第163話 パネルスイッチの解読

 食事を楽しく終えた後は、食事の片付け組と台所の食器棚や家電の設置組、パネルスイッチの解読組に分かれて動く。僕は世那さん、美紅さん、真姫、皐月と一緒にスイッチの解読組だ。何故このメンバーになったのかはお察しの通りだろうが、まさか世那さんと美紅さんに他の組に入ってもらうことは出来ない。そして大卒の二人に期待して知恵を出してもらおうと選抜した。僕が一番役立ちそうにないが、登録者なので必要だろうということで参加している。


「これはモニターカメラで間違いないだろう。龍泉さん押してみてくれないか」


 確かにそのまんまの絵が描かれているスイッチを押してみる。凄いね、外の映像が映ったよ。四方向と玄関の映像、ズームも出来るよ、現代的だね。五つあるスイッチの内の二つ目が解明できた。


「この絵は魔石やろ。魔石が携帯ハウスとどう繋がるんや?」

「魔石はエネルギーとして使われてますから、この家の動力源かもしれません」

「なるほどね。コンセントがあるんだから、電気が必要だもんね。水も何処から供給されるのか分からないないから、それも関係しているのかな?取りあえず、スイッチを押してみるよ」


 スイッチを押すと壁の一部に空洞が現れた。ここに魔石を入れれば良いのかな?


「皐月か真姫、今日の探索で得た魔石を入れてみてよ。今僕は一つも魔石は持ってないからね」

「麟瞳は魔物そっちのけで、一生懸命野菜を取っとったけど、何をしとったんや。わざわざ自分に当たらんもんを取りにいかんでもええやろ」

「フッフッフッフー、世那さん、僕がそんな無駄なことをする筈ないじゃないですか。ジャーン」


 今日の成果を腕輪の収納から出して見せる。


「僕の収納は特別なんですよ。今日キャッチした野菜も収納してしまえば消えずに残るんです。今日はジャガ芋と玉ねぎでしたが、高級フルーツを投げて来るトレントモドキもいる筈です。今後に期待しててくださいね。でも、これは秘密にしておいてください。因みに魔物の使っている武器も収納してしまえば消えずに残ります」

「この前のゴブリンとオーガの戦いで使い古された武器があったのは、龍泉さんの収納のせいだったのか」

「美紅さん、その通りです。あの時は戦闘に邪魔な物は全て収納していたので、沢山ありましたよね」

「三億円だったか、流石凄い能力を持った収納だな」

「いえいえ、この性能は装備してから大分後に気づいたんですよ。たまたまゴブリンソードマンの剣が邪魔で収納してみたら後に残っていたんですよ」

「なんでもやってみるものだな。恐れ入ったよ」

「リーダー、魔石を入れてみるぞ」

「ゴメンゴメン、皐月お願いするよ」


 皐月が空洞に魔石を入れるとメモリのようなものが表示された。一つ二つと増やしていくと微妙だが少しメモリが伸びているようだ。


「これも正解のようですね。後で今日の魔石を回収したメンバーに入れてもらいましょう」


 これで三つ目のスイッチが解決した。案外スムーズに解読できるもんだね。 


「この家の輪郭が点線で表されているものもなんとなく想像できるわ」

「携帯ハウスが見えんようになるんか?」

「世那さん、その通りだと思います」


 おお、凄い機能だぞ。


「それは凄いなー。毎日携帯ハウスを収納しないといけないと思って、休みの日をどう作ろうかと悩んでたんです。でも、見えなくなるなら携帯ハウスを出したままにしても良さそうですよね」

「あまり探索者が通りそうにない所なら可能だと思う。休みはどうするつもりなんだ?」

「うーん、二勤一休か三勤一休ですかね。メンバーと相談して決めたいと思います」

「龍泉さんには悪いけど、どちらの体制になっても二回のうちの一回の休みは返上して、君と奈倉さんと世那と私の四人で探索をしてほしい。早く完全攻略して世那と私がどの階層でも転移できるようにするのに協力してもらいたいんだ。世那と私は交代で二つのパーティの指導をしたいと思っている。転移できないでは元も子もないからな」

「確かにそうですね。指導をお願いした身としては、全力で協力させていただきます」


 では、スイッチを押して確認してみましょう。


「真姫、スイッチを押してみるから、外から見ていてほしい」

「了解だわ、ちょっと待っててね。私が出るのをモニターで確認してからスイッチを押してね」


 なるほど、やっぱり真姫は頭が良いなあ。僕はモニターなんか考えなかったよ。えっ、僕がおバカなだけだって、ほっといてください。さっき切ったばかりのモニターカメラのスイッチをもう一度押す。しっかりと外の様子は見えている。真姫が玄関から出たのを確認した。よし、ステルス機能スイッチをオンだ。


「麟瞳さん、ちゃんとスイッチは押した?」

「ああ、真姫が出てから少しして押したよ。消えなかったのか?」

「ええ、ずっと見えていたわよ」


 しばらくして真姫が戻ってきたが、家は消えなかったようだね、残念。


「違ったようですね。じゃあ何のスイッチですかね?」

「いや、そうとは限らないだろう。登録した人には見えるのかもしれない。いや、見えないとおかしいと思うな。見えないと一旦外に出たら家に戻れなくなってしまう」

「どうやって確認できるんですかね?皆が登録したから確認できないですよね」

「登録の解除が出来ればすぐに確認できるが、解除する方法も分からないな」

「取りあえず、保留ということにしておきましょうか」


 残りは一つだけ、星マークが散りばめられたようなボタンだ。僕には何のスイッチか全然分からないな。


「何のスイッチか全然想像できないんだけど、星が散りばめられているんだよね。そんなのプラネタリウムぐらいしか知らないよ」

「麟瞳さん、プラネタリウムって、そんなネタを仕込むわけないでしょ。もう笑わせないでね。もっと役立つ機能を表していると思うわ」

「何なのか分からへんな」

「キラキラしているようにも見えるぜ」

「皐月、それかもしれない。家を綺麗にしてくれるのかもしれないわ」

「龍泉さん、押してみたら何のスイッチか分かるかもしれない」

「僕達に危害が加わるようなスイッチはありませんでしたもんね。じゃあ押してみますね」


 確かに押してみた方が早いだろうね。言われたように、ボタンを押してみた………ん、何も起きないね。


「マスター、二階の部屋の天井が………」


 遥、真琴、綾芽の後片付け組が慌ててやって来た。


「どうした?」

「後片付けが終わって二階のルームツアーをしてたんですけど、突然天井に星が映ったんです。星がゆっくり回っています」


 思わず真姫と顔を見合わせてしまった。


「ギャフン!」


 いつのネタだよ!







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