第140話 八月の活動

 会議の翌日には新しいバトルスーツに買い替える為に、皆のバトルスーツを買ったお店をまた訪れた。《カラフルワールド》のメンバーが着ているもののように色のバリエーションが多くなっているが、僕が選んだのは当然の黒、これしかない。採寸をして、《百花繚乱》にいた時とサイズがほとんど変わっていないことに少しガッカリして、お店を後にした。筋トレをほぼ毎日行っているのだがサイズアップをしていない。ムキムキになるつもりはないが、もう少し身体に厚みが出てもいいように思う。


「真姫、ポーションはどのくらいあればいいんだ。もう身体が良くなってきたので、明日からリハビリを兼ねて岡山ダンジョンを探索して来ようと思う」 

「《千紫万紅》が今月分として五十本で《カラフルワールド》が六十本欲しいと要望があったわ。合計百十本ね」

「分かったよ。いずれポーションの確保も何かいい方法を考えないといけないよな。そうだ、毒消しポーションが大阪のBランクダンジョンの一階層から十階層でドロップするんだ。真姫もこの情報を覚えておいてね。今後必要になって来ると思うよ。岡山ダンジョン以外でも魔力ポーションがドロップするところがあればいいんだけど、魔力ポーションが出たなんて聞かないよな」

「岡山ダンジョンは麟瞳さんのおかげで、すっかりポーションのダンジョンとして有名になったわ。他のダンジョンでも一度でも出たことがあれば、麟瞳さんなら多数出てくる可能性はあるわよね。一度ポーションの情報を調べた方が良いかもしれないわ」


 その夜に《千紫万紅》の四人と話し合うために、夕食後に小会議室に集まってもらった。


「身体が良くなったから、明日から岡山ダンジョンの探索をしてポーションと出来ればマジックアイテムの靴を確保してきたいと思うよ。四人の探索は上手くいってるかい?」

「はい、やはり頼りになるメインアタッカーがいると、パーティの動きが見違えるほど良くなります」

「いや、【以心伝心】は反則級のスキルだな。ハンドサインなんて使うのも、覚えるのも大変だったけど、このパーティでは戦闘中でも普通に念話で話せるんだよな。探索でこれほど連携が簡単なパーティは他にないぞ。そりゃあ動きも良くなるよ」

「リーダーが戻って来たら、Bランクダンジョンに挑戦したいぜ」

「私も同じ考えっす」

「僕もバトルスーツが出来上がるのが楽しみだよ」

「リーダーは明日から一人で大丈夫ですか?」

「二十六階層から三十階層を回って来るつもりだよ。そこならバトルスーツがなくても大丈夫だろう」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 


 翌日から岡山ダンジョンの探索を始めた。あの大阪のBランクダンジョンでゴブリンやオーガと戦ったことを思えば、二十匹ほどのゴブリン相手では危ない場面などあるはずもなく、順調に周回を重ねる。ここでも一番大変なのは順番待ちの時間だった。探索では【結界魔法】と【火炎魔法】のスキルも使いながら理解が深くなってきた。残念ながら【火事場の馬鹿力】のスキルは追い詰められないと効果がないのか、意識しても発動した気配はない。余談だが【火事場の馬鹿力】は何処かで聞いたことがあると思っていたが、吉備路ダンジョン群の宝箱からこの効果のあるベルトを得たことがあった。そのベルトは桃の誕生日プレゼントになったらしい。そう綾芽が言っていた。そして氷魔法の刀も使ってみた。斬撃を飛ばすことが出来ないので、僕にとってスペアの刀という認識だが流石の効果がある。寒さに弱い魔物には効果的だと思う。二刀流は練習しているが実戦ではとても使えるレベルにはなっていない。


 一日で四回ずつ周回したので、ポーションは想定していた数よりかなり多く確保出来た。しかも宝箱から特級ポーションが一本出てきた。これはオークションには出品せずに、クランのために取っておくことにした。資金的に困ってはいないし、以前の真姫のようなことがあるかもしれない。備えあれば憂いなしだね。


 そして、欲しいと思っていた風魔法が付与された靴は出てきたが、もう一つ空歩の靴というマジックアイテムが出てきた。どちらを使うか非常に迷った。風魔法の靴は、雷魔法を纏って移動するよりも速度が遅いが使い勝手は良かった。いわゆるちょうど良い速さでの移動が出来ていた。でも、空歩の靴は立体的な動きができるようになる。考えた結果空歩の靴を使うことにした。移動速度は雷魔法で調節すればなんとかなりそうだし、確りと練習をしますね。


 あとはいつもの時間経過のある三十立方メートルマジックポーチが二つ、魔力回復の指輪を使えるマジックアイテムとして残しておくことにした。魔力回復の指輪はストックがなくなっていたので地味に嬉しい。新メンバーがクランに入らない限り使うことはないかもしれないけどね。


 最後にもう一つ金色の宝箱から出てきたマジックアイテムがあるが、これは《Black-Red ワルキューレ》へのお礼用に取っておくことにした。Aランクダンジョンの探索ではお世話になる。その時のお礼のためだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 八月三十一日の夜の九時前、クランメンバーは大会議室に集まってオークションサイトを固唾をのんで見ていた。いつも通り最後の三十分の価格の変動は激しい。どんどん上昇していよいよ締切になった。


「四億二千万円です」


 落札価格が決まりホッと一息。なんとか八月のクランのランクも上位になりそうだ。



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