第2話 買い物

「咲夜ー」

「んー?」

「放課後、暇?」

「時間はあるけど」

「買い物行こうぜ」

「行ってらっしゃい」

「咲夜も行くんだよ!」

「星香の買い物って長いから嫌なんだよねぇ」

「包み隠さず言ったな」


青葉星香と赤石咲夜。

彼女らは、今年、白夜高校に入学した新入生だ。

そんな彼女らだが、授業中にも関わらず、放課後の相談をしていた。

そのため…。


「そこ2人、うるさいです」


怒られる始末だ…。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「それで、何を買いに行くの?」

「一緒に行ってくれるのか?」

「駄目って言っても連れて行くつもりなんでしょ?」

「もちろん」



放課後となり、2人は鞄を持って教室を出る。


「これからの時期に向けて、靴とか買おうかと思って」

「買えば良いじゃん」

「好きな人に選んでもらいたいから」

「積極的すぎない?」


こうして、2人はショッピングモールへと向かう。


「というか、目立つな」

「当たり前でしょ。赤色と青色の髪をした高校生が並んで歩いているんだから」

「なるほど」

「自覚なかったの…」



2人は身長も高く、髪色も派手で、顔も悪くない。

そのため、注目を浴びることが多々ある。


「そんなに珍しいなら自分でやればいいのにな」

「やれるわけないでしょ」


青葉の言葉に、思わず突っ込む赤石。

そんな事を話していると、目的の靴屋に辿り着いた。


「それで何買うの?」

「靴だろ」

「そんなバカな事を聞いているんじゃないの」

「そんなバカな答えを出させる質問が悪い」

「屁理屈しか言わないの?」

「正論って言って欲しいね」


店の中に入り、店内を見て回る。


「これ、咲夜に似合いそう」

「そう?」

「というか、私知ってるぞ。私が似合いそうって言ったのを後日1人で買いに来てるの」

「何でそんなこと知ってるの!?」


赤石が持つ服や靴は、青葉が似合いそうと言ってくれたものばかりだった。

それも、言われた時に買うのではなく、後日、1人で買い物に来た上で購入している。

対して、青葉も赤石に似合うと言われたものを購入しているのだが、彼女の場合は、その場で購入を決めている。


「お揃いのを買おうぜ」

「嫌よ、恥ずかしい」

「じゃあお揃いの下着にしておく?」

「馬鹿じゃないの」


青葉がわがままを言い、赤石はそれを適当に受け流す。

これが彼女らの日常だ。


「このサンダル可愛くない?」

「そうね」

「ほら、私たちってスタイル良いから似合うって」

「その自信ってどこから来るの」


購入したい商品をレジまで持っていき、会計をする。


「というか、どうせ咲夜、あの靴買うんでしょ?。今、買えば良いんじゃないの?」

「毎回、私があんたが似合うって言ったのを買うとは思わないで」

「とか言って買うんだから、素直じゃないねぇ」


会計を済ませ、店を出る。


「というか星香」

「ん?」

「あんた、ネクタイくらいちゃんと結んだら?」

「良いじゃん、学校の中じゃないんだし」

「だらしないって言ってるの」

「それを言ったら、ブレザーの下にパーカー着てる方がだらしないと思うけど」


店を出ると、お互いの服装について指摘し合う。


「星香って、本当にああ言えばこう言うよね。お子様なの?」

「そういう咲夜だって、いちいちそういう指摘してお母さんなの?」


彼女らは、言い合いをするも、大した騒ぎではない。

むしろ、平常運転なのだ。


「ほら、買い物付き合ってくれたお礼に、ドーナツ奢るよ」

「そうやって誤魔化して…」

「いらない?」

「いる…」

「じゃあ行くぞー」

「はいはい」


2人の言い合いは、いつも唐突に終える。

そうして、彼女らは、ドーナツ店に向かい、それぞれ注文を済ませる。


「本当に咲夜って、ドーナツ好きだよな」

「良いじゃん、別に」

「否定をしてるんじゃなくて、感心しているんだよ」

「そうなんだ」

「ドライな反応だなぁ」


赤石は、青葉の言葉を気にすることなく、ドーナツを頬張る。

対して、青葉は、赤石の顔を見つめながら、ドーナツを食べる。


「(にしても、こいつドーナツ好きのくせに太ってないのが不思議なんだよな…)」


青葉は、ドーナツを頬張る赤石を眺めながら、不思議に思う。


「どうしたの?」

「いや、何でドーナツ好きなのに太らないのかなぁって」

「努力してるからよ」

「ふーん。あっ、もしかして夜な夜な1人で気持ち良くなってるの?」

「ばっ…!!」

「なんて冗談って思ったけど、その反応本当だね?」

「ふんっ!」

「あらら、怒らせちゃった」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ドーナツを食べ終え、一息つく2人。


「明日、体力テストよね」

「そうだなー」

「あんた本気出すの?」

「出さなーい」

「でしょうね…」

「そういう咲夜は?」

「本気でやる理由もないし、別に」

「やっぱそうなるよなー」


2人は別に運動が苦手ではない。

むしろ、得意な方だ。

しかし、その実力を見せることはあまりない。


「というか単純に面倒」

「言うと思った」

「運動したくなーい」

「中学の頃からずっと言ってるよね」

「体育嫌い」

「得意なのにね」

「好きと得意は違うんだよ」

「まあ言いたいことは分かるけど」

「英語が得意でも好きではないし」

「そうね」

「あっでも、咲夜とのエッチは好きだし、得意」

「ふんっ!」

「ぶへっ!」


内容も表情もゲスな青葉を赤石が鉄拳制裁をする。


「乙女の頭蓋にチョップなんて…」

「中身が乙女じゃないからよ」

「外側は美女なのに」

「否定できないのよね…」

「咲夜は美少女だよ」

「はいはい」

「私が大好きな子なだけある」

「っ…!」

「どうした?照れてるのか?」

「あんたはどうしてそんな簡単に言えるの?」

「だって勿体無いじゃん」

「は?」

「咲夜といつ別れるか分かんないんだよ?明日私が事故でいなくなるかもしれないし、逆に咲夜がいなくなるかも。それほど日常って不確かで危ういほど脆い。それなら私は今を楽しむね。だから私は自分に正直に思いを伝える」

「星香…」

「まあ星香を抱ければそれでいいや」

「ふんっ!!」

「ぐへっ!!」

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紫色の日々 MiYu @MiYu517

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