第3話大いなる田舎の名古屋へ
21歳の時、知り合いのつてを頼り名古屋に出てきた。
名古屋は鹿児島より都会で市内はビルだらけ。だが、ちょっと電車に乗ると田園風景や山がある。
名古屋は大いなる田舎だ。気に入った。
知り合いの部屋に1ヶ月間、お世話になり施設警備のアルバイト代を貯めて、賃貸マンションに移り住んだ。
東区の赤塚で、家賃46000円の部屋。
ここに、8年間住む事になる。
アルバイトをしながら、名古屋人のクセを勉強し、味噌と醤油に中々馴染まなかった。
辛いのだ。鹿児島は甘い。
味噌カツ注文したら最悪。定食の赤だしを初めて見て、店員に、
「この味噌汁、腐ってない?」
と、尋ねた記憶がある。
アルバイト仲間と良く夜勤明け飲みに行った。
酒に強いので、バイト代の半分は飲み代に消えた。
営業マンが言う。東京、大阪より名古屋が一番営業しづらいと。
そうだと、思った。名古屋人はよそ者には冷たい。なおさら、鹿児島訛りの僕はバカにされた。しかし、相手の人となりが分かればかなり、親密な関係になる。
名古屋人が他者を受け入れるまでは、時間が掛かるが、一旦仲良くなるとこんな心強い味方はいない。
アルバイトを1年ほど続け、23歳の終わり頃、貿易に関する団体職員の入社試験を受けた。
さすがに、貿易団体。英語と数学が難しかった。
入社試験と同時に面接もあった。
結果を2週間待った。
携帯電話が鳴る。会社からだ。
ホッ、採用の電話だった。喜んだ。
その日の夜、彼女と一瞬に焼き肉屋へ行き、祝勝会を開いた。
良かったのは、この時だけであった。
若い僕は、ブラック企業の正体を知らないでいた。
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