第14話
僕と蒼は夕食を済ませた後、駅の連絡通路を歩いていき、彼が小走りをしてあるロッカーに向かっていった。
鍵を開けてジッパーのついた黒いトートバッグを取り出した。
「用意してきた。約束通り、泊まっていく。」
それから僕の自宅に着いて、彼は洗面台に行きメイクを落として洗顔をした。
冷蔵庫からビールを取り出して先に飲み始めると、自分も飲みたいと女子のように甘えた声で言ってきた。その声を聞き思わず笑ってしまい、小馬鹿にするなと突っ込んできた。
ソファに並んで座ると早速彼は身体を擦り寄せて背中に手を回してきた。顔を見ると上目遣いで何かを
僕の唇に人差し指でなぞり、口を開けて1本ずつ彼の指を噛んでいくと、次第に興奮してきたので、身体を伝うように触れていき、スウェットの中に手を入れて性器をゆっくり弄り始めた。
「早い。まだダメ」
その言葉を無視して上下に摩っていくと、ため息を溢して僕の首の後ろに手をかけて抱きついた。
そのままラグマットの上に身体を押し倒して、電灯を消し服を脱ぎ合い何度かキスをした。やがて裸になった状態で、ベッドへ上がった。
彼のしなやかで色白の肌を愛撫しながら、四つん這いの体勢にさせて、僕の濡れた陰茎を尻の穴に挿入すると、彼は目を細めながら揺さぶる振動の調子に全身で感じていた。
お互いの身体が高揚し絶頂に似たような感覚に浸って、息を荒く吐いていた。蒼は仰向けになり僕の顔を見て何かを呟いていた。
「女になりたい」
「今の蒼は女のように美しい表情をしている。…好きだよ」
彼は微笑んで僕を強く抱きしめた。しばらくすると心地が良くなったのか、彼は静かに眠っていた。
よく見ると本当に顔のパーツが整っていて綺麗だ。枕に寄りかかり次第に僕も深い眠りについていった。
翌週の日曜日の午後。蒼の自宅に行き、玄関を開くと彼の母親が出迎えてくれた。リビングに案内されると、父親と芽依の姿が目に入り、会釈をして挨拶をした。
「蒼と親しくしてくださっているのは大変嬉しい事です。しかし、同性同士でお付き合いをするのはいかがなものかと思われます。今後の事はどうお考えになっているんですか?」
「周りの方と似たように付き合う事には変わりはありません。認められるにしても…自信はありませんが、それぞれを尊重し合って支えていきたいです」
「十分に蒼の事を考えているなら、付き合うのも悪くはないと思う。お父さん、もう少し長い目で見てあげてもいいんじゃない?芹沢さん、真面目な方だし、かと言って堅苦しくもないし。私は貴方達を信じてあげていきたいわ」
「芽依ちゃん、どう思う?」
「私もよくわからないけど、兄ちゃんが好きなら仲良くしていてもいいと思う。」
「芽依は芹沢さんが好きか?」
「うん、好き。兄ちゃんの1番の友達。芽依のメイクも褒めてくれる」
「…芹沢さん」
「はい」
「お酒…飲めますか?」
「…ええ」
「母さん、日本酒を用意してくれ」
「わかりました」
「…さぁ、飲んでください」
「ありがとうございます…いただきます」
「どうかな?」
「美味しいです」
「蒼もぐい呑を持ちなさい。…いただきなさい」
「…うん、美味しい。お父さん、僕らのことは…」
「しばらくは様子を見ている。色々とあると思うが、長く付き合えるよう強い信念を持っていなさい」
「はい」
「ありがとうございます」
「芽依、何か飲む?」
「リンゴジュースがいい」
約3ヶ月。ここまで来てようやく良い兆しが見えてきた。
更に翌週に、僕の両親に会わせて交際している事を伝えると、持ち前のポジティブ思考が回っているのか、すんなりと僕らを受け入れてくれた。
蒼は安堵したのか涙をこぼすと僕の母親がハンカチを渡して、もっとしっかりしなさいと肩を強く叩いてきた。
近親者には伝えられた。次は第三者の僕らを取り巻く人達に告げる事が課題として立ちはだかっていた。
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