第40話
スナックのドアが勢いよく開き、中から黒いスーツに蝶ネクタイ、ちょび髭の男にかしずかれた革ジャン姿の一見チンピラ風の若者が出てきた。
男は若者に白い封筒を手渡しながら、くどいほど何度も頭を下げ続けている。
若者は封筒を受け取ると嬉しそうに笑い、にやけた顔で満足そうに歩き出した。
その若者こそ、朋二を刺した祐二の舎弟の一人であった。
封筒の中には万札が五枚入っており、それをジャンパーのポケットへしまったとたん、若いチンピラの顔が硬直し、恐怖に引きつった。
行く手には、黒いコートのポケットに両手を突っ込んだ修兵が立っていた。
鋭い眼光に射すくめられ、若いチンピラは恐怖に戦いている。
修兵はチンピラを人気のない路地裏へ連れ込むと、胸元をつかんで締め上げた。
「朋さん殺ったの、てめえだな」
チンピラは蒼ざめ、一方の壁にへばりつき、激しく首を振った。
すっかり縮み上がり、声の一つも出せない。
修兵はコートのポケットから消音器のついたリボルバーを抜き出した。
「し、仕方がなかったんですぅ」
チンピラは声を上ずらせ、泣きながら弁解した。
「組長と兄貴の命令で……逆らえなかったんですぅ……勘弁してください、勘弁してください……!」
修兵はチンピラの口に銃口をねじ込んだ。
カッと目を見開き、チンピラはたちまち静かになった。
恐怖のあまり、小便を垂れ流している。
徐に撃鉄を起こし、修兵は唇を歪めた。
そして何も言わず、ゆっくりと引き金を引いた。
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