第4話ふんころがし

フンコロガシは糞を転がしていた。しかし、突然変異したフンコロガシは糞を転がしたくなくて、他のものを転がしてみた。最初はどんぐりである。

「いやこれおもろいな」

 突然変異のフンコロガシは心中で思った。

 それをみていたフンコロガシも自分が糞を転がしていることに疑問を抱いた。

「いやなぜ俺は糞をころがしているんだ」と。

 それが、その思いが次々に伝染しついにフンコロガシは糞を転がすのをやめた。

 そして何を転がし始めたのかというと、果物などである。イチゴ、リンゴ、バナナ。手ごろな大きさのそれらを転がし運ぶ。いつしかフンコロガシはカラスが光るものを集めるように、食べ物全般を転がすようになっていった。

 消費期限が切れ捨てられている食べ物の元へフンコロガシは集まった。

 すると、食品ロスの廃棄問題がかなり改善された。

 自分たちがもてはやされているのをフンコロガシは不思議そうに眺めていた。フンコロガシはある日、公園でおなかをすかせて倒れている男を発見した。

「よし、食べ物をころころ運んでおなかをみたしてあげよう」とふんころがしの一匹は思った。それに追随してたくさんのフンコロガシが食品を男の元へと運んだ。消費期限は切れていたが、それでも男はその運ばれた食べ物を口にし、「ありがとう。命が救われた」と感謝を述べた。男はその後、起業し大金持ちになった。そしてフンコロガシを命の恩人として家で飼うようになった。

 男はフンコロガシに何不自由ない生活を約束した。

 それをみていたほかのフンコロガシは妬むのではなく、俺たちは凄い生き物なんだ。人間を救えるんだと、自慢に思った。フンコロガシは世界中を旅し自分たちが他の生物を救えることの凄さをほかのフンコロガシに伝え、伝授していった。

 やがてフンコロガシは世界中の飢えを救った。

 いたるところにフンコロガシの銅像が世界中に建てられた。

 フンコロガシは種族としても保護されるようになったので、生体のある種トップに人間と並んで君臨した。人間の銅像には必ずフンコロガシがパートナーとして並んでいた。フンコロガシは世界を支配している、いや地球を支配、転がしているんだ、とどこかの文化人がつぶやいた。

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