第4話 事前準備から岡山ダンジョンへ
枕が変わったから眠れないということもなく、しっかりと睡眠時間を取って予定通りに朝五時に起床した。感心なことに既に綾芽がスタンバイしている。
「お兄ちゃん遅い!五分の遅刻だよ!私の貴重な朝の五分を返して!」
「すまん、最初から五時に起きる予定だったんだ。次からは気を付けるよ」
まずはストレッチで身体をほぐして準備運動から始める。その後軽くランニングを十キロほど、いつもは三十分位で終えるが、今日は綾芽に合わせて少しゆっくりと時間をかけて、戻って来たら筋力トレーニングに移る。マットを敷いて腕立て、腹筋、背筋、スクワットをそれぞれ五十回をワンセットにして合計三セット、しっかりと筋肉に負荷をかける。最後に木剣を使って素振りを納得するまでし、最後にもう一度ストレッチを行う。これを毎日こなして朝御飯が定番だ。時間にして二時間程、継続は力なりである。
「学校に遅れちゃうよ!」
綾芽は文句を言いながら急いでシャワーを浴びて、パンを咥えながら忙しく出て行った。因みに綾芽の筋トレの回数は二十回にした。なんだかんだとメニューをしっかりと消化しての登校である。
朝食の後は、ダンジョンの情報を集める。Cランクダンジョンまではネットで調べればかなりの情報を得ることができる。怪しい情報も無くはないが、頭の片隅には入れておいた方が良いように考えている。どこで役立つかはわからないこともあるものである。
あとは持ち物のチェックをして出発するだけであるが、今まではリュック型のアイテムバッグがあったので割と荷物は余裕を持って用意できたが、これからは高校生の時に使っていた普通の大きめのリュックになるので、荷物も厳選して持ち込まなくては肝心のドロップアイテムを持ち帰れなくなってしまう。水と携帯食料が案外場所を取り、荷物を重くしている。これに慣れなくてはいけないのがパーティを抜けて一番残念な事かもしれない。ポーションもしっかりと確認したので、いざ岡山Cランクダンジョンへと出発しよう。
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最寄りの駅からダンジョン行きのバスに乗ること三十分、割と近いところにあります岡山ダンジョン。このダンジョンは岡山では有名な温羅伝説がある神社に出来ている。そのせいもあるのかここは別名鬼ダンジョンと呼ばれている。一階層からファンタジーの定番ゴブリンが出てきて、最終五十階層のボスはオーガである。流石にゴブリンの最上位種ゴブリンキングやオーガの上位種は出て来ない。もしも出て来たら即撤退だ。
ダンジョンに着くとまず更衣室で着替えをする。ダンジョン装備で移動なんて恥ずかしくてとても出来ない。黒地に白いラインがデザインされたバトルスーツを着込む。このバトルスーツは至高の一品で、身体にフィットして一見脆弱に見えるが、特殊素材が使われていて防刃、衝撃耐性に優れている。特に人間の急所と言われているところはしっかりとガードされている安心設計だ。更に黒いヘルメットで一番の弱点の頭部を守る。こちらも軽くて丈夫な特殊素材が使われていて、視界も大型シールドで確保されていてスマホと連動させて情報をシールドの端に映し出すこともできる。更にこのシールドは暗いところでもよく見えるようになっている。頭頂部には小型カメラが装備されていて、360度の映像をシールドに映すことも出来る。攻略後に見返し反省をしたり、もしもの時の証拠にも使える。Aランクダンジョンの攻略用に奮発して買ったんだよね。これらの装備と帰還石で貯金がほぼ無くなったから。腰に刀の鞘を取り付けるホルダーを装着し、白いジャケットを羽織る。靴を履きリュックを背負い完成だ。着替えの入ったバッグと刀のケースを持って受付へと向かう。
受付でバッグを預け、刀の入ったケースを渡し封印を解除してもらう。
「他のメンバーはどちらですか?全員で受付をしてほしいのですが」
「ええっと、今日はソロです」
「ソロですか?大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫です。いざという時には撤退してきます。はい探索者証です」
長くなってもしょうがないので、さっさと受付を済ませることにする。
「Aランク探索者様ですか。失礼しました。こちらの解除をしました。ご確認下さい」
「はい刀を取り出しますね。じゃあバッグとケースをお願いします」
「はい受け取りました。貴重品は大丈夫ですよね」
「ええ入っていません」
「先ほどは大変失礼しました。御武運を」
「はい頑張ってきます」
僕の刀は高校入学から数えて五代目の武器になる。昨年の《百花繚乱》でのBランクダンジョン攻略時に銅色の宝箱から出たものだ。脱退するときに悠希から置いていけと言われたが、正輝がこれは麟瞳の持ち物だと言って貰ってきた。耐久性がアップされた少し青みがかった刀身が気に入っている。
いよいよダンジョンゲートへと向かう。まずはダンジョンの外に取り付けられた扉の所定の場所に探索者証を通しくぐり抜ける。そしてダンジョンの前にある転移の柱の前に、転移の柱はパーティ全員で触れたまま階層を指定すると転移させてくれる。当然攻略している階層までしか転移出来ない。
今回は初ダンジョンなので一階層から。大きく息を吐いて柱へ触れる。何度ダンジョンに入ってもこの高揚感が襲ってくる。よし転移だ、一階層へ。
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