2022/12/17 【ワーリング・ウィッチクラフト】
「あれ?
あなたもですけどね。セカンドダイスでのあいさつにも、連日ともなれば慣れてしまう。口には出さないで軽く会釈だけする。
「そういう
今日は
「だって旦那が店長に金落としてやれって、店長が後輩だと知った途端にこれだもん。嫌になっちゃう」
口ではそう言いながらもどこか楽しそうな敬子は断ることもなく貴子たちが座っていたテーブルに座る。
「
「なんかそうみたいなのよ。あっでも学校のとかじゃないみたい。昔のボードゲーム会の先輩後輩って言ってたわ。知り合いがこういう店開くようになるなんて時代も進んだなぁってぼんやりしてた。それにセカンドダイスより自分の家のほうが品ぞろえが良いって自慢してたの。まあ、毎週のようにあれだけ買ってればって思うわ」
上機嫌なのだろう敬子のおしゃべりは止まる気配がない。
「ところで今日も一緒なバードなふたりは何する予定だったの?」
「まだ決めてないですけど。なんですバードなふたりって」
昨日と同じ様な説明を美鶴にもする敬子に美鶴はなるほどとうなずいている。
「まあ、貴子ちゃんは違うんで残念ですが愛称としては見送りですね」
「あら。まあ仕方ないか。それより今日は気になってたボードゲームがあるんだけど。いいかな」
敬子はこちらの許可を得ることもなく店内からひとつの箱を持ち出してきた。
「これこれ。ワーリング・ウィッチクラフト。旦那が買い逃したってすごい後悔していたから気になっちゃって」
貴子も見たことがないボードゲームだった。
「材料を調合して変換していくゲームなんだけどね。変換した材料を相手に渡していくの。魔女だからね釜の中に材料を入れて渡すんだけどその渡した材料が釜から溢れた分が自分の得点になるらしいの。調合した材料が相手のところにいくのがゲームをとして変わってるみたい」
それでけでも興味が湧くのと同時にいつもみたいにひとりでやるのには向いていないことに気がつく。相手から送られてくるものを利用して考えるということは自分の考えが少しでもはいってしまうとどうしても有利な方向へ動かしてしまう可能性がある。それは貴子が求めるものとは程遠い。
「ね。楽しそうでしょ。やりましょ」
敬子の言葉に思わずうなずいてしまう。断る理由もない。
「あっ。その前に。貴子ちゃんがここにいるのお家の人は知ってるのよね?まだ小学生なんだし、あんまり心配掛けちゃだめだよ」
これまでだれからも触れられたことがない話題に思わず言葉を失う。美鶴も微妙な顔をして貴子と敬子の顔を交互にチラチラと見ているだけだ。
「……大丈夫です」
心配なんてしていない。面倒事が目につかないところにいてホッとしているかもしれない。敬子もそれ以上は突っ込んでくることはなかったし、ワーリング・ウィッチクラフトは楽しかったけれど。どこか落ち着かない時間が過ぎていった。
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