第3話 バイト

数日後の放課後

19:30

トールルルルル…トールルルル

壊「ん?」

壊のケータイに電話がかかってくる。

相手は『バイト』であった。

壊「はーい、もしもし〜?」

『仕事が入ったぞ。』

壊「今月、二回目でっせ〜?もうちょいそっちでなんとかしてくださいよ〜。」

『わかっている、だがお前の手を借りるのが手っ取り早いのだ。』

壊「まあ、俺は金を支払ってくれたらそれで充分すけど。」 

『内容は前回と同じでだ、情報によると近々大規模な騒ぎが起こる可能性がある。騒ぎが起こる前にお前に未然に防いでもらう。もやっておくように。場所はメールで送る。』

壊「はい。了解で〜す。」

壊「じゃ、行くか。」

そう言った瞬間、壊の姿が消える。



場所は変わって。

ある廃墟にて、ここでは所謂暴走族と呼ばれる人々が集まっていた。

現在、別の族への奇襲作戦を計画している。当然、その規模はかなりの物になると予測できるだろう。

族長らしき男が恋人らしき女を抱えながら作戦の話をしている。

族長「で?例の作戦について考えてきたんだろうな?」

下っ端A「へい、例の奇襲作戦ですが、こういうのはどうでしょう。まず東から…」

幹部「いや、この場合その後に…」

女「ねぇ〜ダーリンまだおわんないの〜?」

族長「ちょっと待ってろ、直ぐ終わっから。」

彼らはそうやって話を進める。その作戦を実行する事も出来なくなると知らずに。

族長「しかし、ここ最近族の奴らが減ったな…」

幹部「はい…全国でもかなりの数を見なくなったらしいですよ。」

族長「妙だな、ここ一年余りでめっきり減っていやがる。警察共の動きも活発な訳じゃないしなんだってんだ。」

話をしていると

壊「ほへ〜なるほどなるほどね〜」フムフム

壊は幹部の直ぐ横に現れた。

突然現れた存在に暫く沈黙が続く。

幹部「…おい、誰だて」グシャ!!

幹部の一人が口を開いた瞬間、壊が顔に触れて突然顔が爆散し辺りに肉片が飛び散った。

一瞬で場が凍りつく。

返り血で汚れた壊が口を開く。

壊「あ!えっと、仕事できた壊です!さようなら!」ガシ

下っ端B「何言ってんだ、テメェはな」グシャ

再び肉片が飛び散る。

ただ全員が唖然とする。

何人かは腰を抜かしていた。


族長「全員そいつから下がれ!!」

族長の叫びに全員が一斉に壊から距離を取る。

幹部B「テメェ何もんだ!!」

壊「だから言ってるじゃないですか。仕事で来た壊ですって。」

下っ端C「し、仕事だと?」

壊「はい。警察の人が、貴女達が面倒事起こしそうだから先に掃除してくれって言われて。」

幹部B「テメェ、警察の人間か!」

壊「どっちかって言えば、日雇いバイトですけどね。」

下っ端C「ふ、ふざけ!」グシャ

壊「ハイハイ、さようなら。」

そう言って口を開く前に顔に手を添えて爆散させる。

壊「あなたもあなたもあなたもあなたもあなたも、さ·よ·う·な·ら。」グシャグシャグシャグシャグシャグシャ

まるで蚊を潰すが如く淡々と壊は次々と族の者を殺していく。

ただ手で触れるだけで、彼らの体は爆散して肉片をまき散らす。

やがて当たりが血塗れになり。

族長「な、何なんだよテメェは!こ、こんな化け物みたいな奴!」

壊「あ、そりゃ聞いたことありませんよ。だって仕事は基本、全員始末するよう言われてますから。俺の事知ってる奴なんていませんよ。」

壊の存在を知らないのは警察による情報操作もあるが、彼の目撃者が誰もいないのが理由だ。仕事中の彼の姿を見たものは総じて彼によって破壊されている。

壊「ここ一年でかなりの反社会勢力が減りましたよね。ヤクザの解体、貴女達のような暴走族の突然の激減、少し疑問に思いませんでした?」

族長「ま、まさか!テメェが!」

壊「ピンポンピンポン!大正解〜!」パチパチ

そう言って拍手をすると今度は族長の彼女に近づく。

族長「お、おいまて!その女に手を出すな!」

壊「いや、出すなって言われてもそう言う仕事なのでこっちも。」

族長「大金を積まれただけで人を殺すなんて、テメェそれでも人か!」

壊「いやいや、貴女達に道徳を説かれたくありませんよ。」

ゆっくり壊は女に近づいていく。

族長「テメェ!!止めやがれ!!!」

族長は壞に突っ込んで行くが。

それを壊は軽快に躱し。すれ違いざまに彼の足を破壊する。

族長「ギャァァァァァァァ!!!!足が!俺の足が!!」

壊「駄目じゃないですかいきなり突っ込んで来たら、変に苦しませるの趣味じゃないんですよ。」

そう言う壊を族長は睨みつける。

再び壊は女の方をみると。

女「い、いや…やめて!許して!」ガタガタ

恐怖のあまり震えて失禁してしまっている。

その言葉を聞くと壊は足を止め。

壊「許して?ちょっと待ってくださいお嬢さん。僕は決して怒ってる訳でも貴方達を憎んでるわけじゃない。仕事で来ているだけですよ。ご飯を食べるためにはお金が必要です。僕より弱い貴女達の命を他の食べ物に変えて食らう。生物が生きるために自分より弱い動植物を食べるのと一緒、ようは食物連鎖です。」

