2022/12/18 【キャットインザボックス】
家に帰っても誰かがいることはなく、ただいまの言葉を発する必要もない。体が成長しきっていない
自室にあるボードゲームはすべて買ってもらったものだ。テレビゲームではなくボードゲームで溢れているのは貴子がそう願ったからだ。望んだものは一通り手に入る環境にいるのは恵まれているのだと思う。周りにもそれを羨ましがられたことは多々記憶にある。それでも自分の心が満たされていない理由を貴子は知っている。
ボードゲームはたくさんあるけれど、ここにあるほとんどのボードゲームはふたりや三人から遊ぶのを前提に作られたものだ。ソロモードが予め搭載されているものもあるけれどそれは多人数でやるものを変化させたものが多い。ここのところの連続でそれがよくわかってしまった。
またみんなでやりたいなと気づけば考えている自分に貴子は戸惑いを覚えている。それは自室に戻ってボードゲームを広げてからも一緒で、つい
誰かと遊べるならもっと遊べるボードゲームは増えるのだ。ちらりとボードゲームが棚に押し込まれたままのボードゲームを眺める。
キャットインザボックス。話題だったから買ったのだけれど。箱を開けて説明書を読んでそのまま蓋を閉じた。その箱を閉じたまま開けたことはない。ひとりでボードゲームを遊ぶには限界があるのだとその時、思ったのだ。
でも今ならそれに挑戦できるのかもしれない。美鶴に敬子それに
トリックテイキングと呼ばれるゲームでスートと呼ばれるマークに従って数字カードを手札から出していく。通常のトリックテイキングはトランプのようにスートが決まっているのだけれどこのキャットインザボックスは手札から出した際に自分でそのスートを決定できるのが特徴らしい。
説明書を読んでルールは理解できてもそのプレイ感は結局やってみないとわからないことが多い。それはここ数日で嫌というほど実感した。だから遊びたい気持ちはこれまでで一番強い。でも……。
誘えるのだろうか。
これまでみんなが自然と寄ってきてくれただけだ。貴子から話しかけたこともない。誘ってもし断られたらと思うと足がすくむ。それこそセカンドダイスに行くことだってできなくなるかもしれない。そうなったら、またこの部屋でひとりきりの時間が始まる。
キャットインザボックスの箱に描かれている猫がこちらをみている。そうだよね。箱は開けなきゃ中身はわからないんだ。だったら開けなかわからないじゃないか。明日もセカンドダイスへ向かうことを、だれかがいることを期待しつつも不安で胸が溢れそうだった。
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