第129話 内緒にしてくださいよ

 パーティーの最初に僕達クラン《花鳥風月》は、クラン《Black-Red ワルキューレ》に所属している百名を超える人達の前で紹介された。そして僕が呪いを解いたことは皆に知らされ、沢山の人に感謝された。泣きながら感謝して来る人もいて、呪いにかかっていた人が沢山の人に愛されているのを感じた。


 《Black-Red ワルキューレ》に所属しているのは女性だけ、僕にそんな人達と話すことなど出来る筈もない。感謝の言葉を一通り頂いた後は、ほとんどクランマスターの黒澤さんか、サブマスターの赤峯さんと話して過ごした。


「さっき六月の月間ランキングが発表されたよ。君は気にならないか?」

「滅茶苦茶気になりますよ。本の開示が認められるまではランクの上位をキープ出来るように頑張ってますからね」

「ウチも気になるわ。美紅、結果はどうやったんや」

「《Black-Red ワルキューレ》は五位で、《花鳥風月》は一位でした」

「また負けたんか。あんたらはどんな依頼を受けとるんや?《東京騎士団》にも勝っとるやんか。ほんま凄いで」

「《Black-Red ワルキューレ》さんはどんな依頼を受けているんですか?」

「私達は普通の依頼がほとんどだよ。Aランクダンジョンの魔石の依頼が一番多いな。エネルギー関係や自動車、電気製品等の多くの企業が依頼を出すからね。無くなることがない。他にはドロップアイテムや宝箱から出てくる物で依頼にあるものがあればラッキーだね。先月は呪いのこともあったから、あまり依頼はこなしていないから、五位でも上出来だよ」

「僕達は先月は依頼を一回しか受けていませんよ。アダマンタイトの納品です。まさか一位になるとは思っていませんでした」

「一回だけで一位なんか?」

「四月も一回だけの依頼達成で三位になったんですけどね。金額は四月の方が高かったけど、難易度が高いと評価も高くなるんですかね」

「ああ、難易度は重要な項目になっている。魔石の納品も大きさによって五段階に別れているからね。二十階層の魔石と七十階層の魔石だと難易度が三段階も違う。アダマンタイトの納品だと最高難易度で間違いない。私達は一度だけミスリルを納品したが、小さな塊だったけどそれのおかげで一位になったと思っているよ。因みに四月の一回の依頼って何だったんだ?」

「内緒にしてくださいよ。四月のオークションに出品したダイヤモンドです。難易度は最低評価だと聞いてます」

「あの四億五千万円になったダイヤモンドか」

「それはすごいわ。ようウチら上におったんやな。アダマンタイトはナンボになったんや」

「これも内緒にしてくださいよ。四億円です。宝箱からアダマンタイトの延べ棒が十本、十キログラム出てきたんですよ。いやー、ラッキーでした」

「あんたラッキーいうても凄すぎやわ。あのスキルが凄すぎなんか?」

「ええ、だから昨日言ったじゃないですか。僕のスキルがバレると怖いって。本当に眠れなくなりますよ。言わないでくださいね。頼みますよ」

「ああ、分かったよ。勝手に鑑定して申し訳なかったな。約束は守るよ」

「前に岡山ダンジョンの探索者協会から出品された特級ポーションもあんたなんか?」

「これも内緒にしてくださいよ。さっきから同じ事ばかり言ってますね。そうですよ。物凄い落札価格になってビックリしました。あのあとすぐに青いオーガに会って、ゴブリンキングの攻撃で真姫の左手が斬られんです。特級ポーションを取っておけば良かったと後悔しましたよ」

「真姫って、君達のサブマスターの子だろ。左手はあったと思ったが、義手なのか?」

「これも内緒にしてくださいよ。岡山ダンジョンで特級ポーションが出てくるまで探索をし続けたんです。四ヶ月かかりましたよ。大変でした」

「この前オークションに出品された特級ポーションも君なのか?」

「あれは違います。僕達は別の物を貰いましたから」

「その言い方やと、あんたもその場におったんやな」

「あっ、失敗したな~。僕もその場にいましたけど、絶対に内緒にしてくださいね。僕だけの話ではないですから。お酒に酔ったのかな?僕、お酒に弱いんですよ」

「前の特級ポーションを落札しはったのは《東京騎士団》やで。お礼をしたいって言うとったけど、匿名やから分からんって残念そうにしとったわ。岡山の協会にも連絡したって言うとったで。名乗り出るか?いろいろ頼みやすうなると思うわ」

「名乗り出ませんよ。本当にスキルがばれるの困りますから。今日もしゃべり過ぎたと反省してますよ」

「でも、いずれ会うんや。言うてもええと思うけど、ダメなんか?」

「いずれ会うんですか?」

「大阪Sランクダンジョンの本を見るときに会うだろう。昨日連絡したら、二つ返事で了承してくれたよ。何が書かれているのか、興味を引かれると言っていた。本を見たいと思っているよ。勿論私達も見たいと思っている」

「そうですか。ちょっと考えさせてください。後日返事をします」


 それからも話をいっぱいした。クランの運営や、これだけの人数を纏める方法、ダンジョンに関することなど聞くことはいくらでも出てくる。でも、パーティーで話すようなことじゃないね。


「折角のパーティーなのに、僕の話し相手になってもらってありがとうございました」

「今日のパーティーは皆を安心させるためのものだから、私達があまり前に出ないほうが良いんだよ。私達に気軽に話し掛けられない子の方が多いからな。これもなんとかしたいんだがな」

「また来てな。あんたとの話はおもろいわ。そやな、一ヶ月以内にまた会いましょ。入団テストまでにな」


 クランメンバー達は仲良くなれたみたいだ。連絡先を交換しているのをチラチラ見かける。


「ほなら、ウチらも連絡先交換しとこか」


 《Black-Red ワルキューレ》のクランマスターとサブマスターの連絡先を入手してしまった。更に名前呼びをするように強制された。勿論世那さんからだ。


 パーティー終了後は京都まで帰る気力がなく、近くのビジネスホテルに泊まった。明日は探索を休みにしよう。なんだかとっても疲れたよ。






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