紫色の日々
MiYu
第1話 赤と青は、白へと入学する
桜が舞い散る季節。
「なあ、咲夜」
「んー?」
「同じクラスになったな」
「そうみたいねー」
「今年もよろしくな」
「よろしくね星香」
入学式を控え、新しくなった1年2組。
ほとんどの人が初顔合わせであり、静寂が教室を包む。
そんな事を気にしない生徒が2人いた。
2人の少女は、同じ中学を卒業し、同じ高校に入学していた。
「というか喋ってんの私たちだけじゃね?」
「みたいね」
「部活は何か入るのか?」
「入らないよ。面倒くさいし」
「ははっ。そっか、咲夜が入らないなら私もやめておこうかな」
「星香も何も入らないつもりなの?」
「ああ」
赤石、青葉の2人は、中学時代から部活には所属しておらず、放課後はダラダラと過ごすような日々だった。
「…」
「ん?どうしたの、そんなに静かになっちゃって」
青葉が突然静かになるのを怪訝な表情で赤石は尋ねる。
「いやぁ、相変わらず可愛いなぁって」
「はぁ!?」
赤石の叫びに視線を集める。
「うるさい」
「だって、星香が変な事言うから」
「普通でしょ。このくらい」
「普通じゃないよ!」
「ほら、みんな見てるから大人しくしなよ」
「むぅ…」
「仕方ないなぁ」
青葉は、赤石の頭に手を優しく乗せる。
「よしよし」
「頭をポンポンしないでよ」
「お前は可愛いなぁ」
「星香に言われてもね」
「私は可愛いというよりも綺麗系なのでね」
「はいはい」
「適当だなぁ」
赤石の容姿は、可もなく不可もないと言ったところだが、雰囲気が上品ということもあって一部の男子からは人気である。
一方、青葉の方は、クールで口は悪いが顔は美人の類である。
「でも星香は顔だけだからなぁ」
「誰が顔だけだ」
「口は悪いし、友達は少ないし」
「口が悪いのはそうさせている周りが悪い。そして、友だちだったら咲夜だけで十分」
「そうですか…」
「まあ友達を超えても良いけどね」
「はいはい」
「また適当な返事だな」
そんな他愛ない話をしていると、教室の扉が開かれた。
「全員揃っているみたいですね。ではホームルームを始めます」
教室に入って来たのは、女性の先生だった。
「まず、この1年2組の担任となりました
先生の自己紹介を済ませ、今日の流れを説明する。
「今日は、これから体育館にて入学式のリハーサルを行います。その後、一度ここに戻り、30分の休憩。11時から入学式が行われます」
神崎の説明を聞き、クラスのメンバーは廊下へと整列する。
「咲夜」
「ん?」
彼女らも廊下に並び、青葉が話しかける。
「めちゃくちゃあの先生美人じゃね?」
「確かにね」
「彼氏居ると思う?」
「知らないよ。そんなに気になるなら聞けば良いじゃない」
「分かった」
「は?」
青葉は、納得したように神崎の方を見る。
「先せ…!!」
「馬鹿っ」
赤石は、青葉の口を塞ぐ。
「んんんんっ…。ぷはぁ…ちょっと何すんの」
「馬鹿じゃないの。どうして星香は、そんなに怖い者知らずなの!」
「へへへ」
「へへへじゃない!」
2人が言い合っている中、周りは当然静かである。
そのため…。
「そこ、私語をしない」
当然、注意される。
「「…」」
2人は、注意を真摯に受け止め、口を塞ぐ。
「それでは、体育館に向かいます」
神崎の先導について行き、体育館へと向かう。
「そこそこ広いね」
「そうみたいだなー」
2人は、怒られない程度の小声で、体育館に入って行く。
「椅子多いなぁ」
「やっぱ私立だからね」
「…それ関係あるのか?」
「さぁ?」
「さぁって、お前…」
1年2組の一同は、自分の座席へと席に着く。
「というか何するの?」
「私が知る訳ないじゃない」
「それもそっか」
「そうだよ」
そして、新入生が全員揃ったところで入学式の説明が行われた。
「初見で校歌を歌えって無理な話だよな」
「まあね」
「そういえば、咲夜の親来るのか?」
「さぁ?」
「聞いてないのか?」
「うん」
「そっかぁ」
「星香は?」
「知らない」
「同じじゃん…」
こうして入学式のリハーサルは終える。
再び、教室に戻って来た彼女らは、休み時間を過ごす。
