第159話 福岡へ向けて岡山から出発、そして探索者センターでのトラブル
リーダー達と言葉を交わしてから岡山のクランハウスを出発しました。今日は四百キロ越えのロングドライブです。気を引き締めていきましょう。
「オレも皐月姉が良いぞ。美姫はどうだ?」
昨日詩音が年下のメンバーへの呼び方のお願いをしてからの流れですね。
「私もそれが良いです。真姫とは双子ですが、私の方が妹です。真姫にはこんなに可愛い妹がいますが、私にはポンコツな姉しかいません。美姫姉でお願いします」
「私のどこがポンコツなのよ!」
あれ、何か聞こえましたか?運転に集中していて聞き逃してしまいました。
それにしても、女子が九人もいると騒々しくなりますね。理想の男性は?と言う話題でひとしきり盛り上がりました。私は当然、加納さんと榊さんです。滅茶苦茶カッコイイですよね。以前の《Black-Red ワルキューレ》さんのクランハウスでの食事会は最高でした。最後の記念写真を撮るときには、皆は気づかなかったでしょうが、真姫と場所取りで骨肉の争いをして、私が榊さんの隣をゲットしました。その後、ちゃっかり真姫もお二人の後にいましたね。おっと、話を戻しましょう。理想の男性でリーダーを挙げたのは綾芽だけ………相当なブラコンです。
リーダーに言われたように、サービスエリアやパーキングエリアでは頻繁に休憩しました。尾道ラーメンやもみじ饅頭が丸ごと一個入ったソフトクリームを食べたり、イチゴソフト、キャラメルサンデー、大判焼き等を食べました。あれ、私達ずっと食べてませんか?特にソフトクリーム系は三つもお腹に入れています。後でダンジョンで暴れないと太ってしまいそうですね、気をつけましょう。
でも、今回の福岡ダンジョン攻略は私と詩音の為に選んでくれたようでリーダーには感謝しています。三十階層での三度の失敗は今も心に残っています。以前に苦手なダンジョンを聞かれて、森林型で素早い魔物が苦手だと言ったことがありますが、それが福岡ダンジョンの三十階層のボス部屋です。《千紫万紅》にはリーダーも正輝さんもいますから、アッサリと超えてしまうかもしれません。でも、私も詩音も負けていられないと思っています。二人で話をして固く決意して来ました。昔の自分を超えたいと思います。
やっと福岡ダンジョンの探索者センター駐車場に着きました。本当にユックリと休憩しながら来ました。まだまだ暑いから季節を感じていませんでしたが日の入りも早くなりましたね。もう六時になろうとしていますから、太陽も低くなっています。出発から九時間、良く運転できたと思います。喫茶コーナーでお茶しながらリーダー達の到着を待ちましょうか。皆で探索者センターに入りました。
「おい、美姫じゃないか?戻って来たのか?」
ちょうど探索者が探索を終わらせて買取りの為に戻って来る時間です。前のパーティメンバーとバッタリ遭遇しました。もう会いたくなかったんですけど、しょうがないですね。
「ええ、ここを探索する為にやってきました」
もう前のパーティを離れて一年半近く経っていますが、四人はまだパーティを組んでいるみたいですね。そして知らない人が一人だけいます。
「周りにいるのが今のパーティメンバーなのか?」
「いいえ、全員仲間ですが、この中でパーティを組んでいるのは二人です。いや、今回は三人ですね」
「へーっ、全員女子なんだな?あれ、詩音もいるじゃないか?まだ詩音なんかとパーティを組んでいるのか、そんなんじゃ強くなれないぞ」
「おい、詩音をバカにするのはやめろ!お前達よりよっぽど強いぞ!」
「お前は誰だ!詩音が強いって、パーティの弱さがよくわかるよ。よくBランクダンジョンに来れたな」
「なんだと、パーティが弱いだと!オレ達はここを完全攻略するために来たんだ。弱くはないぞ!」
最悪の事態です。こんな時に、正輝さんから電話がかかってきました。
「俺達は今関門海峡を越えたところだ。美姫達は無事に到着できたか?」
「ええ、さっき到着しましたが、今トラブルになってます。私と詩音の前のパーティメンバーと揉めています」
「は~っ、なんだよそれは。無事なのか?」
「今、皐月がヒートアップしています」
「出来るだけ早く行くから、皐月が手を出さないようにしておいてくれ。いいか、手を出したら負けだからな」
確かに皐月は出会った頃よりは大分大人しくなりましたが、手を出してしまいそうな気がします。
「美姫、こんな時に電話か?その強いと勘違いしているオレっ娘の口を閉じさせろ。ホントに完全攻略出来ると思っているのか?頭がおかしいんじゃないのか」
あれ、前のリーダーはこんなに好戦的だったでしょうか?私達が完全攻略出来ないと思っているんですね、頭に来ますね。
