第6話 ジョブスキル

 俺はSPでステータスを上昇させるより、ジョブスキルの取得を優先することにした。


「今のままのステータスでもモンスターと戦える。それなら新しいスキルを取得して習熟した方がいいだろう」


 エロゲ選択肢スキルのレベルを上げるか少し迷ったが、その結果どうなるか予想が付かないので止めといた。


 ステータスウインドウのスキルの所をタッチする。

 するとウィンドウが切り替わって、ジョブスキルの一覧が表示された。


 ジョブ獲得すると感覚的に使い方が分かるのだ。

 ネットでは、その時に頭の中や精神を弄られてるのではないかと噂されている。

 モンスターとの戦闘に忌避感が薄くなってるのもそのせいだと言われている。


「……これはまた偏ったスキルばっかりだな」


 エロゲ調教師というジョブなだけあって、そっち系のスキルが多くあるのが印象的だ。

 けど絶倫スキルは欲しいかもしれない。


「まずは今あるSPで取得できるスキルを探すか」


 ジョブスキル一覧を操作して、現在のSPで取得可能なスキルを表示する。



『取得可能ジョブスキル』

 ・鞭術スキル……必要SP1

 ・エロゲ調教スキル……必要SP1

 ・壁尻スキル……必要SP2

 ・マジックハンドスキル……必要SP2

 ・触手召喚魔法スキル……必要SP2



「……壁尻スキルがどんな風に発動するか気になるな」


 学術的な興味心がとてもくすぐられる。


 それから10秒だけ悩んだ俺は、エロゲ調教スキルを取得することにした。


 選んだ理由は、なんとなくだ。

 まあ、俺が獲得したジョブと似た名前のスキルだからな。

 必要SP1で簡単に取得できるし、何かしら意味があるかもしれない。



 風間風太

 ジョブ:エロゲ調教師Lv1

 HP:10/10

 MP:10/10

 攻撃:G

 防御:G

 敏捷:G

 器用:F

 精神:G

 幸運:F

 SP:1.53

 スキル:【エロゲ選択肢Lv1】【エロゲ調教Lv1】



 俺のステータスウインドウが、エロゲ単語だらけになってしまった。

 人前でステータスウインドウのジョブとスキルは明かせないな。


 残りSPで鞭術スキルも取得できるけど、鞭を武器にしてないから取得は控えといた。

 どうせすぐにSPは獲得できるし、急ぐ必要はないだろう。


「よし。それじゃあ今日中に行けれる所まで行くか」


 ステータスウインドウを消した俺は、また道に沿ってダンジョンを進むことにした。


 道中、何度もレッサーコボルトが襲ってきた。

 とはいえ1体のみで攻めて来るので、手こずる相手じゃない。


「ガルルァァ!」


「ふん!」


 体当たりしてきたレッサーコボルトの顔面に、体重を乗せた小型盾を叩き込む。

 何度も戦った相手だから、接近するまでのタイミングは掴めている。


 後方に弾き飛ばされたレッサーコボルトが仰向けに倒れる。

 俺はすかさず近寄り、その腹の上に左足を置いて体重を掛けた。


「ガァァ!?」


 非力なレッサーコボルトに俺を押し退ける手段はない。

 犬頭のせいで俺の足に噛みつく事も出来ず、爪による引っ掻き攻撃もスライムスーツで防げれる。


 あとは短剣で喉を掻っ切るなり、心臓を刺すだけだ。

 なんならもっと足に体重を掛けて、内臓を押し潰してもいい。


 レッサーコボルトを始末した俺は、一息つくことにした。

 リュックサックから水筒を取り出して水分補給する。


「ふぅ……スライムスーツの中が蒸れて暑いな」


 レッサーコボルト1体を倒すのは簡単だが、ぽっちゃりな俺の体力は長続きしない。

 余裕を持って休まないと体力の底がついてしまう。


 探索者に太った奴が少ないのは、ダンジョン探索すれば自然と痩せてしまうからだそうだ。


 だから他の仕事より多く金が稼げて、ダイエットまでできるから女性探索者は意外と多い。

 まあ、何を目標に探索者になるかは人それぞれだ。


 小休憩を終えた俺は、ダンジョン1階層の奥を目指す。


 今のところエロゲ調教スキルは発動出来ていない。

 おそらくコンディションスキルだからだと思う。


 スキルには3種類の型がある。

 常時発動型のパッシブスキル。

 意思決定型のアクティブスキル。

 条件達成型のコンディションズスキル。


 エロゲ選択肢スキルは、条件達成型のコンディションスキルだった。

