第43話
漆黒のマスタングが、事務所の正面玄関前に滑り込んだ。
黒いコートを着た修兵が降り立ち、ポケットの中で拳銃を握り締めたまま大股に正面の階段を上って行った。
入口からエレベーターまでの廊下には組員のための詰め所が二部屋あり、それぞれのドアの前に見張りが出ているが、油断しているのかこれといった武装もしていなかった。
他愛ない下ネタで盛り上がっているかと思うと、退屈しきったように欠伸を噛み殺す。
そこへ、正面のドアが開いて、修兵が突入してきた。
見張りに立っていた三人のチンピラが慌てて身構え、懐から拳銃を抜き出そうとしたが、先に修兵の拳銃が火を噴いた。
壁に激突する者、廊下の端まで吹っ飛ばされる者もあった。
銃声を聞きつけた四人の組員が詰め所から駆け出してくると、修兵は待ち受けていたように素早く、容赦なく銃撃した。
手近に倒れている組員の懐から拳銃を奪い、二挺拳銃で第二波に備えたが、詰め所にいたのはその四人だけだった。
「こんな時に、兵隊が出払ってるたあな」
大方、シマ中をしらみつぶしに当たって、燻り出すつもりなのだろう。
いつまでも尻尾を巻いて逃げ回るだけだと思い込んでいること自体、修兵という男をわかっていない。
そんな祐二と賢秀を鼻で笑い、修兵は足下で寝ていたチンピラを引き起こすと、乱暴に壁へ押しつけ、銃を突きつけた。
「組長はどこだ?」
「く、組長室です」
「祐二は?」
チンピラはべそをかきながらブルブル震え、
「一緒ですぅ……一緒にいますぅ……」
金的を蹴り上げると、白目を剥いて失神した。
エレベーターが降りてきた。
ドアが開いて、三人の組員が談笑しながら出てきたが、撃ち倒された仲間の真ん中で、拳銃を手に佇む修兵の姿に凍りついた。
慌てて銃を抜こうとしたところへ、修兵は奪った拳銃でいきなりぶっ放した。
血まみれで呻いている連中を尻目に、エレベーターへ乗り込み、組長室のある最上階へ向かった。
エレベーターの中で弾倉を入れ替える。
最上階には賭博室のドアが一つあるきりで、その奥に組長室はあった。
ドアの横に立って見張っているチンピラは、忘れもしないあの夜、修兵を刺して逃げた祐二の舎弟の一人であった。
エレベーターが最上階に着き、ドアが開いた瞬間、修兵はその一瞬の判断で躊躇なく引き金を絞った。
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