第11話
「え、ええと、ジスレーヌ・ベランジェです。よろしくお願いします」
「ジスレーヌ様、いいところのお嬢さんなんですよね。それがこんな場所に入れられることになって大変でしたね。もし困ったことがあれば何でも言ってください。俺も一人で監視係を務めるのは初めてなんですけど、できるだけのことはしますから!」
ロイクさんはそう言って胸を叩いた。
「それはありがとうございます。あ、玄関先ですみません。中には入られますか?」
監視ということは、屋敷の内部まで確認するのかと思い尋ねてみる。
「いえ、監視係は屋敷の門までしか入れない決まりなんです。ここには障壁魔法がかかっているので、決められた者しか入れません。監視係が屋敷に入る時は、他の監視係を一人以上連れてきて、二人分の鍵を使わないと屋敷に入れない仕組みになっているんです」
ロイクさんはそう言うと、ポケットから銀色の鍵を取り出して見せてくれた。
「そういうものなんですか。監視係って何人もいるんですね」
「はい。近くの町にここを管理するための事務所があって、十人くらいが勤めています。俺は勤続四年目にして、今回初めて一人で担当することを任されました!」
ロイクさんはどこか誇らし気に言う。説明を聞いていると、呪いの屋敷の監視係なんていうものものしい役割なのに、なんだか普通のお仕事みたいでおかしくなってしまった。
「私が記念すべき一人目の罪人なんですね」
「はい、罪人……っていうとちょっとあれですけど、ジスレーヌ様が最初のお客さんですね」
ロイクさんはそう言って笑った。あんまり曇りのない笑顔なので、昨日からずっと感じていた緊張感が解れていくような気がした。
「今日はひとまず挨拶だけしに来ました。次は七日後に来ます。もし七日経つ前でも、玄関横にプレートがあるでしょう? それにこの魔石をはめ込めばうちの事務所に繋がるので、何かあったら連絡してください」
ロイクさんはそう言って緑色の魔石を渡してくれた。明かりをつけるときに使ったのと色違いの石だ。私はそれを大事に懐にしまった。
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