第13話 買取りと近くの公園

 背中にパンパンのリュック、両手には持ちきれないほどの買物袋を携えてダンジョンの外へ転移した。当然武具店は後回しにして買取り受付へ向かう。ここでも順番待ち、荷物をいっぱい抱えた僕は注目を集めている。


「受付番号百四十五番の方、三番窓口にお越しください」


 やっと順番が来た。窓口のお姉さん、ちょっと顔が引き攣っているように見えるのは気のせいだろうか?大量のカゴにドロップアイテムを入れていく。


「お座りになってお待ちください」


 今日はマジックアイテムが無いので時間はそう掛からないだろう。この後の事を考えながらしばらく待った。予想よりも少し時間が掛かったが呼ばれて窓口へ。


「申し訳ありませんが、部屋を用意しています。そちらに移動していただいてよろしいでしょうか」


 またもや別室へ移動である。良いも悪いもこちらに選択権は無いから大人しく付いていく。


「お呼びして申し訳ありません。私はこちらの責任者の村上と申します。どうぞこちらにおかけ下さい」


 名刺を渡されてソファーに座る。


「早速ですが、少し質問をさせて下さい」

「はい、良いですよ」

「提出頂いたドロップ品は今日だけで収得した物ですか?」

「そっち系の質問ですね。分かりました、岡山ダンジョンの中里さんに連絡を取ってもらえますか。岡山ダンジョンでも同じようなことを言われたので、僕が説明するよりも信憑性があるでしょう」

 

 ゴメンね、おじさん。そっち系かどっち系かは分からないが、面倒臭いので全てお任せします。


 飲みたいものを聞かれたのでアイスコーヒーを注文し、それを飲みながらしばらく待った。丁度アイスコーヒーを飲み終わる頃に、村上さんが戻ってきた。


「お待たせしました。岡山ダンジョンの中里に確認を取りました。龍泉様のドロップ品は凄まじいそうですね。申し訳ありませんでした」

「いいえ、気にしていませんよ。でも運が良いのはここだけの話にしておいて下さいね」

「分かりました。では一之瀬君、内訳をお伝えして」


 ここの買取り受付嬢は一之瀬さんと言うらしい。受付の人って皆美人なんだよね。何か採用基準ってあるんだろうか?と良からぬ事を考えているうちに説明が始まった。


「まずは魔石からです。頭突きラビットの魔石が一個50円で3個ありましたので150円。ホーンラビットの魔石が一個80円で2個ありましたので160円。ビッグラビットの魔石が一個100円で2個ありましたので200円になります」


 ラビット系は魔石が安いな〜、50円や80円って駄菓子しか買えないぞ。


「続いて角無しウルフは魔石一個が100円で126個ありましたので12,600円。角有りウルフは魔石が一個150円で6個ありましたので900円です。魔石の合計買取り金額が14,010円になります」


 魔石のドロップは良くて60パーセントとかいってたら、パーティで探索している人ってどうやって生活するんだよってレベルになるよね。プロの探索者はBランクダンジョンからって言われてるもんな〜、世知辛いよ。


「次にホーンラビットのお肉が100グラム100円で2キログラムありましたから2,000円。ビッグラビットのお肉も100グラム100円で2キログラムありましたので2,000円。角無しウルフのお肉が100グラム80円で88キログラムありましたから70,400円。角有りウルフのお肉も100グラム80円で4キログラムありましたので3,200円になります」


 88キログラムって、ダンジョンから探索者センターまで収納なしで良く持って帰れたな。探索者以外だと絶対持ち運べないし、探索者でも持ったまま戦闘なんか出来ないよね。多分これを村上さんは聞きたかったんだろうな。確かに腕輪がないとありえないよ、反省。


「最後に角無しウルフの毛皮が一つ1,000円で23個ありますので23,000円。角有りウルフの毛皮も一つ1,000円で二つありましたから2,000円になります」


 毛皮より肉の方が一つ当たりのドロップ品で考えると値段は高いが重さが全然違うよな〜。皆どうやって稼いでいるんだろうね。


「食べ比べてみたいので、お肉はホーンラビット、ビッグラビット、角無しウルフと角有りウルフをそれぞれ一つずつ持って帰ります。それ以外は買取りでお願いします」


 受付嬢の一之瀬さんが処理をする為に部屋を出て行った。えーっと、村上さんと二人で何を話せば良いんだ?


「龍泉様の場合は何故かドロップしたお肉が全部二キログラムで揃っていましたが、普通は二キログラムもドロップしないんです。そして何十キロもお肉を持ってたら戦闘なんか出来ませんよ。自分の思い込みで疑ってしまい、申し訳ありませんでした」

「いや、僕も村上さんが連絡している間そのことを考えていたんですよ。両手にいっぱい荷物を持って来たらおかしいですよね。こちらこそ申し訳ありませんでした」


 一之瀬さんが戻ってきた。気まずい雰囲気だったので女神に見えるよ。


「お待たせいたしました。合計109,410円の買取り金額から税金分の15パーセントを引きまして92,999円になります。こちらが買取りの内訳になります。よろしければサインをお願いします」


 ランクの違うダンジョンなのに、マジックアイテムを入れなければ、岡山と同じくらい稼げるんだな。何か意外だったよ。まあ、不人気のウルフエリアで自由に討伐出来なければ、この金額にはならなかっただろうけどね。


「五万円を現金で残りをカードにお願いします。この後、刀のメンテナンスをしたいので封印は後で良いですか?」

「はい、メンテナンスが終わったら買取りの受付へいらして下さい。その時に手荷物等と一緒にお肉もお渡しいたします」


 武具店でしっかりと刀のメンテナンスをしてもらう。受付でバッグとお肉を受け取り刀は封印してもらった。着替えを済ませて近くの公園を覗いてみよう。良い石があるといいな。


 倉敷駅からバスで十分の所に大きな公園があるようだ。しかも川沿いだからなおのこと良い。


 公園は小さい子供を連れたお母さんが沢山いた。木々が沢山生えていて緑が映えている。公園の中には石がそれほどなかったけど、駐車場や近くの池の周りに手頃な大きさの物があった。石って勝手に取っても良いんだよね?更に川原にも足を延ばして一時間ほど散策をしながら石を補給して家に帰った。


 







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