2022/12/14 【ルート】
「リベンジですか?なんのことでしょう」
息巻いてセカンドダイスに訪れてみれば案の
「一昨日のこと忘れたとは言わせない」
その言葉でようやくなにかに納得したようにあぁ。と呟いた。
「つまり一緒に遊びたいんですね。いいですよ。今日はなににします?」
セカンドダイスの壁際にある棚をぐるりと見渡す。そして目当てのボードゲームを見つけてそこへ向かう。少し大き目のその箱を手に取るとそれを美鶴の元へと運ぶ。重たくてちょっとだけよろけてしまった。それをみて美鶴が手を添えて手助けしてくれる。これから戦う相手に手を貸してもらうなんて少し癪だけど仕方がない。あまりに大きすぎる箱がいけないのだ。
「ルートですか。いい選択ですね。流石です」
なにが流石なのか。これが勝者の余裕てやつなのか。
「猫と鷲どちらがいいですか?」
ルートは完全非対称の対戦ボードゲームだ。完全非対称と言うのはプレイヤー毎に選択したルールが存在する。ルートの場合は森林世界の支配権を巡る派閥がそれに当たる。猫と言うのは猫野侯国、鷲と言うのは鷲巣王朝を指す。他にもふたつ派閥があるがふたりで遊ぶ場合にはこのふたつを選択することが多い。
猫と鷲。その提案をしてきたってことはつまり美鶴もルートをよく知っているということになる。それに選択権をくれるなんて余裕があるにしても不敵すぎる。
「鷲をもらうわ」
鷲巣王朝は猫野侯国から森林世界の支配権を取り戻すために戦う派閥だ。今の貴子にぴったしだと思った。
「ふふふ。楽しみですね。貴子さんと一緒にボードゲームできるの嬉しいです」
その余裕はどこから生まれてくるのか。その表情を変えてあげるのが楽しみで仕方がない。
でも……結果は一昨日とおんなじだった。
「もう一回。もう一回やらせて」
お願いしている事自体が屈辱的だ。でもこのまま引き下がる訳にはいかない。プレイヤーボードに描かれている鷲の絵を見つめる。力を貸して欲しい。そう語りかける。昨日もずっと今日の予行練習をしていた。鷲巣王朝を選択することはずっと決めていたのだ。昨日は想定通りに動けていたのに今日は美鶴の動きも相まって上手く行かない。
「もちろんですよ」
「ねえ。それって私たちも入っていいの?」
突然振ってきた声に驚いてしまう。そこにいたのはこれまたここではよく見る
確かルートにはもうふたつの派閥がある。そのふたつがいることでゲーム性も変わってくるのだ。もしかしたらこれがなにかのきっかけになってくれるかもしれない。
「あっ。小室さんお久しぶりです。そちらの方は旦那さんですか?」
美鶴も知り合いみたいで話が盛り上がっている。やっぱり一緒に来たのは夫らしい。
「私はもちろんいいですけど。貴子さんは?」
ひと通りあいさつを済ませてから美鶴が問いかけてきた。断る理由は思い当たらない。
「異論はない」
貴子の言葉に小室夫妻は嬉しそうにテーブルについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます