、思わず変な念話をメンバーに送ってしまった。うひょーは無しだよね、反省。無事に美紅さんからプレゼントしてもらったグローブで全てのメロンをキャッチして収納し、オマケの討伐後のドロップアイテムを回収してメンバーのところに戻った。
「麟瞳、変な念話を送るなよ。あんなの聞いたら力が入らないだろう」
「正輝さん、あれは私の為に敢えて送ってくれた念話っす。リーダーの気持ちは嬉しいっす」
「おっ、お~っ………正輝、これからは気をつけるよ」
詩音の為に送った?詩音は何か勘違いをしているようだが、訂正するのも気が引けるなー、このままスルーしておこう。
「詩音は投擲球を使ってみたのか?」
「はい、使ってみたっす」
「投げ心地はどうだった?自動帰還ってどんなふうに帰ってくるんだ?」
「リーダー、ちょっと待ってください。興味があるのは分かりますが、次の魔物がきました」
おっと、これは失敗。今日は斥候に徹しようと思っていたのに、美姫に先に魔物を見つけられては面目ないね。御昼御飯の休憩時まで質問はとっておこう。
美姫に注意されて以降は、ちゃんと役割を果たしたよ。情報を念話で送り、魔物をパーティの所まで引き付け、トレントモドキがいれば喜んでグローブを装備して相手する。
パーティの戦闘も後方から何度も見せてもらった。Bランクダンジョンの低層とはいえ、綾芽は問題なく対応できている。皐月はいつも通りの安定感があり、詩音はいつも以上に積極的に動いている。【瞬間移動】スキル、優秀過ぎないか?あっという間に魔物に近づいて炎の槍で一突き、あるいは至近距離からの投擲の連射で仕留める。【変幻自在】ギフトのお陰なのだろうか、攻撃方法が多くなるほど詩音が生き生きと活躍するようになってきたね。美姫の指示も的確で、弓での攻撃も安定感がある。正輝にはもっと階層が進んでから存分に暴れてもらおう。
十階層のボス部屋に着いた。二組の順番待ちの間に戦略を練っておく。その前に世那さんに確認だね。
「世那さん、ボス部屋攻略は僕達の前と後のどちらが良いですか?」
「前がええな、【サイクロン】を早う使ってみたいわ」
「了解しました」
世那さんらしい返答をもらって安心だ。ここに来るまで、ずっと見てもらっているだけで申し訳なく感じていたんだ。攻略後の休憩時間にアドバイスをもらおう。では、パーティの打ち合わせをしよう。
「美姫、戦略は任せるよ。どうやってボス部屋を攻略する?」
「はい、ここのボス部屋では上位種の混ざった六十から七十匹ほどの魔物が相手ですから、最初に魔法攻撃で先制しましょう。その後は皐月は綾芽と組んで一番魔物が残っているところを担当してもらいます。詩音は調子が良さそうですから、一人で周りにいる魔物を間引いてもらいましょう。私はいつも通り後衛の魔物の相手をします」
「正輝と僕はどう動けばいいんだ?」
「お二人は魔法攻撃の後は後方で見ていてください」
「えっ、僕達は必要ないの?」
「ここでお二人に魔法攻撃以外で働いてもらったら、私達が必要なくなります。見ていてください」
何となくモヤモヤするが、戦略を立てるのを任せた以上は言われた通りにしようと思う。そうこうするうちに世那さんの順番になり、ボス部屋へと入っていった。
えっ、五分もせずにボス部屋の扉が開いたよ。早過ぎませんか?ドロップアイテムの回収もしているんですよね。ビックリしている場合じゃないね、僕達の後ろにも順番待ちのパーティが並んでいる。
いつも通り、僕を先頭にボス部屋に入っていった。扉が閉まり戦闘開始だ。一斉の魔法攻撃をお見舞いした後は、正輝と二人で美姫の後ろで観戦させてもらう。
「正輝、どう思う?」
「詩音の動きが良いな。新しいスキルがフィットしたのか、昨日までとは別人レベルだぞ。皐月と綾芽ちゃんのコンビも良いぞ。皐月がガードして、綾芽ちゃんが全て一撃で倒すから、効率も抜群に良い。美姫は分かった上で戦略を立てたんだよな、たいしたもんだと思うぞ」
