第152話 探索者省との話し合いの後、そして二人の会話

「皆さんすみませんでした。僕のせいで大事になってしまいましたね。特に《Black-Red ワルキューレ》さんには申し訳ないです。大阪住之江ダンジョンの撤退はしなくても良いんじゃないですか?」

「いや、あそこまで民間の探索者を馬鹿にされて黙っていることは出来ない。何らかの形での抗議は必要だろう。自衛隊のお手並みを拝見しよう」

「そやで、麟瞳のせいやないで。それより麟瞳達はこれからどうすんや。ダンジョンに立入禁止なんて出来へんと思うけど、気にはなるんやろ」

「そうですね~、どうしましょうかね。クランメンバーに確認しないといけませんが、遠くに逃げようかと今思っています。ダンジョンへの立入禁止の処分が出る前にBランクダンジョンは完全攻略してしまおうかと、遠くのBランクダンジョンに携帯ハウスを使って篭ってしまおうかなと考えています。ダンジョンの中に居れば連絡も来ないでしょうし、携帯ハウスの性能の把握も出来ますし、一石二鳥です」

「それおもろいやんか。ウチも一緒に行ってええか?」

「それはダメでしょう。クランのトップが居なくなってどうするんですか」

「美紅がおればええやろ。クランの指示はほとんど美紅がするんやから大丈夫やで」

「世那、私に全部押し付けるのは止めてくれ。私が龍泉さん達に同行させてもらっても良いと思わないか?」


 お二人とも何をおっしゃいますか。でも、お二人には頼みたいことがあるんだよね。


「お二方の申し出は大変うれしいんですけど、残念ながら普通に考えてそれは無理ですよね。ええっと、出来れば恵梨花を貸してくれませんか?《花鳥風月》には僕の所属するパーティの《千紫万紅》と、もう一つ真姫の所属する《カラフルワールド》というパーティがあるんです。《千紫万紅》は僕が斥候職の働きは出来ると思うんですけど、《カラフルワールド》には斥候職がいないんですよね。Bランクダンジョンからは罠がありますから、そこが唯一心配なんです。恵梨花には後でお願いしますから、まずはクランの責任者であるお二人の許可をください」

「ヤッパリ世那より私が同行した方が良いみたいだな。世那、クランのことは頼んだぞ」


 ん、僕は恵梨花の同行を希望したんだが?


「美紅、それはないわ。恵梨花と美紅はポジションが被っとるやないか。ここはウチの出番やで」

「恵梨花はまだ未熟だ。一人でよそ様の手助けをするには不安がある。恵梨花の指導も含めて私が適任だろう。龍泉さん、そう思わないか?」

「いや、恵梨花だけで十分なんですけど」


 お二人はどうしてそこまで同行したいのだろうか?


「ちょっとよろしいでしょうか?龍泉様、遠くに行くとは何処に行かれるつもりですか?」

「中里さんは信用していますが、それを言ったら自衛隊や探索者省にばれるのが早くなるかもしれません。ばれる前にダンジョンに入ってしまうのが肝ですから、教えるわけにはいきませんよ」

「今回の事で探索者協会を信じられないのかもしれませんが、出来るだけの協力はします。信じてもらえませんか?」

「ううーん、中里さんは信じていますが、中里さんが一人で僕達に協力は出来ないですよね。そうするとヤッパリ他の方から情報が漏れる事が心配です」

「今回は探索者協会の職員のせいで、《花鳥風月》様と《Black-Red ワルキューレ》様には本当に迷惑をおかけしました。どう償ったら良いでしょうか?」


 河口さんが聞いてくるが、償いなんてどうしてもらえばいいのか想像も出来ないよ。


「それはそちらでお考えください。僕達からの希望は言いません」

「ウチもそうや。今更何されても情報が流れたことがなくなることはないんや。ほんま鬱陶しいで、特にあの弱い自衛隊員には腹立つわ」

「あの脳筋さんが一位かもしれませんよ」

「「それはない!」」

「思わず世那とハモってしまったな。龍泉さん、あの自衛隊員は弱いぞ。私よりも確実に弱いし、龍泉さんよりも弱いと思うな。そんなレベルで間違いない。何を勘違いして自分が強いと思っているのか分からないが、自分が何位なのか分からせれば良かったかもしれないな。まあ、あの機械を見せたらまた売ってくれとか、レンタルさせてくれと言いそうだから使わせないけどな」

