第154話 緊急クラン会議・後編

「探索メンバーも決まったし、一旦休憩を入れよう。二十分後に会議を再開するよ。勿論クランハウスからは出ないようにしてね。じゃあ休憩しよう」


 取りあえず自分の部屋に向かった。部屋に入り、ちょっとだけ考えて美紅さんに電話した。


「明日連絡が来ると思っていたが、何かあったのか?」

「いや、何かあった訳ではなんですが………恵梨花の件はどうなりましたか?」

「ああ、恵梨花は了承したよ。というよりも、今嬉しさで悶絶しているぞ。君の指名が嬉しすぎたようだ」

「悶絶しているって………まあこちらとしても嬉しいです。斥候職はすぐに育たないですもんね。で、美紅さんか世那さんは本当に福岡ダンジョンについて来てくれるんですか?」

「今、探索者協会や探索者省から連絡がきて大変な事になっているんだ。君ではないが、私達も面倒臭くなってね、二人纏めてお願いできないか?クランメンバーには、連絡がきても責任者が居ないので分からないですで通してもらうつもりで指示をしようとしていたところなんだ」

「本当に二人とも来てくれるんですか?何か夢のようですね。で、図々しくも頼み事があるんですけど良いですか?」

「なんだか怖いな」

「いえいえ、全然怖いことではないですよ。お二方にはうちの《千紫万紅》と《カラフルワールド》の指導をお願いしたいです。特に《カラフルワールド》には低階層で力を付けてもらうつもりですが、不安なんですよね。パーティメンバーは恵梨花を入れてフルの六人になるんですけど、パーティ外からアドバイザー的な感じでお願いします。お礼は後でちゃんとします」

「お礼は別にいいんだが、そんなことでいいのならこちらとしてもありがたいな。あと、京都の拠点を貸して欲しいんだ。うちの二番目と三番目のチームは京都のAランクダンジョンの探索をさせたいと思っている。残りは大阪のBランクダンジョンの深層で活動させようと思っているんだ」

「了解です。大家さんにすぐに連絡を入れて使えるように手配しますね。いつもありがとうございます。これで心配事も解消しました。明日一日、長期のダンジョン探索の準備に使うつもりなので、明後日に福岡に向けて出発します。大丈夫ですか?」

「ああ、こちらは大丈夫だ。世那が隣で五月蝿いからちょっと電話を代わるな」

「麟瞳、本当に付いて行ってええんか?メッチャ嬉しいで。で、おやつは何円までええんや?」

「……………さ、三百円までです」

「分かったで、よう考えて決めとくわ。なんやワクワクするな~」


 ………世那さんは真面目に言っているようだ。冗談を言ってるのかと思ったじゃないですか。皆にも三百円で徹底しておこう。こんなことでお怒りに触れたら大変な事になってしまうぞ。


「龍泉さん、電話を代わったよ。こちらで用意するものは何かないか?」

「いや、いつものダンジョンの探索で必要な物だけ用意していただければ、あとはこちらで用意しますよ。ああ、携帯ハウスの中でずっと生活しますから、着替えや生活用品でお気に入りの物があれば持ってきてください」


 明日の夜にまた電話を入れることを約束して電話を切った。


「では、会議を再開するよ。《Black-Red ワルキューレ》さんに電話して確認したんだけど、無事に斥候職の小桜恵梨花さんの参加が決まったよ」

「おっ、小桜か?うちにはピッタリな名前だぞ」


 そうだよね。皐月が言うように僕も最初に名前を聞いたときに思ったよ。でも、今回は臨時メンバーなんだな。


「あと、世那さんと美紅さんのお二人とも参加してくれるそうだ。二人には《千紫万紅》と《カラフルワールド》の指導をお願いした。これで《カラフルワールド》の探索も心配しなくて良さそうだ」

「なあ、クラントップのお二人が参加して《Black-Red ワルキューレ》は良いのか?」

「うーん、お二方が言うには問題ないらしい。むしろ今は雲隠れしたいらしいんだ。まあ僕のせいでこんな状況にしてしまったようだから、お詫びとお礼はまたちゃんとしたいと思っているんだけどね」

「こんな状況って、《花鳥風月》だけでなく《Black-Red ワルキューレ》も何かあるんですか?」

「《Black-Red ワルキューレ》は大阪のAランクダンジョンから撤退すると宣言したんだ。それで今は探索者協会と探索者省からの連絡で大変な事になっているらしいんだ」


 会議室が騒然となっちゃったよ。確かに衝撃的なニュースだよね。


「《Black-Red ワルキューレ》さんの事は今は置いておこう。僕達には時間がないんだ。まずは長期の探索で必要な物をピックアップしよう。お二方の参加もあるんだ、出来るだけ繋ぐ札は使わないようにしたい。短くても三ヶ月間はダンジョンに入ったままだ、よく考えて必要な物を用意しよう」


 ベッド、布団、テーブル、椅子、収納家具等の大きな物から、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、DVDやゲーム用のテレビなどの家電類、やかん、鍋、フライパン、包丁、箸、スプーン、フォーク、食器まで意見が出てくる。誰が料理をするんだ?《千紫万紅》と綾芽が出来ないことは確実だが、大丈夫なのだろうか?食事は一番の心配事だ、タップリと用意しないといけない。母さんに明日一日頑張ってもらうことにしよう。


「私も父に頼んでみます。食材の用意をしないといけないですね」

「僕はちょっと京都の永久拠点に行ったり、今の拠点も解約して来ようと思うんだ」

「俺が食材を保管しておくよ。俺のマジックポーチはかなりのスペースが余っているし、カップ麺等の保存食も大量に入れておくよ」

「じゃあ、正輝と美姫に食料の買い出しをお願いするよ。長期の滞在になるから娯楽用品も用意しておきたい。《カラフルワールド》にはそちらを頼もうかな。ゲームや漫画やDVD等、皆が楽しめるものと食器などの生活用品を用意して欲しいな。詩音と皐月は意見の出た家具や寝具、家電などの大物を買っておいてほしいんだ。僕の京都での用事が済み次第合流して収納していくからね」

「何人か《カラフルワールド》から手を貸して欲しいっす」


 慌ただしく話は進んで行った。


「最後に大事なことを伝えておくよ。おやつは三百円までだから、これは絶対に守ってね。守らないと大変なことが起こるよ」


 皆が一斉にズッコケていたよ。冗談じゃあないんだよ。本当に世那さんの逆鱗に触れたら大変なことになるんだからね!









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