最終話 未来
「起きて和重君」
僕は女の声に起こされた。
「ここは?」
「君はいきなり体調が悪くなって倒れた所をお姉ちゃんが病院まで連れてきてくれたんだよ」
「あーそういえばそうだったなそろそろ死期も近いか」
「そして君には頼みがある」
「こんな死に損ないにか?」
「うんお願いはお姉ちゃんの元に行ってあげてほしい」
「何でさ」
「君はお姉ちゃんが好きなんでしょ?もう少しで死ぬんだったら最後の力を振り絞ってでも好きな人の所に言って言葉を掛けてあげなよじゃないとお姉ちゃんはまた暗い人に戻って君と出会ってなかった時と同じになっちゃうほんとに好きならお姉ちゃんの人生を変えてあげて看取られたいんでしょ?」
「何で君が僕の願いを知ってるのかは後でしっかり聞くことにして君の説教をしてくれたおかげでやる気が湧いてきたよ任せろ僕が美智子の人生を変える!」
僕は最後の絞りカスのような力を振り絞って立ち上がりドアを開けた。
「和重君!?なんで起きてしかも歩いて」
そこには先生がいた。
「先生退いてください僕は美智子の所に行かなければ行けないんです」
「済まないが僕も退くことは出来ないよ僕が担当している患者が死にそうなのにこんな無理をさせるなんて出来ないね」
「退いてください死にそうなら尚更だもう少しで命尽きる人の願いぐらい叶えさせてくださいよ!貴方はまだまだ命があるから良いですが僕はここでやらなきゃもう何も出来ないんですよ!?僕は行きます先生今までありがとうございました」
「和重君…そうだな青年の邪魔なんか僕はしてはいけないな悔いは残すなよ和重君」
僕は美智子が何処に居るのかなんて全然分からなかった。なのに体は分かっているかのようにどんどん先に進んでいく。
「早く美智子の元に行くんだ!後悔は残したくないだろ!」
暫く歩くと美智子を見つけることが出来た。
でも様子が変だった。
「美智子!危ない!」
美智子は前から車が来ていることに気付いてなかった。
「はぁはぁ間に合ってよかった全く美智子は危なっかしいんだから」
僕の目はもうその時には霞んできていた。
「和重君…なんで」
「そんなの決まってんだろ君の元に行ってお別れがしたかったんだよ」
「そんな…お別れだなんて…」
「美智子と居ると毎日が楽しかったなぁ美智子と会うまでは毎日病院で1人死んでいくのかと思っていたのにというかもう死んでいたのかもしれないな美智子と出会うまでは」
「私もそうだった君と出会うまでは存在なんて無いも同然空気の様だったなのに君と出会った瞬間私は空気じゃ無くなったんだよ君が私を孤独な毎日から救ってくれた恩人だよ」
「ああ」
「だから…だから和重君天国に行っても私を見守っててね私君の分まで頑張るから」
「もう…心配はいらないみたいだなこれで悔いはないよ」
僕がそのまま目を閉じようとした時美智子の唇は僕の唇と交わった。
「私の最初で最後ののキスは君にあげるお休み和重君安らかな眠りを」
ありがとうございましたと言う言葉を心の中で言い僕の人生、最初で最後の恋愛は幕を閉じた。
「美智子一緒に帰ろうよ」
「うん良いよ!」
和重君私は鳥が好きだよ。君みたいに自由に飛び回る鳥が好きだよ。私はね引っ越して違う町に行ったよ友達だって沢山出来たよ。
もう心配はいらないよ私は生きていけるよ。
もう大丈夫そうだな僕の分まで頑張ってね。
「あっ!綺麗な鳥がいるよ」
「ほんとだ綺麗な羽をしてる」
もう心配は要らないみたいだな後のことは頼んだよ。
私には和重君の声が聞こえた気がした。
「あっ飛んじゃったあれ?美智子泣いてるの?」
「大…丈夫だよちょっと疲れちゃっただけだから」
「ちゃんと寝て休んでね」
「うん…ありがとう心配してくれて」
「そりゃあ友達だからね」
バイバイ和重君後のことは私に任せて天国で気長に待っててよ。私がそっちに行ったら私が経験したこと全部話すから。
「じゃあね和重君」
貴方の為に 鏡花 @mousouzokuKirito
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