「ほんまやで。あの自衛隊員にはこの前のゴブリンとオーガの戦闘で生き残ることは出来へんわ。麟瞳の方が絶対強いで」


 強者だからこそ感じることが出来るのだろうか。まあお二人が断言するんだ間違いないのだろう。


「あと、自衛隊は何故あの脳筋さんを話し合いに連れて来たんですかね?どう考えても人選ミスだと思うんですけど………まあ誰が来ても携帯ハウスを売ったり、貸したりしないんですけどね」

「おそらくだが、あの人と住之江の支部長が繋がっていたのではないかな?支部長の処分を聞いた時にそんな感じで話していたと思う。あの人から自衛隊は情報を得たから連れて来たのかな?私にもそれくらいしか連れて来る理由が想像出来ないな。普通はあんなに頭の悪い人が大切な話し合いに来ないだろう」


 ですよね~、今日一番の謎である。


 取りあえず探索者協会のお二人は、今日の事を探索者省に抗議しますと約束して帰って行った。


「ちょっといいでしょうか」


 探索者協会の二人が部屋を出て行ったタイミングで真姫が話に加わってきた。


「なんや、自由に話したらええで」

「自衛隊も探索者省の方も必死でした。本当にSランクダンジョンから魔物が溢れるのかもしれないと思ったんですが」

「確かにそれは私も感じたよ。でも、私達ではどうしようもないことだ。龍泉さんが格好良く言ってたように、少しでも早く私達がSランクダンジョンの攻略をして行くしかないと思うな」

「麟瞳の言葉に痺れたで、半分以上は笑いそうになって痺れてたんやけどな。で、麟瞳何処に行くつもりなんや?」

「言わないとダメですか?」

「ウチらも信じてくれへんのか?」

「それはないです。僕達にこんなに良くしてもらって感謝してます。滅茶苦茶信用してますよ。皆には確認しないといけませんが、僕は福岡ダンジョンに行こうと思っています。パーティメンバーの中の二人が、福岡ダンジョンの三十階層で失敗しているんですよね。二人のリベンジにもなりますし、関西圏からも遠いですし、ちょうど良いかなと考えています」

「福岡か?とんこつラーメンとモツ鍋しかイメージ出来へんわ。あと辛子明太子やな」


 なんか付いて来る気満々に聞こえるんですけど………


「もしも京都のAランクダンジョンの探索をするのなら声をかけてください。《花鳥風月》で6LDKの拠点を持っていますから、一つか二つのパーティになら使ってもらえるかもしれません。またクランメンバーで話し合って、何処に行くのか決定したら連絡入れます。すぐに決めないと探索者省や自衛隊から何か言って来そうだから、明日には連絡すると思います」


 恵梨花にはお二方から話をしてもらうことになった。僕達は帰ってクラン会議をしよう。ダンジョンへの立入禁止が実現するなら、クランメンバーには悪いと思うが、自衛隊に携帯ハウスを貸すことは絶対に出来ない。真姫と京都へと急いで帰った。


○●○●○●○●○●○●○●


「世那、橘さんが指摘したように、Sランクダンジョンから魔物が溢れるのが近づいていると考えた方がいいと思うが、今の《Black-Red ワルキューレ》でSランクダンジョンの探索は無理だぞ」

「そやな~、どれほど猶予があるんやろか?今日の様子やとそんなに時間はあらへんのかな?そんな情報分かるんか微妙やけどな。まあ加納、榊に美紅とウチは確定やそれに麟瞳と正輝を加えてパーティを組まんとあかんような気がするわ」

「そうだな、現時点の力なら龍泉さんと奈倉さんより上の者はいるが、伸びしろを考えるとそうなるのかな。まあ龍泉さんは青いオーガが推薦するぐらいだから、私達より重要なんだろう」

「取りあえず、加納に連絡しとくわ。福岡にはウチもついて行くで。麟瞳と正輝には早う強うなってもらわんと、何も始まらんわ」

「そうだな、私達が居なくても大丈夫なようにしないといけないな。夕風に指示をしておこうか」








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