幕間
2022/12/10 【ウォンデッドウォンバット】
「うーんと。1000バッド!」
大きな声がボードゲームカフェであるセカンドダイスの店内に響いた。その事自体はよくある光景だが、声の主がセカンドダイスにしては幼い休日ともあれば親子連れも来たりもするが子どもたちだけでの来店は珍しい。本来であれば保護者の同伴をお願いしたいところだが知り合いに頼まれたとあって受け入れていた。
「やった。当たった。じゃあ、もう一回1000バッド!」
子どもたちが遊んでいるのはウォンテッドウォンバットというカードだけで遊べるボードゲームだ。ウォンバットが賞金首になっており、次にめくったカードの賞金額を当てるとう単純なゲームだ。1000バッド、3000バッド、5000バッド、10000バッドがあり、めくったカードを当てられたらそのカードを手に入れることもできるが、そのまま次のチャンジができるる。しかし失敗したらこれまで当ててきたカードは手に入れられない。成功し続ければ一気に勝利へ近づくが失敗するリスクも重なっていく。1000バッドを3つ集めたら5000バッド換算になるなどのルールもあり大きいものを狙うだけでなく小さいものを当て続けても勝てるようになっている。
「は、はずれたっ!」
でも子どもたちはそんなこと関係なさそうでかわいらしいウォンバットの賞金額を当てれたり外れたりすることを楽しんでいる。それでけでも時間は足りないくらいみんなは楽しそうだ。
「店長さん。なんか嬉しそうですね。なにかありました?」
最近カウンターを用意した。ひとりで来店してドリンクだけを頼んでいくお客さんが増えたのが原因だ。今日座っている
「なにもなくても嬉しいのさ。こんなふうに平和に過ごせているだけでね」
「なんですかそれ。おじさん臭いですね」
ふふふと笑っているがいつもより機嫌が良くないように見える。ハルちゃんがとしくんに夢中なのもあるだろうし、チヒロちゃんや
「あそこに混じってやってきてもいいんだよ。ちょっと難しいのやらせてあげたいし」
「いえ。あんな楽しそうにしてるのに私が入る必要なんてないですよ。見てるだけで癒やされますし十分です」
強がっているのか本心なのか今ひとつわからない美鶴ちゃんはそう言ってコーヒーを口にする。
つい老婆心でなにかをしてあげたくなってしまう。余計なことかもしれないけれど美鶴ちゃんの相手になりそうな人を頭の中でピックアップし始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます