第50話 迷宮攻略開始

「だー!!! やっぱり大変だよー!!! 無理かもしれない!!!」

「そんなことはない。お前ならできる」

「ほんとに? サンソンは本当にそう思う?」

「ああ、一片の疑いもなく言える。お前ならできる」

「そっかあ、じゃあもう少し頑張ってみる」


このやりとりは、通算53回目となる。


やはり超大規模の能力行使による負担は凄まじく、目や鼻からの出血に嘔吐、意識の消失などが無視できない頻度で起こる。


1人でやっていたら10回ほど死んでいるだろう。そのためにランドは自分を側にいるように言ったのだ。


言われずとも居るつもりではあったが。


幸い、3日程度なら、その負担を先送りにできなくもない。全部が終わった後で後で倒れるのは問題ないだろう。


「うー、吐きそうだけどお腹減ってきた、喉もカラカラだよー」

「分かっている。口を開けろ」

「あーん♡ってやってほしいな」

「結構余裕があるようだ。補給はまだ良いか?」

「うそうそうそ、お願いだから取り上げないで」

「冗談だ。あーん」

「え、本当にやってくれるんだ、鼻血出そう」

「これ以上血を無駄にするな。死ぬぞ」

「ほんとに出るわけではないから」


 口目掛けて食料と水を放り込む。


「ぷはー、よし。もう少しだ」

「苦労をかける」

「いいよ。サンソンのためならなんだってやるし。なんだってできるから」

「それは頼もしい。では次に同じようなことを頼んでも良いということだな」

「え゛? ああ、うん。その時が来たらちょっと考えさせてほしいかな」

「ああ、30秒ほど長考しても良いぞ」

「うわー、そう言うこと言うんだ」

「言うさ。自分はそうすることを選んだ」

「そっか。僕を信じることを選んでくれたんだ」

「そうでなければ今すぐにでもお前の心臓を握っている」

「うん、そうだね。それで良いよ。僕はそんなサンソンがやっぱり好きだな」

「そうか」

「少しくらい照れてくれても良いんだよ?」

「お前がそういうことを言うのは知っている。ならば受け止める以外あるか」

「もー、またそーいうこと言うー。まあ、じゃれあいはこれくらいにして。始めるよ」


 実際、ランドの作業がどれくらいのペースで進んでいたのかを測ることはできない。それは本人のみぞ知ることだからだ。


 だが、結果ははっきりと示された。


「へへっ、ちょっと急いじゃった。多めに、褒めてくれると、嬉しいな」

「ランド……お前」

「頑張ったよ。偉いでしょ?」

「ああ、お前ってやつは……最高だ」


予定時間3日。


対して完成時間1日半。


迷宮は今、閉ざされた。


 

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