第60話

 それから監視係は、定期的に母からの手紙やプレゼントを持ってきてくれるようになりました。


 母は俺にだけでなく、故郷の村の人たちにも薬や薬草茶を送っていたようです。


 故郷の村の人たちはよく俺のところに会いに来て、ベアトリスさんに薬をもらったお礼だと、収穫した野菜や大きさの合わなくなった子供服を持ってきてくれました。


 母から手紙が届くようになり、懐かしい村の人たちとも母の話ができて、寂しさは大分和らぎました。


 どんなに時間がかかっても、母が戻って来るまで耐えられるような気がしていました。



 しかし、戻って来る日などやっては来ませんでした。


 母が幽閉されて約一年が経った頃、亡くなったという知らせが届いたのです。


 はじめのうちは親戚からそう知らされても信じられませんでした。手元にはつい先日届いたばかりの手紙があるのです。


 しかし、しばらくして疲れ切った様子でやってきた監視係の表情を見たとき、全て本当のことなのだと、嫌でも理解させられました。


 監視係はやはり取り繕うことなく、ありのままに教えてくれました。


 母は幽閉された当初から、厳しい取り調べによって弱っていたと。それでも庭の薬草を自分で調合して薬を作り、なんとか回復するように努めていたと。しかし、最近はそれでは追いつかないほど衰弱していたらしいのです。


 監視係は俺に何度も謝りました。


 自分もベアトリス様に世話になったのに、結局何もできなかったと。俺はただ泣くばかりで、彼の言葉に何も返せませんでした。


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