受付・6

だが何かを考えようとすると、頭が痛くなる。

ツンとした痛みはもっと深くて重くて、そしてズキズキと脈打つものに変わっていく。

「……ゥ………」

お話を続ける『大人』たちの邪魔をするつもりはなく、グッと息を詰めていた七海が痛みに耐えきれずに呻くと、その小さな吐息を聞き拾ったらしい輝が蹲ってしまった小さな身体を抱き締めた。

「もう!社長はいいですから!!わかりましたよ!『小さな子』として対応すればいいんですね?」

「ああ。だがあんまり消耗させるなよ?だいぶ……幼い」

「え?あ、はい!」

ギュッと七海を抱き寄せながら輝が返事をすると、ふっと空気が軽くなった。


気のせいじゃない──息が、しやすい。


「……大丈夫?」

「うん」

ハッハッと短い呼吸がゆっくりと長く落ち着くと、七海は目を開けた。

「え?」

ポカンとする。

目の前にいたのは、さっきまでの綺麗なお姉さんではなく、また小さく光る『妖精さん』だった。

「えへへ。いえ、けっこう気に入ってるんです、この可愛らしい姿……こっちの方が七海ちゃんの負担じゃないみたいですし」

「ふたん?」

「え~…うん、七海ちゃんが辛くないかなぁって」

「ななみ、つらくないよ?」

「うん、そうだねぇ。もう辛くないねぇ」

光る妖精がふわふわと近づき、七海の頭に小さな手を伸ばして触ってくれる。

だがその可愛らしい姿とは反対に、七海に話しかけてくれる言葉はまるで幼稚園の先生のようだった。

だが本当に息はしやすく、目の前もクラクラしない。


そして


「あれ?おうさまは?」

「おうさま?おうさま……あ、ああ!王様!えぇと王様……ま、まあ…見た目は王様みたいですけど」

ググゥ…と変な声をあげながら、妖精となった輝は身体を丸めて肩を震わせる。

七海が輝の方こそどこか痛いのかと手を伸ばしたが、弾けたように輝は身体を反らせて大笑いした。



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