2022/12/06 【ウミガメのスープ】
どうしたのだろうか。みんなでわいわいしている中にいればいいのにと思うのだけれど、わざわざ惨めなトナカイを笑いに来たのだろうか。でもそんな風には見えない。その瞳は純粋でなにかを待っているように見える。明らかにソワソワしているのだ。
とりあえず話を聞いてみないことには話が始まらない。しゃがみ込むと小四男子の視線に合わせて話を聞く姿勢を見せる。小四男子は恥ずかしいのか話を始める気配がない。
「なにか用があるの?」
こくりと小四男子がうなずく、なんでだかわからないけれど喋るつもりはなさそうだ。
「えっと。なんだろう。ボードゲームのこと?」
今度も深くうなずく。不思議だ。なにを伝えたいのかまったくわからないのに不快感はない。それどころかゲームをしているみたいで楽しくすら思えてきた。
「あー。さっきのWelcome to……にわからないところがあった?」
今度は横に振った。どうやら違うらしい。ふむ。であればなんだろうか。ちょっと悩んでしまう。あれ。とそこまで考えて今の感じがどこかで経験したことがある気がしてくる。それもボードゲームでだ。
「ねえ。次の質問まだ?」
おいおい。と途端に喋りだす小四男子に思わずツッコミを入れる。喋る気があるんじゃないか。でも質問を待っているみたいで続きを喋る気はないみたいだ。
そこで思い出した。ウミガメのスープというゲームだ。小四男子はなぜかはわからないがそのゲームをやっているのだ。『はい』か『いいえ』で答えられる質問だけで正解にたどり着くように質問を繰り返していくのだ
「君はゲームをしているの?」
こくりとうなずく小四男子にそれは確信に変わる。彼はきっとなにかを伝えたいのだけれどそれをなぜか遠回りにゲームで伝えようとしているらしい。
後ろで騒いでいる子たちを放っておいていいものかと一瞬悩むがこれ以上声を掛けても相手にされないだけだと小四男子に向き合う。これ以上、無理に失敗を重ねる必要もない。
「でも何を当てればいいんだ。検討もつかないんだけど。ヒントとかないのかな?」
小四男子は反応しない。あくまでもゲームのルールに従うというのか。であればあくまでも『はい』か『いいえ』で答えられる質問をしなくてはならないと言うのだろう。今わかっているのはボードゲームのことだ。そこから絞り込まなくてはならない。
「知ってるボードームの話?」
首を横に振られる。違うのか。彼が知らないボードゲームの話ならそれは誰が知っているというのだ。あとちょっとでなにかが掴めそうな気がする。でもそのあとちょっとがわからない。
「じゃあ、知らないボードゲームの話?」
当然のように頷く彼を見て、その表情が喜びを隠しているように見えた。それは大きなヒントにも思えた。であればその答えのボードゲームを知っているのは彼ではなく俊彰自身。
「これからやるボードゲームのルールが聞きたいの?」
小四男子はこくりと頷く。その動きに心の中でなにかが弾けた気がした。
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