ただ淡々と語る。

彼は誰かを殺すことになんの躊躇いもない。

いや、殺しではない寧ろこれはなのだ。

肉食獣が他の動物を食べる時に何の感情も抱かないのと同じだ。

彼にとって今やっていることは生命維持の作業でしかない。

壊「とはいえ、綺麗な女性の顔を爆散させるのはあれだし、少しやり方を変えるか。」

そう言うと、彼は手をかざす。

すると女が突然苦しみ出した。

女(な、何これ!?息が…できない!というより周りに空気が無い!?)

壊「僕の能力はかなり応用が効いてね。貴方の周りの空気を破壊し続けているんです。貴方は空気を吸うことができずやがて窒息する。と言っても空気が無いから聴こえませんけどね?」

彼の能力である破壊、それは全てを破壊する。

物体、空気、果ては重力から概念まで。

彼が頭で思い浮かべられる事が出来る全てだ。

やがて女は白目を剝いて窒息する。

族長「ぐぅぅぅぅ…貴様ァァァ!!!!」

そう言う族長に手を添え。

壊「はい、おやすみなさい。」

そう言って能力を発動させ、族長は跡形もなくボロボロに崩れていき、やがて細胞も残らず消える。

壊「んじゃ後始末を終わらせて帰るか。」

そう言って周りの死体だけを完全に消滅させる。

そうして廃墟はさっきまで血塗れになっていたのが嘘のように綺麗になった。


『終わったか。』

壊「ええ、跡形もなく綺麗にしときましたよ。」

家に帰り首尾の報告をする。

『そうか、ご苦労だったな。金は振り込んでおく。』

壊「…また一つ平和維持に繋がったと思ってるんすか?」

『…ああ、犯罪や騒ぎを未然に防ぐ。平和維持に必要な事だ』

壊「そうですか。」

『…なんだ。』

壊「いいえ、それじゃ!またご贔屓に〜。」

壊「ふふ…」

そう言って電話を切ると壊は冷蔵庫の方に向かい少し前に掃除したヤクザの事務所から拝借した酒の瓶をとってくる。

壊「…ふふふ、ククククク…ははははははは!あっははははははは!!!!!」グビグビ

酒をラッパ飲みしながら彼は大声で嗤う。

壊「くっっっっだらねぇ〜!な〜にが平和維持だ!!あっははは!!!テメェらのやるべきことは平和の為の不安因子の排除じゃなくて他の人間の救済だろうがよ!アハハハハ!!!」

彼は嗤う。結局、警察が彼に頼んでることは異世界で王国が彼にしたことと同じだ。

強すぎる不安因子を先に排除する。

すべきことは他にあった筈なのに。

魔王によって苦しんだ人が多くいるのは事実だ。

王国はそんな人々の救済より、魔王よりも強い力を持つを不安因子の壊の排除を優先したのだ。

王国は恐れた、魔王より強いあの力が自分達に向けられた時の事を。結果的そうなってしまったが、それも彼らの自業自得である。

壊は今の世界も王国と同じ穴のムジナに思えて仕方ないのだ。

救済よりも排除を優先する。

もっとやることはあるのだ。

親を無くし貧しい暮らしを余儀なくされてる子供。

紛争によって避難してきた難民達。

原発事故によって家を追い出された人々、数えれば切りがない。

彼は決して自分を善人だと思っていなし、もう他人を信用などしていない。

だから自分から何か動くつもりもない。だが仕事で頼めば動くのだ。 いくら金が必要だって所詮は数百万あれば彼は不自由なく暮らしていける。払えば直ぐに他国の戦争を終わらせられる。原発による放射能を全て破壊できる。

それらを壊がやったということを秘匿にして政府の手柄にすれば日本政府の地位は盤石の物になるというのに。

今更手柄が欲しいなど壊はまったく思っていない。報酬が無ければ壊は絶対に動かないが、逆に金を払えば彼は必ず動くのだ。

それを思いつく頭が無いのに彼は心底呆れている。

壊「…フフ、いっそのことどいつもこいつも滅んじまえば面白いのに。」ゴク

そんな事をいいながら彼は新しい酒を取るために冷蔵庫に向かう。


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※本作品は未成年飲酒を推奨するものではありません。お酒は20歳を越えてから飲みましょう。

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絶対強者の現代帰還〜全てを壊した勇者の物語〜 湯豆腐 @renrenperikan

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