第44話
右手を懐へ滑り込ませたチンピラの頭が風船のように吹っ飛び、脳漿が飛び散って、床が鮮血に染まった。
修兵の瞳が妖しく燃えている。
「あん時ゃ世話んなったな」
賭博室のドアが開いて二人の組員が盲滅法に発砲してきたが、そんな弾に当たるはずもなく、修兵が落ち着いて撃ち返すと、呆気なく片づいた。
賭博室にはディーラーと、ルーレットゲームに興じていた水商売風の中年女が三人。
初老の紳士が一人残っているきりだった。
誰もが怯えきって声もなく、震えながら壁際にかたまっていた。
修兵は頭を撃ち抜かれた死体に自分のコートを着せると、それを引きずって賭博室へ入った。
客たちの前を横切って組長室の前に立つと、やおらドアを蹴破り、中へ死体を投げ込んだ。
室内で猛然と銃声が起こり、修兵のコートを着せられた死体に無数の銃弾が撃ち込まれた。
辺りはたちまち硝煙の匂いに包まれ、壁も、床も、窓ガラスも血に染まった。
死体はぐずぐずに崩れ、ほとんど原型をとどめていない。
やがて銃声が止むと、修兵は一呼吸おいてから、猛然と中へ飛び込んだ。
賢秀と祐二は、死体を確かめようと歩み寄ったところだった。
「や?」
「あっ?」
二人の口から驚愕とも悲鳴ともつかぬ声が上がり、修兵は素早く引き金を引いた。
まず賢秀の額を撃ち抜き、続けて祐二の頭を吹っ飛ばした。
一連の動きは流れるようで、すべてが一瞬のうちに終わった。
室尾賢秀と大滝祐二は、いまやもの言わぬ肉塊となって足下に転がっていた。
修兵は三つの遺体を部屋の隅へ蹴飛ばし、組長の肘掛け椅子に座ると、両脚を机の上に投げ出して、死体を眺めながら悠然と煙草を吸った。
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