第14話 居酒屋風晩御飯と妹へのアドバイス

 家に着いたのは六時半過ぎ、既に全員帰宅している。晩御飯の用意を綾芽が手伝っているようだ。


「ただいま」

「お帰り、麟瞳。早速岡山の地ビールいただいてますよ。美味いなー!」


 父さんは食事前から既に飲ん兵衛になっている。すぐに準備が整って晩御飯を家族全員でいただく。今日は居酒屋風メニューで、母さんも飲む気満々のご様子だ。焼き鳥、唐揚げ、もつ煮込み、ウインナー、枝豆、出汁巻き、ポテトサラダ、冷や奴、食卓の上は大にぎわいだ。


「麟瞳もお酒飲むかい?」

「じゃあ、チューハイを一本貰おうかな」

「何がチューハイだ。お前は女子大生か?ビールにしろ、ビールに」

「いや、ビールは苦手なんだよ。ただ苦いだけだし」

 

 父さんに絡まれてしまった。酔っ払いはほっとくに限る。母さんにお任せだ。


「綾芽、明日は倉敷ダンジョンに行くのか?」

「そうなんだよ。皆都合が付くということでダンジョン前に九時に集合することになったんだ。お兄ちゃんよろしくね!」

「今日倉敷ダンジョンに行ってきたんだけどな、人がいっぱいで低階層では何も出来なかったよ。明日は土曜日でもっと人が多くなると思うから、できるだけ時間を早めた方がいいと思うぞ」

「そうなの!うん分かった。食事が終わったら連絡するよ」


 それからは、綾芽からの倉敷ダンジョンについての質問攻撃が始まった。最後には結局今日も映像を見せることになってしまった。


 晩御飯はたまにはこんなのもありだなと思う。特にビール好きの父さんには堪らないだろう。チューハイを飲んで少し良い気分になりながら、美味しくいただいた。因みにこのおつまみセットもお弁当にしてくれていたよ、ありがたいね。両親はもう少し飲んでからということで、お先にお風呂に入らせてもらおう。


 風呂上がりにリビングへ、今日もテレビに繋いで映像を見る準備をする。しばらくすると綾芽がやって来た。


「お兄ちゃん、明日の六時に倉敷ダンジョンに集合になったから、よろしくね!」

「ああ分かった。母さんにもちゃんと伝えとけよ。お弁当を頼んでいるからな。あとな、明日はパーティ登録はせずに付き添うよ」

「何でパーティ登録しないの?」

「どうも僕のドロップ率が人と違うみたいだからさ、変に思われても嫌だしな」

「ドロップ率が人と違うって?」

「魔石が必ずドロップするんだよ。普通は半分くらいしかドロップしないって聞いてね。まあ昨日初めて知ったんだけど、衝撃的だったよ」

「確かに衝撃的だよ。皆の倍は稼いでるって事だよね。本当に羨ましいよ」

「明日は早いし、風呂に入って来な。風呂上がりに映像見ながら簡単なレクチャーをするから」


 綾芽が風呂に入っている間に、準備を終わらせて飲み物まで用意した。因みに僕の飲み物はアルコールではないよ。お酒あまり強くないんだよね。


「では始めるぞ〜、まずは綾芽のパーティメンバーの構成を聞いておこうかな」

「大盾使い二人に槍と弓と薙刀だね」

「その大盾が二人の布陣は流行っているのか?結構ダンジョンで見かけるんだけど」

「学校で勧められるんだよ。パーティが安定するから盾職は人気があるぞってさ」


 上手い盾職なら問題ないだろうが、素早い魔物には逆に弱点になることもあるんだよね。映像でウルフとの戦闘を見せながら説明をしていく。結局ラビット系は今までの方法でチャレンジして、ウルフ系は盾で弓術士を守りながら槍と薙刀で攻撃を仕掛けるようにアドバイスをした。うまくいかなければその場で修正を行いながら最適解を見つけていけば良い。


 明日は知らない人との集団戦である。一応自分のステータスをチェックしておこう。


「ステータス」


 唱えると同時に、右手の手の平にダンジョンカードが出て来る謎テクノロジー。ゲームのステータスと違って自分の強さが全然分からないものだ。ランクもダンジョンを完全攻略する度に自動で更新されている。スキルの確認をするときとダンジョン前でパーティ登録するとき、それと探索者証の更新のときにしか必要としない。スキルも僕の場合、全然増えないんだけどね。


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ランク:A


名 前:龍泉 麟瞳


スキル:点滴穿石 剣刀術 





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 カードの隙間の多いこと、七年間以上もダンジョンに入り続けてスキルはたったの二つ?いや、三つに増えているぞ!【幸運】のスキルを新しく取得している。いつ得たのだろうか?京都のAランクダンジョンに入る時にはまだ無かったのでその後だな。このスキルのおかげで宝箱の中身が凄いことになっているんだろうな。ありがたいことだ。


 その夜は久しぶりにスキルを得たことに興奮して、なかなか寝付けなかった。しょうがないよね。





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