第25話ごぶ

ゴブリンを倒したことで興味がわいた俺は、ゴブリンに変身してみることにした。

「ふむ、なかなかのゴブリンっぷりだ」

 ゴブリン語で一人ごちる。

 ゴブリンになったことで、ゴブリンの中に入ってみたい気分になった。

 俺は別のゴブリンの集落を探す。そして見つけた。

「こんにちは」

 ゴブリン語で喋ると、ゴブリンは石を投げてきた。

 おいおい、同じゴブリンでも敵対しているのか?

「お前見ない顔。帰れ。殺すぞ」

 どうやらゴブリンは顔の判別がつくらしい。

「これはおみやげだ。仲間に入れてくれ」

 俺はあらかじめ物質化で作った高級肉を差し出した。

「お前、なかなか見込みある。仲間になれ」

 こうしてゴブリンの集落に入ったのであった。

 ゴブリン集落一日目の夜、俺が寝ていると、寝こみをナイフで襲われた。

「何するんだよ」

「お前、目立っている。殺す」

 どんな理屈だよ。俺はそのナイフを取り上げた。

 二日目の夜、俺が晩御飯を食べていると、毒が盛られていた。

「なぜ、毒で死なない」

 ゴブリンの一人が不思議そうに言った。

「俺は特別なゴブリンなのさ」

「そうか。強い奴は嫌いではない」

 何故か好かれてしまった。

 それからというもの、俺はゴブリンの中でリーダー格になった。

 なんだか。こんなはずではなかった。

 別に情があるわけではない。しかし、普通になんか現実味がなくて面白かった。

 ゴブリンは考えていることが野蛮で、常に人をさらおうとしたり、殺そうとしたり、人間の村を襲撃しようとしている。

「なんで人間の村を襲うんだ」

 俺は試しに聞いてみた。

 するとゴブリンたちは俺の頭がおかしいんじゃないかというようなしぐさをした後、こう答えた。

「楽しいからに決まっているじゃないか」

 やはりゴブリンは人間の敵なのだなと心から思った。

 しかし、ゴブリンの村では食事は普通に出された。たまに毒が入っていたりはするが。主に肉が中心である。人間の肉は入っていないことは鑑定済みだった。人間の肉があった場合は拒否するつもりだった。

 そんなある日、ゴブリンのメスに誘われた。

「デートしよう」

 俺は快諾した。

 ゴブリンのメスに誘われるとはまさか思っていなかったのだ。

 そのメスのゴブリンは心優しいゴブリンだった。

 素朴でお花を集めるのが趣味だった。しかしやさしいが故にほかのゴブリンからいじめられていた。というかほぼリンチされていた。

 俺はゴブリンにもよい奴がいるのだという事を理解した。そこで新たなスキルを思いついた。生き物のやさしさを計るスキルである。

 そのスキルは生き物のやさしさを計る事が出来る素晴らしいスキルで、人間にも悪人と善人がいるようにモンスターにもそれは当てはまることが分かったのだ。

「なるほど、良いモンスターを集め、保護すればこの世界はモンスターと共存もふかのうではないのか」

 俺のユートピア計画がひそかに始まったのであった。

 ちなみに今まで殺したモンスターのやさしさを過去ログスキルで見て計ったところ、悪いモンスターしかいなかったので、安心した。

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