今日はバレンタインに困ってる
今日はバレンタイン。
私の最上級の愛を詰め込んだチョコを松森くんに食べてもらい、彼の頬とハートをトロトロに溶かす日だ!
そんな私にとって大切な日を邪魔するやからがいる。
そう、松森くんは無駄にモテるのだ。
彼の上質なルックスと、愛らしい笑顔がそこらへんの女どもをメロメロにしてしまう。
ほんとに困っちゃうな!
私がチョコを渡そうとしたときには、もう彼の机のうえにはチョコの山ができていた。
まぁ、こんなにチョコもらっても松森くん困っちゃうし、あとで炎の魔法で中身全部溶かすけどね。
「おう、松森。またチョコ大漁だな、ちょっとくらい分けてくれよ」
「あいかわらず、モテモテだな」
「うらやま、うらやま、裏山にお前を埋めてやりたい」
松森くんの机の上のチョコを見て、男子たちが盛り上がっている。
「まぁ、こんなに貰えるのはありがたいけど食べるのが大変だよ……。授業中に食べてるけど全然減らないし」
松森くん大丈夫。
もうじき、全部のチョコ溶けるから!
★☆★☆★☆
もう、学校が終わってしまう。
結局、渡しそびれてしまった。
はぁ、頑張って作ったのにな……。
なんだか泣きそうだ。
いちおう、氷の魔法でカチコチに凍らせてあるから明日でも渡せるのだけど、やっぱり今日渡したい。
私がしょんぼりと、帰りの支度をしていると
「はい、坂下さん。これ受け取ってよ」
急に松森くんが小さな箱を渡してきた。
「え………えっ、あ、ありがと」
「今日、バレンタインだし。坂下さんにどうしても渡したくて……べつにとくに意味はないから、それじゃ、帰るね」
嬉しすぎて、昇天しそうだけど
今しかない、渡すなら……。
「松森くん!これ、私からもどうぞ。じゃぁ、私帰るね!」
顔が真っ赤になっているのがわかる。
あぁ、とても照れる。
魔女なのに、魔女なのに。
こんな俗世的なイベントに感情が振り回されるなんて………。
困っちゃうなぁぁぁぁぁ。
★☆★☆★☆★
その夜、松森の歯は砕けた。
完膚なきまでに砕けた。
これがカチコチバレンタインチョコ事件の全容だ。
ご冥福を祈ります、松森くん。
魔法使いは恋してる 一宮ちゃん! @oppai030939
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