第55話 迷宮の終わる日 ②

 食事から1時間後。再度集まった時にはもう全員が戦闘体制だった。当然だ、今から乗り込むのは【老害】の居城、難攻不落の迷宮。その最奥。


「カラ・カラ王、頼みます」

「ええ、何があっても送り届けましょう」

「僕も手伝うから、大丈夫。きっといけるよ。ここで待ってるから、絶対に帰ってきてね」


 ランドが万が一やられると結界が解ける。地上待機は止むなしだ。


 ぐにゃりと歪む景色。空間への干渉に伴う浮遊感はすぐに激流の中にいるかのように変化した。


「これは!?」

「耐えてください、すぐに落ち着きます。どうやら迎え撃つ気のようで、抵抗がまるでありません。着いた瞬間から攻撃が始まるでしょう」

「分かりました」


 状態把握後にすぐ放てるよう、準備をしよう。


「出ます。サンソン殿警戒を!!」


 景色を見た。


 広い空間の空中。


 眼前遥か遠くには玉座。


 荘厳かつ力強い衣装、そして王冠を身につけたドワーフ。


 あれがガーラ・ガーラ。


「よく来たな、余の軍勢がお相手しよう。見えるか? 眼下に広がる絶望が」


 下に蠢く何か、そのひとつひとつが武装した迷宮の獣達。


「見たな。余が生み出した175万5092の兵を、さあ超えてみせよ人間。矮小なる力を振り絞って楽しませてみろ」


 想定内だ。


 そして位置も良い。


 直下に軍勢、味方は空中。


 ならば。


「一掃します。その後は玉座に向かって一直線です」

「心得ました。撃つのですね」

「余波に備えてください」


 最大熱量


 最大出力


 出し惜しみはなしだ


「すぅ……」


 深く息を吸い。


 そして委ねた。


 龍皇の遺した炎に。


「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️!!!!!」


 およそ人の声帯からは出せない音量と共に、熱が解放された。


「これが名高き龍皇の……」


 直下へと放射された超高熱は、燃えるという段階を飛ばして相手の消滅させるほどだ。


「ふはははははは!!! その炎は一度出したであろう。余がそんな事をぬかると思うか。阿呆め、兵には全て炎に対する高い耐性を持たせておるわ!!」


 ガーラ・ガーラが大笑いする。


「炎に対する高い耐性か、そんなもので龍皇の攻撃が防げると思うのか」


 あまりにも甘い想定に内心笑ってしまう。耐性程度で防げるのなら、現在の龍皇から素材をとってまで完全遮断などしない。


 その程度なら、悪竜王は世界を焼く事などできはしない。


「余の兵が全滅だと!?」

「自慢の兵隊はいなくなった。お前のところまで行かせてもらう」


 全身が熱い、頭がぼうっとする。ああ、血が上ってきたか。


「ごぶっ」

「大丈夫ですの!?」

「想定内、だ。兵はすぐに補充される。一刻も早く、ガーラ・ガーラのもとへ」

「分かっておりますわ!!!」


 さあ、行かせてもらうぞ。ガーラ・ガーラ。







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