第52話 助っ人
「お前が作った時間は無駄にしない。少し休め、寝た程度で解けるものでもないだろう」
「まあ、ね? 完成させたからには僕の意思で消さない限り残るよ。内側から破られれば別だけど」
「いや、大丈夫だ。ガーラ・ガーラの侵攻が始まるのはまだ先だ」
「分かるの?」
「分かる。だから休め、少しでも体力を回復させろ」
本当のことを言うと、ランドは休まないだろう。予測はあくまで予測、予言でも未来予知でもない。絶対はない。
「へへ、サンソンがそう言うなら、ちょっと休むよ」
「ああ、時が来たら起こす」
がくりと力を失う身体。ただでさえ無理なスケジュールをさらに倍速で進めたのだ。無理もない。
「さあ、保険をかけよう」
何が起こるか分からない。少しでも戦力を確保しておきたい。ランドは一室を借りて休ませておくとして。
助っ人候補に声をかけにいく。
「この宿に3人組が宿泊していると聞いたのですが」
「ん? ああ、あんたも勇者に会いに来たのかい。今はちょうど誰も来ていないから話をすることはできると思うぜ。にしてもあんたも人間か、シンバ・シンバに来る物好きはそんなに多くないんだけどな」
勇者と名乗る3人組。人間にあるまじき力をもって旅をしているという。
おそらく同郷、何かしらの力を授かっているのならきっと大きな助けになる。協力を取り付けられれば良いが。
扉の前に立ち、ノックをする。
「勇者様、入ってもよろしいでしょうか」
瞬間扉が開け放たれ、中に引き摺り込まれる。身体は制圧され、動くことができない。
「お前、何者だ」
自分の体を押さえている男がすごい剣幕で問う。がっしりした体型に、この力、近接戦闘ができるのだろう。
「お初にお目にかかります。私はサンソンと申します。お願いがあって参りました」
「お前、ノックしたな」
「ええ、マナーですから」
「ここのやつはあんな風にノックなんてしない。ドアの前で声をかける。そして今マナーと言ったな。ここにはそんなマナーはない。
それにマナーという言葉はどこで知ったんだ」
「聡明ですね。そこまで辿り着けばあとは自ずとお分かりでしょう」
「タケシ、解放して良い。その人はこちら側だ」
部屋の奥にもう1人。
あと1人は……なんで隠れているんだ。
「良いのか? 怪しすぎるぞこいつ」
「怪しいも何もその人は僕らの恩人だぞ。早く放すんだ」
「恩人? どういうこった」
「その人は今サンソンと名乗った。僕が聞いた話ではサンソンっていうのは英雄の名前だ。【老害】を解決して回ってる英雄のね。僕らの使命を代わりにやってもらっているんだ。恩人と言わずになんて言うのさ」
使命を代わりに、か。
「え? じゃああのスーパードラゴンとか正気度削ってくる奴とかをこいつが倒したってのか?」
「倒してはいません。あの方々にはご自分の最期を決める機会を提供させていただいただけです」
「じゃあ、俺たちが逆立ちしたって勝てない相手を、代わりに倒してくれてるのが、この、サンソン、さん?」
「そうだよ。だから放せって言ってる。失礼だろ、この人に何かあったら僕たちが帰れる可能性が著しく減るんだ」
「す、すんません!!」
すごい勢いで下がってそのまま土下座の体勢になった。
「すみませんウチの脳筋が先走りました。僕はケン、これはタケシです。実はもう1人いるんですが今日は姿が見えなくて」
「ではそちらにいらっしゃるのは」
「……もしかして見えてます?」
「ええ、それなりには」
「……失礼いたしました。3人目の仲間はクロトと言います」
「あ、どうも」
3人とも歳は高校生くらいだろう。日本人だな。
「さて、それでは腹を割って話をしましょうか」
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