「放課後、遊び行かない?」
「良いけど、どこに行くの?」
「うーん…。カラオケ?」
「昨日も行ったじゃない…」
「じゃあ、私の家?」
「何されるか分からないから嫌」
「あんたは私を何だと思ってるの?」
「私の身体を狙ってる変態」
「お互い様でしょ♡」
「じゃあ星香のお母さんに、肉体関係を持ちましたって言っておくね」
「待って!!洒落にならないから!!」
「はいはい」
「もっと真面目に聞いて!」
「私はいつだって真面目よ」
周囲から見ると異質な2人かも知れないが、これが彼女らにとって当たり前の事だ。
お互い、裏表のない関係を築いている。
「じゃあ咲夜はどこが良いの?」
「どこでも…って星香が誘っておいて私に振るの?」
「だってあんたが、嫌って言うから」
「はぁ…。じゃあ良いわよ。お金もあんまりないし、星香の家にしましょ」
「よしっ!じゃあ決まり!!」
放課後は、青葉の家で遊ぶこととなった。
彼女らの家は、同じ中学ということもあって、そこまで遠いというわけではない。
それに、お互い何度か宿泊もしているほどだ。
「入学式早く終わらないかなぁ」
「そうね」
「来賓の挨拶っているか?」
「知らないわよ」
「10割知らない人じゃん」
「全員じゃん…」
「一斉に言えばいいのになぁ」
「意味が分からないでしょ」
「だって言う事同じなら、一度に全員言った方が効率的じゃない?」
「はいはい、そうね」
「適当だなぁ」
「鏡見て言いなさい」
彼女らは、これから行われる入学式の愚痴を零し合いながら、時間を潰していく。
他のクラスメイトは、彼女ら同様話している人もいるが、基本的には、静かなものだ。
ガララッ…。
「はい。じゃあ入学式までまだ時間あるので、この間にみんなの自己紹介をしてもらいます」
担任の神崎が教室に入り、教壇に立つと自己紹介をするように言う。
「じゃあ名簿順によろしくね」
そうして、出席番号順に自己紹介が始まる。
1年2組の人数は、40人。
男子20人、女子20人となっている。
いかにも運動が出来そうな者から、文科系の人までさまざまなだ。
赤石と青葉は、中学の頃、部活はしていなかったが、運動は出来るほうだった。
「まずは…あなたね。名前と出身校と何か一言お願いします」
この学校の名簿順は、男女関係無く50音順になっている。
したがって、女子でも50音が早ければ、出席番号が1番になることもある。
「えっと、私からか。青葉星香です。夜桜中出身です。あとは…この子は私のだからちょっかい出したら許さないぞ♡」
出席番号1番 青葉星香。
普通に自己紹介をすると思いきや、赤石に指を指し、高らかに宣言した。
「ちょっと馬鹿じゃないの!?」
流石の言動に赤石も驚く。
「やっぱ掴みって大事じゃん?。最初だし」
「あとの人の事も考えなさい!!」
「はーい。じゃあそのまま次お願いね」
神崎の言葉により、そのまま次の赤石へと進む。
「えー赤石咲夜です。この馬鹿と同じく夜桜中出身です。あと一言か…。えっと…別に私は誰のものでもありません。よろしくお願いします」
赤石は、青葉の言葉を訂正するような自己紹介をする。
彼女らの自己紹介により、クラスの雰囲気が少し和やかになっていた。
「はいはーい。じゃあポンポン自己紹介をお願いねー」
それからは、滞りなく自己紹介が進んでいった。
「よしっ、自己紹介も終わったし良い時間にもなったので、お手洗い等を済ませ、再び廊下に並んでください。入学式が始まりますよ」
1年生の皆は、教室の外へと並び始める。
この学校は、クラスが普通科とビジネス科に分けられており、その中でもいくつかのコースに分かれている。
赤石や青葉のクラスは、普通科普通コース。
他には、アスリートコースや特進コースなどもある。
複数の学科、コースが存在するこの学校は、1学年13クラス存在している。
「抜け出す?」
「馬鹿な事言ってないで、早く並ぶよ」
「はいはい」
青葉の冗談を軽くあしらい、廊下に並ぶ。
「すぴぃ…」
「星香、起きなさい」
「咲夜好きぃ…」
「っ…!!」
「もっと…欲しい…」
「何をよ…」
入学式は、特に特別な事は無く、つつがなく幕を閉じた。
