第56話 迷宮の終わる日 ③

「ふ、余の手勢があれだけだと思うか!」


 150万を超える軍勢を文字通りに消し飛ばした。それでもすぐさま次の手を出してくるか。


 それも想定内だ。


「いでよ、機械兵!!」


 投下されたのは総勢50体ほどの巨大な人型機械。おそらくゴーダ・ゴーダを自律大型化したものだろう。


 つまりは極めて強いということ。


「数の次は個の強さ、であるならば。こちらは最強の個人を出すまで。ユウ・ユウ様」

「うん。道を作るよ」


 英雄の力を存分に振るってもらおう。何せユウ・ユウを止めることなど今の自分たちでさえできない。


 前回は色々な要素が重なって突破できた。今はそんな要素はないのだ。


「やぁあああああああああああ!!!!」


 弾丸のように飛んでいく、迎撃しようとする巨大機械。


「遅いよ」


 大きさを考えれば常識外れの速さで動いていた巨大機械は、ユウ・ユウに腰部を薙ぎ払われた。上体と下半身が泣き別れして、無惨にも倒れゆく。


「ワタクシ、あんなの相手にしていたんですのね」

「単純な暴力においてあれを上回る事は至難だろう」


 つくづく味方にして良かったと思う。


 だが、ただ大きな壁をどかどかと置くだけの事をガーラ・ガーラがするだろうか。


 答えは否。


「小型、中型が紛れて襲ってくるはず」

「ご明察ですサンソン殿。ですが、髭一本触れさせません」


 髭なのか。という思いは置いて、案の定襲ってきた軍勢をカラ・カラが丁寧に処理していく。


 本家本元のゴーダ・ゴーダによって破壊されていく機械群。


 今のところは順調だ。


 だが、ここすらも順調に行かなければお話にならない。


 たとえどれだけ雑兵を討ち取れようが、結局はガーラ・ガーラに届かなければ意味がない。


 今までのは全てを足し合わせても、ガーラ・ガーラには及ばない。


「半ばか」


 もう半分で玉座。言葉に偽りがなければそこまで辿り着けば終わりだ。


「良いぞ、良いぞ、もっと余を楽しませてくれ」


 指を弾くと同時に機械兵が崩れ落ちた。次が来る。


「さて、先ほどの炎はもう一度出せるのかな? 余の兵はもう10万ほど出せるが」


 地の底から溢れ出るのは獣達、四方八方を囲まれる形。


「サンソン殿、どうしましょうか」

「変わらず突貫です。10万出そうが、一度に襲い来るのはせいぜいが10匹が限度。であるならば、この距離はすでに踏破可能。ヤトアとユウ・ユウ様であれば食い破れる」


 ただの肉の壁ならば、問題はない。


「そうだろうと思ったぞ。では二段構えといこう。10万の兵と余の用意した弾幕だ。なあに遠慮はいらぬ。たらふく食え」


 作り出された砲台から砲弾、バリスタから矢、極め付けがレーザータレットと来たか。


「いけますか」

「もちろん。私の後ろから出ないでね?」


 一切を歯牙にもかけない


 歩みを止めもしない


 ただ前に、ただ前に


「押し通る!!」


 速度が乗った自分たちを獣は止められず、弾幕は遮れない。


「握手をしよう、地底の王よ。それだけが望みだ」


 はっきりと見えた。ガーラ・ガーラの顔が。


「よく来たな人間、褒めてやろう。望みを果たすが良い」


 差し出された手を、今握る。


「汝が命脈、断つか否か」


 これで、いや何かおかしい。


「これはどういうことだ。約束を違えたのか」

「いいや、こういうことだ宿敵」


 ガーラ・ガーラの腕、自分が掴んだのいつのまにか鎧に覆われた手。直接触れなければ自分の力は発動しない。


「はははははは!!! 握手はしたぞ? それでは遊ぼうではないか。無粋な事は言わぬ。余だけが相手だ」

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