 エロゲ調教スキルも、何かしらの条件を満たすことで発動するスキルなのだろう。


「おっ、またか」


 しばらく歩いていたら、進行方向からレッサーコボルトが走って来た。

 犬頭なだけあって嗅覚が人より優れているらしい。

 姿を現していない時も、すぐに俺の位置を察して襲ってくる。


「……今回は2体か」


 レッサーコボルト2体と闘うのは初めてだ。

 短剣の柄を強く握り締めて、やる気を漲らせる。


 脚力に個体差があるのか、並走せずに先頭の1体が近づいてきた。

 俺の間合いに入る直前、その先頭のレッサーコボルトが飛び上がった。


 こちらの喉笛を嚙みちぎろうと大口を開けている。

 すかさず俺は小型盾を眼前に構えて身を守った。


 軽い衝撃。

 耐えられないほどじゃない。


 先頭のレッサーコボルトの噛みつき攻撃は不発に終わった。

 だが顔を隠すように小型盾を構えたせいで、後続の2体目のレッサーコボルトを見失ってしまった。


「くっ」


 右ふくらはぎを噛まれる感触。

 しかしレッサーコボルトの咬筋力では、スライムスーツの物理耐性スキルを突破できない。

 それでも気分が良いものじゃないがな。


 俺は倒すべき敵の優先度を考えた。

 現状、少し苦戦してしまったが2体とも対処可能だ。

 慌てず順番に倒していこう。


 1体目のレッサーコボルトは、自分の攻撃を防いだ小型盾を相手にするのに夢中だ。

 2体目のレッサーコボルトは、右ふくらはぎに噛みついて離れない。

 うむ。数が増えようが、相変わらずの頭の悪さだな。


 俺は1体目のレッサーコボルトの首に短剣を刺した。

 手首を捻り傷口を広げていくと、煙のように消えていった。


 次は右ふくらはぎに噛みついたままの2体目のレッサーコボルトだ。

 右ふくらはぎを噛まれたのは不幸中の幸いだな。


 短剣を持ち帰る必要がない。

 俺は右手に握る短剣で、そいつの顔を切りつけた。


「キャインッ」


 鳴き声をあげて俺の足元を転がるレッサーコボルト。


 その時――脳内にシステム音声さんの声がした。


『異性との接触が10秒経過。エロゲ選択肢スキルの自動発動条件を満たしました。30秒以内に提示された選択肢の中から1つを選んで下さい』



【エロゲ選択肢】残り時間:30秒

 ①「死ねっ」とレッサーコボルトの頭を踏み潰す。

 SP0.001獲得


 ②「君の痛みは僕の痛みさ!」と自分の顔を切りつけてみせる。

 SP0.7獲得


 ③「ほあたぁぁー!!」と脳のリミッターを外して、一瞬でレッサーコボルトの快楽ツボを押して行動不能にする。

 SP1獲得



 こんな時に発動するのか!?

 異性との会話だけじゃなくて、接触も発動条件に含まれるのかよ!

 しかも相手がレッサーコボルトって見境なさすぎじゃないか。


 停止した時間の中、俺の思考は疑問と困惑でいっぱいになる。


 くそっ、今は考える暇はないか。

 エロゲ選択肢の制限時間が迫っている。


 またイカれた選択肢だけど、ここは初志貫徹してレッサーコボルトを倒してやる。


 自分を信じて選択すると、止まっていた時間が動きだした。


「ほあたぁぁー!!」


 脳のリミッターが外れる。


 五感が鋭敏化して、選択肢に必要な情報が脳内で処理されていく。

 世界がスローモーションになったように感じた。


 自分の心臓の鼓動や血の流れ、伸縮する筋繊維の動きまで手に取るように伝わる。

 肌を撫でる空気の流れと周辺の音から、視線をやらずともレッサーコボルトの動きを把握する。


 そして一目見れば、レッサーコボルトの快楽ツボがどこにあるか理解した。


 一瞬。


 たったそれだけの時間。

 限界を超えた俺は、レッサーコボルトにある5箇所の快楽ツボを押していった。


「キャイーーーン!?」


「ぎやあぁぁっ!!」


 レッサーコボルトの蕩けきった嬌声が洞窟内に響く。

 同時に俺は、脳と筋肉を酷使したせいで絶叫をあげた。


『異性が屈服しました。エロゲ調教スキルの自動発動条件を満たしました。この異性はあなたのペットとして調教下に置かれます』


 最後にシステム音声さんが何か言ってきたけど、俺にそんな事を気にする余裕はなかった。

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