その間、青葉は、眠っており、赤石は、眠っている青葉を眺めていた。
「んん~。おっ、終わったかな?」
「何で終わったと同時に起きられるのよ…」
彼女らは、教室に戻り、ホームルームが始まる。
「これで、あなた達は、この学校の生徒です。白夜生としての自覚を持った生活を送ってください。ここでの青春は戻ってこないのだから。では、明日から、授業が始まります。とは言っても、まだオリエンテーションでしょうから、そんなに気張らなくて良いですからね。では、長々と説明しても、あまり分からないでしょうから、その身で体験しください。あなたたちらしい、学校生活を送ってください。」
神崎による挨拶が終わり、1年2組は帰宅の準備を始める。
「じゃあ、咲夜帰ろうぜ」
「はいはい」
青葉と赤石は、荷物を持ち、昇降口へと向かう。
「帰る前に、昼飯買って帰ろうぜ。今日はどこも入学式で人が多いだろうから、家で食おう」
「あんたにしては、いい案ね」
「でしょ」
「じゃあ、行くよ」
「ほーい」
帰りにファストフード店に寄り、昼食を買い、青葉の家に向かう。
「ふぃ~。ただいま~」
「お邪魔します」
「って、誰も居ないのか」
「お母さんは仕事?」
「みたい」
「そうなんだ」
「じゃあ、私の部屋に行ってて良いぞ。飲み物持っていくから」
「気が利くのね」
赤石は、青葉の部屋に入る。
青葉の部屋に入るのは、何度目だろうかと思うほど見慣れた光景だ。
「相変わらず、綺麗にしているのね」
青葉は、性格はガサツのように見えて、几帳面なとこもある。
正確には、自分のテリトリーは、綺麗にしておきたいという習性に近い。
「お待たせ」
「うん」
青葉は、飲み物を持って、部屋に入って来た。
「はい、咲夜は炭酸水だよね」
「そうね」
「変わっているよな、別に味があるわけでもないのに」
「まあね」
赤石の好きな飲み物は、炭酸水だ。
それも、なにかしらの味がついているのではなく、プレーンな炭酸水なのだ。
「それで、どうする。ゲームでもする?」
「そうねぇ、何しよっか」
「私とベッドの上で運動する?」
「どうして星香は、そこまでして私の身体を狙うの…」
青葉は、本気で赤石の事が好きなのだ。
それも、性の対象として。
「気分ってものがあるのに…」(ボソッ)
「えっ、何か言った?」
「何にも」
赤石も実は満更ではない。
むしろ、青葉の事が好きだ。
赤石と同様に、性の対象として。
「にしても、中学の文化祭の時にキスしたじゃん。あれが忘れられないんだよね」
「あんたが王子をやって、私が眠れる姫をやった時にね。口は付けなくて良いのに、舌まで入れて来てるし…」
「なんか、気持ちよさそうだったから」
「そのせいで私も変な気分になったんだから」
「まさか濡れてたの?」
「星香って馬鹿なの?」
「咲夜よりは良いぞ」
「うっ…」
「私たちって、容姿とか態度のせいで誤解されやすいもんなぁ」
「ホントよね」
青葉は、中学の時は、学年主席であり、白夜高校の入試も点数はトップだった。
それなのに、新入生の挨拶はしなかったのは、断ったからだ。
赤石は、中学の時は、青葉に次ぐ、学年次席。白夜高校の入試も青葉に次いで2位だった。
「咲夜って髪色、黒にしないの?」
「しないよ。それを言うなら星香もでしょ」
「この色気に入っているから」
「そう」
青葉の髪色は、ネイビーブルーであり、赤石の髪色は、チェリーレッドだ。
こんな髪色していたら、嫌でも目立つ。
だが、それすらも許される成績。
そして、ある程度の自由が許される白夜高校だ。
「なぁ咲夜」
「何?」
「なんかお揃いのもの欲しくね?」
「例えば?」
「苗字」
「病院なら、探すの手伝ってあげる」
「ごめんって。でも、お揃いのアクセサリーとか欲しいよなぁ」
「そうなんだ」
「咲夜は欲しくないのか~?」
「まあ欲しいけど」
「じゃあ、どうする?ピアス?」
「何でもいいよ」
「じゃあピアスにしようぜ。今度の休みに買いに行くぞ」
「はいはい」
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