四人で危なげなく、最後の魔物まで倒してしまった。四人でハイタッチして喜んでいるよ。正輝と僕はドロップアイテム回収マシーンになって、そこらじゅうに落ちているものを収納していった。銀色の宝箱は四人の内の誰かに開けてもらおう。
「四人でジャンケンして宝箱を開ける順番を決めてよ」
ジャンケンの結果は、皐月、綾芽、詩音、美姫の順番になった。一応正輝と僕もジャンケンしたけど、結果は教えなくても分かるよね。
皐月が開けた宝箱の中には女性用の靴が入っていた。銀色の宝箱の靴とは期待できそうだね。
ボス部屋奥の階段を降りて十一階層に行くと世那さんが待ってくれていた。
「世那さん、ボス部屋の攻略が早過ぎませんか?」
「そやろ、【サイクロン】のお陰やで。一発で、ほとんどおらんようになったわ。ええスキルをくれた麟瞳には感謝やな、ありがとう」
「一発ですか?」
「麟瞳も六十程なら雷で一発や、ビックリすることないやろ。ウチもええ攻撃方法を手に入れて嬉しいわ」
確かに五、六十程なら僕でもいけるから、不思議でもないな。喜んでいる世那さんが見れて良かったよ。
セーフティーゾーンで御昼御飯にする。いつものお弁当を収納から出し、皆に配っていった。《カラフルワールド》の方も真姫の時間経過のないマジックポーチに収納しているから、美味しくお弁当を食べていることだろう。
「世那さん、何かアドバイスはありませんか?」
「今日のところは何もないわ。パーティとしてよう訓練できてると思うで、意思が統一されとるように見えるわ。たいしたもんや」
「それは美姫のギフトのお陰ですね。僕達は戦闘中に念話で会話しているんですよ。全体を美姫が見ながら指示も出してます」
「何やそれ、反則やで。凄いギフトをもろうとるんやな、正直羨ましいで」
同感です。確かに僕も反則だと思いますよ。
「詩音、投擲球は重くはないのか?」
「ミスリルのお陰っすかね、見た目ほど重くないっす。ちょうど良いっすよ」
「自動帰還って凄いな。いつの間にか詩音の手の中に戻っているよな」
「戻れと念じると、右手に戻って来るっす。連続で投げることも出来るっすから便利っす」
「詩音、俺からも質問していいか?」
「勿論大丈夫っす」
「【瞬間移動】スキルって連続では使えないのか?もっとスキルを使えば楽に倒せそうだけどな」
「一回使うと、次に使えるようになるまでは、ある程度時間が必要みたいっす」
おおー、クールタイムってやつだな。スキルの使い所も良く考えないといけないようだね。
「皐月は【先読み】スキルを使ったのか?」
「オレのスキルは使うというより、ずっと効果がありそうだぜ」
「皐月のスキルもパッシブスキルなんだな。効果はどうなんだ?」
「何と無くこう動くだろうと感じるぞ。まだその感覚に付いていけてないような気がするぜ」
なるほどね。某アニメのニュータイプっぽいなー、ちょっと羨ましいぞ。
「綾芽の【気配察知】はどうだった?」
「まだ近くの魔物しか分からないけど、見てから動くよりも反応が早くなった気がするよ。視覚の外にいる魔物の存在を感じるから、攻撃の組み立ても楽になったと思うよ」
三人とも新しいスキルを気に入ったようだね。スキルは使っていかないとダメだよね。今後に期待が膨らむよ。
「皆さん、空になった弁当箱を回収しますね」
美姫は相変わらず気が利くね。全員の弁当箱を回収してくれた。
「クリーン」
………なるほど。スキルは使っていかないとダメだもんね。
「今日は、もう一度六階層に戻って探索しようか?」
スキルに慣れてもらう為にも、同じ階層での探索を提案して了承してもらった。
「ウチはこの後は先に行くわ。六時に六階層のセーフティーゾーンに集合やったな」
世那さんと別れた後に、僕達は六階層へと転移した。
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