第12話 いくら使ってもぼろぼろにはならない。-ドロシー・パーカー-
物理的に不可能なら…、と、魔術に拠る細胞間の接合を成功させ、
その結果、社会や国は、その研究者を認めなかった。
何故ならその研究者は、
複数の獣人種の持つ身体能力の高さを……マナの扱いに長ける亜人種やヒト種に移植しようとしたのである。
そして、その結果……非人道的な研究として
それは本来であれば
しかしこの研究が
この時点に於いて、「魔獣の
だがしかし……その実験の為に積み上げられた
故に「魔獣の
出来上がったキメラはそう、完全なる
それ故に
だが、コルネールが使っていた
その研究者が培った方法で造られた
しかしコルネールのアストラルが離れた瞬間に朽ちて行った事から
だが、それを依代とする事で、その「
故に出来上がった
だが、現在の「魔界」と人間界の関係性から見ればその行為は可能であり、
「でもそうなると……どっから手を付ければいいか分からなくなるねぇ。今、
マムは苦虫を噛み潰したような表情で口惜しそうに呟いていた。
少女達は一通りの報告を終えるとマムの元を辞し、公安を後にして行く。少女はルミネを宿舎まで送り届けると、そのまま屋敷に向かって帰路に付いていった。
少女の心中としては何かが裏で暗躍しており、それが今後どういった形で降り掛かって来るか気が気ではなかったが、今からそんな事に気を張り巡らせているのは疲れるだけなので、考えないようにしていた……と言うのが事実だった。
「マスター、この私はこれから
「そうね、アタシ達ハンターは、
こうして考えないようにしていたにも拘わらず、首を突っ込まないと気が済まない少女の
「はぁ、憂鬱です。何で、わたしの「見極め」がハロルド何ですか?わたしが何か悪い事でもしましたか?」
「い、いや……それを
「わたしはアルレおねぃちゃんか、ミルフ師匠が良かったです!バロルドが見極めなんて、断固反対ですッ!」
「はぁ……そんな事を言われましても……」
アリアの目は今にも泣き出しそうであり、ハロルドはおろおろとするしか出来ずにいた。見極めをハロルドが行う以上、ハロルドが試験官である事に変わりは無く、本来であれば礼節を欠く行為をアリアは行っているが、そこに触れてはいけない。
当のアリアはルミネからデバイスの使い方を予め教わっており、ハンターとしての心得も併せて教え込まれていた。
拠って「見極め」はハンターとして
アリアの性格上、簡単に
尚、アリアとハロルドはブーツを支給されている為、空を飛んで来たのは言うまでもない。
アリアが最初に行った
ハロルドは念の為に
斯くして二人は今、
正体不明の魔獣の討伐…、それは即ち指標たる難易度が無い案件を示している。拠って、新米ハンターが行うモノではないし、新米ハンター以下であるアリアの試験内容として
ハロルドはイヤな予感に
「イヤな予感が
ハロルドの
そんな事を知る由もないアリアはバイザーで周囲の様子を
「場所は間違ってない筈ですよね?」
「
ハロルドは何やら不穏な空気を感じ取っていたのだが、確証は無い。それは戦士の勘とも言えるモノでその勘をアリアは持っていない。だからこそアリアを不安にさせるのは良く無いと思い、その事は伝えずにいた。
二人は暫く鬱蒼とした森の中を進んで行く。バイザーの縮尺を変え、光点を探すが結局魔獣を見付ける事は叶わず、辺りは次第に暗くなっていった。
アリアの表情は不安に取り憑かれているが、前を行くアリアの様相をハロルドは窺い知る事は無い。
「アリアさん、そろそろ暗くなって来ますし、今日は一旦引き返しますか?」
「帰りませんッ!帰りたいのなら、ハロルドが一人で帰ればいいんです」
「はぁ……仕方がありませんね」
アリアが引かない以上、ハロルドもアリアに付いて行くしかない。アリア一人に任せられない以上、ハロルドとしては気が気ではないが、最悪の場合は力任せでこの地を脱出するくらいは出来るだろうと安直に考えていた。その場合、ハロルドはアリアから更に嫌われるのは目に見えているが、自分が死ぬよりは幾らかマシだからだ。
「ッ?!まさかッ」
ハロルドは急速に強まっていく気配に勘付いたが、当のアリアは周囲にある気配にまったく気付いていない様子だった。
ハロルドの戦士の勘が警鐘を鳴らし、心臓の鼓動が早くなっていく。
「バイザーでこの魔獣は発見出来ないのか?そんな事が?いや……今はそれよりも先ず」
だッ
がしッ
「なっ!?ハロルド?」
「アンディ、魔術防壁展開、急げッ!」
「ちぇッ。言われなくても分かってるよ。
ハロルドの勘は杞憂に終わらなかった。だからこそ
一方で突如として声を掛けられたアンディはハロルドの言っている意味を即座に理解し、魔術壁を展開して行くが憎まれ口を叩いている。アンディからしてもハロルドからの命令は受けたくないのかもしれない。
そしてそんなアリアは何も分からず、ただただ驚きを隠せずにいたのだった。
「一体何が?ちょ、ハロルド近い!」
「アリアさん、現状の把握をッ!」
「ッ?!」
アリアは少しだけ顔を赤らめてハロルドに声を掛けるが、ハロルドの鬼気迫る顔を見た途端、自分達の置かれている状況を理解した様子だった。
拠って、直ぐさま正気に戻り、周囲の状況から自分達の身に迫った危機を察知した様子と言える。
「魔獣?それもこんなにたくさん……そんなッ」
「えぇ、コイツらはバイザーでは察知出来ない魔獣みたいですね……」
アリアとハロルドを取り囲む魔獣の群れが、そこにいたのである。
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