第5話 岡山ダンジョンの一階層から五階層を攻略

 無事に一階層への転移が完了した。転移した場所はセーフティーゾーンになっている。二組のパーティが打ち合わせをしているが、横を通り抜けて先へと進もう。


 事前に調べた通りこのダンジョンは迷宮型だ。少し薄暗い四、五メートル程の幅のある通路を進んでいくが、分かれ道やちょっとした壁の窪みに魔物が隠れている事もあるので要注意。小説などでは最弱とよく言われるゴブリンだが武器を持って、ずる賢い知能を持った魔物である。侮っていては命に関わることもあり得る。


 マップ情報もチェック済み、スマホに取り込んだ情報をヘルメットのシールドに映しながら攻略開始だ。


 前に入った探索者が討伐しているためだろうか、なかなかゴブリンと出会うことがなかった。初エンカウントは攻略開始後十分程たってから、一匹だけの単独ゴブリンだ。棍棒を振り回して来る右手を狙いまずは攻撃を仕掛ける。武器を持っていなければ脅威度はグッと下がる。首を狙って刀を一閃、ゴブリンは黒い靄へと変わりドロップアイテムの小さな魔石を残して消えてしまった。


 この魔石で買い取り価格が100円だから、百匹倒しても10,000円である。うーん、世知辛い。


 一階層ではもう一度単独ゴブリンにエンカウントしたが、あっという間に魔石だけを残して消えていった。よし、二階層から頑張ろう。


 地図を頼りに二階層への階段を見つけ、そのまま階段を降りて二階層の攻略を続けて行う。情報通りならこの階層もあまり旨味はないので、次への階段を目指して最短ルートを進んで行く。途中何度か二匹組のゴブリンに出会ったが、基本通り最初に武器を持つ腕または機動力を削ぐために脚を攻撃し、その後に急所を狙いドロップアイテムに変えていった。この階層では十三匹のゴブリンを討伐し、十三個の魔石と一つのポーションを得た。魔石以外がドロップするとは幸先が良い。


 三階層で初めて戦闘中のパーティに遭遇、大学生だろうか?二十代前半くらいの男性四人パーティだ。二人が大きな盾で三匹のゴブリンの攻撃を防ぎ、残りの二人が槍で攻撃を加える。安定感のある戦い方だが、攻撃力が足りていない。踏み込みが浅いためダメージがそれ程入っていないようで、かなり時間がかかりそうだ。迷宮型ダンジョンは通路が狭いため追い越しするのが難しい。当然魔物の横取りは御法度、少し横道に逸れてみよう。


 横道に入りしばらく進むと早速三匹のゴブリンに出会う。何匹増えても戦い方は変わることはない。最も注意するのは背後を取られないようにすることだ。慎重に攻めて、ゴブリン達は三個の魔石へと変わった。マップ上ではこのまま進んでも突き当たりに当たるので意味が無いように思うが、この道をしばらく進んで行った。後から考えると何となく勘が働いていたのだと思われる。


 そして進んだ先の突き当たりに小さな宝箱があった。こんなCランクダンジョンの低階層に銀の宝箱があったのだ。小さいとはいえ銀の宝箱だ、期待してしまうよね。宝箱を前に大きく深呼吸して心を落ち着ける。浮かれていては危険に対処出来ない。罠に気をつけて宝箱の背面からそっと開けてみる。罠は無く中には腕輪が入っていた。後で鑑定してもらわないとどんなものかは分からないが、久しぶりにワクワクしている自分がいた。


 元の地点まで戻り探索を再開する。最短ルートはさっきのパーティが進んでいると思うので、違うルートを辿るように修正した。魔物とのエンカウントもまずまずで、順調に進み四階層へと続く階段に到着した。この三階層では、魔石が二十五個とゴブリンの棍棒が二つそして宝箱からの腕輪が戦利品だ。


 階段で母特製の三色丼弁当を食べることにする。二食も三食も変わらない、父と妹のついでだからと作ってくれたものだ。美味しくいただき、お茶を飲んで少しまったりした。さあ、続きを行ってみよう。


 四階層、五階層も基本は変わらない。ただ一度に出会うゴブリンの数が最大で五匹まで増えているだけだ。危なげなく攻略できたと思う。魔石が四十三個、棍棒が五本そしてポーションが二本ドロップした。


 そして五階層の最奥ボス部屋の前に到達した。二つのパーティが順番待ちしているので、その後に並んで待つ。


「あの~、お一人ですか?」


 順番待ちをしている一つ前のパーティの女の子が話しかけて来た。どうもガチのバトルスーツを着込んだ僕が気になるようで、パーティ代表として話しかけてきたということらしい。どうせ順番待ちの間は暇なので、少し情報収集をしておこう。


 まず女の子達の男女混合五人パーティは全員同じ大学のサークル仲間だそうだ。頻繁にダンジョンにやって来るが、十五階層までしか到達できていないのでお小遣稼ぎとしては微妙らしい。日によってメンバーが若干変わるようだが、基本五、六人でパーティを組んで攻略する。買い取り金額を人数で割ると普通にバイトで稼いだ方が得をしていることの方が多いらしい。低階層で活動しているのは、危険が少ないこととボス部屋に必ず入れるので討伐後に現れる宝箱が目当てだと言うことだ。初めてボスを討伐した時の宝箱は少し豪華だったが、今はポーションが数本入っているのがほとんどらしい。初討伐は期待できるようだね、気合いが入ってきた。後は十五階層までの情報を仕入れている途中で時間切れになった。サークル仲間パーティがボス部屋に入っていったんだ。勿論僕のこともいろいろと聞かれたから、ちゃんと聞かれたことには答えたよ。


 いつの間にか僕の後にも二つのパーティが並んでいる。二つ目のパーティは三階層で戦っていたツイン盾のパーティだった。いつのまにか追い越していたようだ。サークル仲間パーティがボス部屋に入ってから二十分程経っただろうか、やっと僕の順番がやって来た。


 ボス部屋に入り切ると扉が閉まる。もう帰還石を用いない限りボス部屋の外へは出られない。


 部屋の中には六匹のゴブリンが待っていた。一番後にいるゴブリンだけ普通のゴブリンではないようで、他のゴブリンに指示を出しているように見える。弓や魔法の飛び道具がないので結局は同じ戦法になる。武器と機動力を削いで確実に倒していくと、五分と掛からず討伐完了した。魔石とドロップアイテムを拾って、ではご褒美を貰いましょう。


 現れた宝箱はまたもや銀色、しかも先程よりもサイズも大きい。ボス部屋の宝箱に罠は無いと思うが一応背面からそろっと開ける。


 中には靴とウエストポーチとポーションが五本、このダンジョンって気前良すぎだよね。まだ五階だよ、顔のニマニマが止まらない。


 順番待ちの人もいるので、貰えるものを貰ってさっさと部屋を出る。ボス部屋を奥に出たところに次へ続く階段があり、元には戻れないような仕組みになっている。ボス部屋だけを周回することは出来ないから、討伐後の宝箱を狙うには、また一階層からやり直ししなければならない。

 

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