第38話

「……ん?」


 噴水のそばの草を刈っているとき、地面に青みがかった珍しい色の草が生えているのを見つけた。形も変わっていて、二つの葉が蝶のように合わさる形をしている。


 どこかで見たことがある気がして記憶を辿り、以前厨房で見かけたメモに描いてあった絵だと思い出した。


 ベアトリス様がすぅっとこちらに近づいてくる。


「ベアトリス様、これ、もしかして薬草ですか? ベアトリス様が書かれたメモに載っていた……」


 ベアトリス様はうなずいた。私は薬草を摘み、手の平に載せて眺める。こんな草初めて見た。これが薬になるのだろうか。


 あのメモ書き通りに作れば、私にも薬を作れるだろうか。なんだかすごく興味が湧いた。


「ベアトリス様、私もお薬、作ってみます!」


 元気にそう言ったら、ベアトリス様は口をへの字にして難しい顔をした。


 大丈夫なのかという顔。料理もろくにできない私を見ているベアトリス様からしたら、不安極まりないのかもしれない。


「大丈夫です。ちゃんと分量を守りますので」


 そう宣言してみたけれど、ベアトリス様はやっぱり難しい顔のままだった。



 私は庭掃除はそこまでにして、鎌やハサミを片付けると、薬草摘みに取りかかることにした。


 噴水のそばの青い薬草のほかにも、よく探すと色々な草が生えている。


 メモに書いてあった薬草を、思い出せる限りバケツに放り込んだ。みるみるうちにバケツがいっぱいになっていく。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る