真夏のジェーン・ドウ

梦吊伽

真夏のジェーン・ドウ

アスファルトにバターのように塗りたくられた赤色を私は眺めていた。

こめかみを汗が伝い目尻に吸い込まれて沁みる。

喉の内膜がペタリと張り付いてしまったかのようで声が出ない。

漏れ出た空気が辛うじて

「女性ですか」

という音を形作った。

ジャムのような匂いにずっと鼻の中を占拠されていて辟易する。

入道雲が青空を背景に物凄いスピードで滑っていく。

その速さが私の鼻腔に入り込んでくるものが果実の砂糖煮のような甘ったるいものではないことを思い出させてくれた。

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真夏のジェーン・ドウ 梦吊伽 @murasaki_umagoyashi

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