「頭がおかしい訳ではないですよ。私達はここを完全攻略する為に来ました。そちらのオレっ娘と詩音と、こちらの十九歳のBランカーと一緒に私はすぐにAランカーになります。貴方達は何階層まで攻略したんですか?まさかまだ三十階層を超えていないことはないですよね。もう一年半近く経っているんですから、お強いんでしたら完全攻略手前ぐらいまでは進んでますよね。それとも完全攻略の難易度が分かっているようですから、もう完全攻略しているんですか?」
「いや、まだ完全攻略は出来ていない」
「何階層まで攻略しているんですか?」
「そんなの言わなくても良いだろ。なあ、俺達ともう一度パーティを組まないか?前にパーティに引き止めようとしたように、美姫の遠距離攻撃は凄かったよ。今の俺達と組めばここを完全攻略出来るぞ。今俺達は五人しかいないからすぐにパーティに入れるぞ」
「結構です。貴方達のパーティには興味がありません。さっきから言っているように今のパーティで完全攻略します。では、残りのパーティメンバーを待っていますから失礼します」
なんとか皐月が手を出す事態は回避出来ました。喫茶コーナーでリーダー達を待ちましょう。
「まだあの人達いるよ」
「しつこい男は嫌われるのにね〜。でも、さっきの美姫姉は格好良かったで〜す」
早速美姫姉呼びをしてくれています。なんだか良いですね。
「皐月、ありがとうっす」
「オレは何でお礼を言われたんだ」
「私のことバカにするなって、弱くないって言ってくれたっす」
「なんだそんなことか。オレは思ってることしか言ってないぞ。詩音はいつもオレと組んで魔物を倒してるよな。詩音が弱かったら、オレも弱いことになってしまうぞ、それは許せないぜ。それにさっきの奴より、美姫の方がよっぽど怖いぜ」
何故私の方が怖いのでしょうか?理解できません。あっ、リーダー達が到着したようです。到着前にもう一度連絡をしてくれましたから、喫茶コーナーにいることは伝えていました。解決したことも伝えたんですが急いで来てくれたようですね。
「皆、大丈夫か?」
「マスター、大丈夫で~す。美姫姉が格好良かったで~す」
「皐月も手を出していないんだよな」
「正輝さんはオレの事をどう思っているんだ?あんな弱い奴に手を出す筈がないぜ」
「誰が弱いだって!」
まだ未練たらしく残っている元パーティメンバーが会話に入ってきてしまいました。もう早く帰ってくれませんか?
「君は誰なんだ?」
「アンタがパーティリーダーなのか?美姫を俺達のパーティに移籍させてくれ。詩音が入っているパーティだから大して強くないのは分かるよ。美姫はアンタ達のパーティには勿体ない。是非俺達のパーティに来てほしいんだ」
「詩音が入っていたら強くないって、詩音は僕達のパーティの大事なメンバーだ、馬鹿にしないでほしいな」
「お前達はどれだけ強いんだ?美姫がお前達のパーティに入ったら可哀想だろ」
正輝さんの言う通りです。あんなパーティには絶対に入らないです。
「俺達は美姫さえ入ってくれれば、ここを完全攻略出来る自信があるんだ」
「なんだ美姫がいないと弱いから、入ってほしいんだな」
「俺達が弱いだと?」
「ああ、弱いと思うぞ。俺とそこにいるパーティリーダーは二十歳の時にはBランクダンジョンを完全攻略している。それに今までに京都、大阪、神戸の三つのBランクダンジョンを完全攻略しているんだ。少なくともお前達よりは俺達の方が強いだろ」
「何を揉めとんや?強い、弱いって何の話や?」
「世那さん、すみません。この人が僕達のパーティメンバーの美姫を引き抜こうとしているんですよ。僕達のパーティが弱いと言われたから、僕達の方が強いって正輝が言ってたんですよ」
「そんなん、絶対麟瞳や正輝の方が強いやろ。比べる方がおかしいで」
「Bランクダンジョンを完全攻略したって嘘だろ!それに関西弁のおばさんは話に入ってくるな!」
「おお、勇者誕生!世那さん、絶対に手は出さないでくださいね」
「黒澤様に謝るっす!私の事は何と言われても良いっすけど、黒澤様に対する失礼は許さないっす!」
「えっ、黒澤様………世那さん。エエーッ、黒澤世那!」
「あんたに呼び捨てされとうないわ。早うここからおらんようにならんと、どうなるかわからんで」
この人がリーダーだったんですから、本当にがっかりしてしまいますね。ビビりながらさっさと退散して行きました。尊敬する方になんて失礼なことを言うのでしょうか?信じられないです。
「ハハハハ、関西弁のおばさんって、ハハハハ」
「美紅、何がおかしいんや?あんたも同い年やろ」
「いやー、傑作だな。動画に撮っておきたかったぞ」
周りがざわつき始めました。お二方は余りにも有名です。存在を気付かれたようです。
「急いで入場受付に行くぞ!」
リーダーが声をかけました。いよいよ福岡ダンジョンに入場です。
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