第62話

 監視係になって数年が経つと、俺はこの屋敷でどのようなことが行われているのか理解し始めました。


 ジスレーヌ様、ここに入れられた罪人が皆、幽閉期間中に亡くなるか、それでなかったら屋敷から出た直後に亡くなっているのをご存知ですか?


 別に呪いではありません。


 公爵にはどうやらこのお屋敷が魔女によって呪われていると噂されているほうが都合がいいらしく、監視係に命じて食材の中にこっそり毒や幻覚剤を仕込ませているのです。


 あ、ジスレーヌ様には毒も幻覚剤も盛っていませんよ。


 あなたがここに入れられた最初の日にリュシアン殿下と通信機で話したのですが、やけにあなたの心配をしていたので。


 その……率直に言うと、交渉の材料に使えると思ったんです。食材に入れるよう命じられた毒はこっそり捨てておきました。……なんで照れてるんですか?


 そういうわけで、俺は監視係として潜り込み、ルナール公爵に復讐する機会をうかがうことにしました。


 新人のうちは多かった制限も年数が経つに連れ少なくなり、今回は一人で監視係を担当することになりました。


 俺は今回こそルナール公爵への復讐を実行すると決意しました。


 たとえ正体がばれて捕まろうと、処刑されようと、必ず復讐を遂げてやると。



***


 フェリシアンさんはそう言って言葉を止めた。名前も今までのつながりも捨てて復讐にかけた人生。私には想像もできないほど過酷だっただろう。


「大変だったんですね、フェリシアンさん。よくぞ一人でそこまで……」


「もっと建設的なことで頑張れたらよかったんですがね」


 フェリシアンさんはそう言って自嘲気味に笑った。それから目を伏せ、申し訳なさそうに言う。

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